<   2006年 12月 ( 26 )   > この月の画像一覧   

やさしさ   


やさしさは
私の中にあるような
あなたの中にあるような
銘々に思うところを
あなたにあげる
あなたにもあげる
あなたのために
よくよく思うところのやさしさを
手にささげもち
冷めないように包みこみ
壊さないようにうやうやしく
風のように吹きわたる笑顔が初々しく
あなたの中にあるように
置いていく

ひとしきりあなたを想い
あなたの中の
私が置いていった
もとよりあなたの中にあるような
やさしさを想う

私があげたのは
私の中にあるような
極上の鬼のようなやさしさ
私たちの間でひしめきあう
思いやりがあなたの中にあるような
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by hannah5 | 2006-12-30 22:52 | 作品(2004-2008)

世界   


詩のような世界
世界のような詩
人々が混雑しすぎて身動きがとれない時
詩と世界の
あいまいな相乗効果を思う

ひしめきあうのは濃く薄く
混ざりあわない色調の
我も我もと心をやつし
想いを落とす
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by hannah5 | 2006-12-30 22:46 | 作品(2004-2008)

詩を書くとき   


詩というのは
縦書きで気持ちよく並べられ
ざくざくと脳髄に進入する

魂のほの暗い片隅から
広々とした空気の中へ
ピストンのように信じて押し出す
どこかに着地するという気楽な信頼
それは生まれ落ちた時の
いたって暢気な気楽さに似ている
産道をくぐり抜けて
誰かが受け止めてくれるという
天の啓示のような信頼にも似て
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by hannah5 | 2006-12-30 22:44 | 作品(2004-2008)

私の好きな詩・言葉(93) 「夢の皮膜」 (斎藤 貢)   


うっすらと、夢の皮膜があなたの身体を覆っ
ている。夢だから、すべての輪郭があいまい。
記憶もあいまい。月明りに照らし出された樹
木のように、のっぺりとしたあなたの全身像
が、わたしの記憶の枝葉を掻き分けるように、
舞台の下手でうっすら。たぶん始まりはいつ
もこういう照明装置だったのだろう。遠くて
近い、あなたの羊水の海がうっすら。明るん
でいる。小舟のような容器に揺られて、わた
しの夜もうっすら。夢の飛沫に、いくたびも
濡れている。

フェード・アウト。

身体ごと海になったような、 あるいは、風に
なったような、ゆるやかな弛緩とうねり。不
定形のものたちのささやきがあちこちで谺す
る。夢の入り江に寄せる波と返す波。効果音
も風の手ざわりも快い。舞台の中央で、たと
えば、あなたは暗い入り江になる。その湾曲
するあなたの夢の身体に潜り込むわたし。す
るとそこでは、笹舟のようなわたしの全身が、
寂しい水音をたてながら、うっすらとしたあ
なたの内部を流れ下っていくのがわかる。

暗転。

夜の薄い衣をまとって、夢の皮膜に包まれな
がら、うっすら。わたしは網の目状のあなた
の意匠を思い出す。あなたの顔、あなたの指、
あなたの肩、あなたの胸。あなたの腰の辺り
では、いちじくの葉ずれのざわめきがして。 
アダムとイブのように、互いの名を小声でそ
っと呼びあいながら、全ては、うっすら。夢
幻に過ぎないものを、わたしたちはひたすら
求めあう。引きあう力は重なり合う幾重もの
わたしたち。あいまいな意味やかたちの、そ
れもうっすらとした外側の部分。わたしたち
はもっと言葉のように虚ろな容器となって、
舞台の皮膜で浮遊したいとねがう。

フェード・イン。

言葉の海に潜りながら、わたしたちは水に溶
けていく言葉のひとつ。波の飛沫になる。全
身が水の泡のごときものならば、どこからが
夢の皮膜で、どこまでを夢の内実というのだ
ろう。あなたは、鬱蒼と繁る森。あるいは、
そこから抜け出た一本の樹木だから、ねじれた
枝葉をねじったり、折り曲げたり。畳んだり。
眠りから覚めて、一日の始まりに備えている。
ささやかな朝食は一切れのパンとスープ。掬
いとる夢のかけらのようにはかないスープの
上澄み。その軽くて、淡い舌の感触を口に含
んで、わたしたちは、夢の皮膜から起きあが
る。引き潮が、音をたててわたしたちから奪い
取る。夢の皮膜のあいまいな、うっすら。


(斎藤 貢詩集 『蜜月前後』より)

もう一編
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by hannah5 | 2006-12-28 23:09 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(1)

つながり   


想いを削ぎとって 一枚渡す

メールの距離くらいの薄さを
手のひらに乗せて
かすかなつながりの先から
そっと見ている心に送る

薄絹のような一枚が
さらに薄く空気のように透けて
相手の心に落ちるころ
しんみりとした安堵感が流れ込んだ

二枚削ぎとって渡すと危険なのだ
そっと見ていたものが
崩れてしまう

蜘蛛の糸のように
空気のかなたに隠れた関係を
放射状に張りめぐらしておく
どこからともなく引っ掛かる音がして
そのたびに糸がぷるるんと揺れる

糸を切るのは大そうな勇気がいる
しかし糸に紛れ込むのは
さらに勇気がいるだろう

たった薄い一枚なのに
ぼんやり眺めているだけで
受け取らない人がいる
鼻先に突き出したら
小さく あ、と言ったきり黙ってしまった

薄い反応がこだましている
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by hannah5 | 2006-12-27 18:36 | 作品(2004-2008)

