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夜道   


夜が深くなった
ハニーサックルの甘い香りが底に沈んでいる
一つずつ音が消えていく
夕方までの熱気が睡眠の中へ落ちていく
月がぼんやりと空に浮かんでいる

人々の間をすり抜けて帰ってきた
思惑
話し声
仕事のこと
明日のこと
たくさんの会話
心が噛みあわないまま・・・

夜道を歩く人影
ぽつんと
一人
また一人

深夜の電車が通り過ぎた
疲れたまま
一台
もう一台

空気がひとしきり静かになった
私の足音が
聴こえる

しまっておいた心を
少しずつ
夜道に逃がしていく

今夜は風が
やわらかい
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by hannah5 | 2007-04-30 23:39 | 作品(2004-2008)

私の好きな詩・言葉(103) 「孤独とじゃれあえ!」(須藤 洋平)   


孤独とじゃれあえ!
          トゥレット症候群と闘う勇者たちへ捧ぐ

真夜中、家中の酒という酒を全て飲み干し、それでもまだどこかに隠してあるんじゃないかと乱暴に探し回った。母は泣いて僕に付いて回り、父はだんまり。そして神棚のお神酒を飲もうとした時、母は泣き崩れた。
(お神酒の中には蛾が溺れ死んでいた)
父は土下座をし「すまない、もっと早くに気づいてやれれば・・・すまない、けど俺たちが参ってしまう、金はどうにかするから出てってくれ、すまない・・・」
僕は一番辛かった頃のように、つまり
ケダモノと呼ばれていた頃のように
意味のない言葉を叫んでいた。

家を飛び出し、堤防から海に飛び込んだ。

夢中になって小さな岩場まで泳ぐと仁王立ち、周りを見渡すと何もない
黒い海にぽつんと「障害」という孤独が際立った。

芸術なんだ!僕の身体は芸術なんだ!
それがその時の僕の唯一の逃げ場だった。
「生きるという事は恐ろしいね」
祖母が畑にはびこる雑草を見て言っていた事を同時に思い出していた。

岸に戻り砂浜に寝転んでいると急に腹痛に見舞われた。薄暗い便所の中で