クリスマスおめでとう   



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                  いつも詩織を訪れてくださってありがとう

                       クリスマスの喜びと平安が
                   お一人お一人の上にありますように


                            はんな
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by hannah5 | 2006-12-25 23:18 | ご挨拶 | Comments(20)

留守   


もうもうと焼香の煙が立つ中で
読経 延々と 長く伸びて

「ここが足 ここが頭
喉仏はここで ここが大切です」

白くカリンカリンになった骨を拾う
生前の生気は焼けてしまった
骨壷を骨で満たし
薄っぺらいのを
二枚、三枚、四枚・・・
黙々と骨を拾い
黙々と見つめる乾いた涙

「はい、もう少し乗せてください」

最後に一枚乗せて終了
小さな壷に入った叔父さんの骨たちが
丁寧にささげられて
私たちのもとへ返される
叔父さんの魂はとっくの昔に旅立ってしまったのに
骨壷に向かって
うやうやしく頭を下げる

(叔父さん、見てる?
(あなたはもうここにいないのに
(あなたの骨が大事だから

あなたを想う人たちがいて
小さな涙 るいるいと落ちた
読経の合い間
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by hannah5 | 2006-12-24 23:53 | 作品(2004-2008)

アイデンディティ   


ぴちぴちと頭の中にあるものを吐き出す
ある機嫌のいい夜
かしこまった話は苦手
詩論だの主義だの面白い発想だの
形あるものに収めようとするのは苦手

今日、最初に会った人は
初対面なのにばちばち話が跳んだ
顔のまん中に大きなほくろが坐っていた
話しているうちに
彼がだんだん私に近寄ってきた
息苦しくなって後ずさりをすると
彼はまた私に一歩近寄る
結局、私たちは知らず知らずのうちに
テーブルをひとまわりしていた

その次に会った人は
やたらと歌が下手くそなくせに
いつまでもギターをかき鳴らして
路上ライブをしていた
やがてどこからともなく
手品のように牛丼を出すと
寒そうに立って見ている見物人たちに
次々と配り始めた
白い息が照れくさそうに笑っていた

最後に会ったのは
小さな小さな女の子
私の顔を見ては笑った
笑顔が泳いでこっちへ来ようとしたから
拾ってみた
まるくて、ちっちゃくて、やわらかいヤツ
ふわふわして
おいしかった
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by hannah5 | 2006-12-23 23:53 | 作品(2004-2008)

父の涙 (by 岩渕 まこと)   


心にせまる父の悲しみ
愛するひとり子を十字架につけた
人の罪は燃える火のよう
愛を知らずに今日も過ぎて行く
十字架からあふれ流れる泉
それは父の涙
十字架からあふれ流れる泉
それはイエスの愛

父が静かにみつめていたのは
愛するひとり子の傷ついた姿
人の罪をその身に背負い
父よかれらを赦してほしいと
十字架からあふれ流れる泉
それは父の涙
十字架からあふれ流れる泉
それはイエスの愛

十字架からあふれ流れる泉
それは父の涙
十字架からあふれ流れる泉
それはイエスの愛


(作詞・作曲 岩渕まこと、アルバム『HEAVENLY』より)

岩渕まことさん。。。
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by hannah5 | 2006-12-21 23:52 | 作品(2004-2008) | Comments(10)

暗やみの中で   


真暗な闇の中を
方角もわからずにただ歩く
一人、手探りしながら
支えてくれるものに手を伸ばす
どこからともなく現れる人の手
私は藁をもすがる思いで
その手をつかみ、たぐり寄せようとする
けれど、次の瞬間
手は私の手を振り払い
闇の中へ消えていった

(手はどこ?

どこからともなく違う手が現れ
私の肩にそっと触れる
私はその手をつかみ
たぐり寄せようとする
けれど、次の瞬間
その手も私の手を振り払い
闇の中へ消えていった
そうして、次々と現われては
私に触れていくいくつもの手と手と手
なぜ現われて消えていくのか
私は暗やみの中で
見えない方角を探しまわる

ふと、暗やみの中から聴こえてくる声がある
かすかだが、私の心の奥ふかくに届く声
静かにささやく優しい声
私が忘れている時も
忙しく賭けまわっている時も
泣いている時も
落ち込んでいる時も
怒っている時も
疲れている時も
眠っている時も
私の心に語りかけてやまない声がある

「あなたに必要なものは人の手ではない
私は暗やみの中で
いつもあなたとともにいるよ
あなたに愛する心を注いでいるよ
あなたはどこを見ているの?
私の声は
暗やみの中でも
街の喧騒の中でも
忙しさに走り回っている時でも
あなたに囁きつづけているよ」

私の痛みに涙し
こぼれ落ちる涙の音を
じっと聴いている人
イエス・キリストがいつまでも
私に語りつづける
私をいつまでも愛している、と
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by hannah5 | 2006-12-20 23:27 | 作品(2004-2008)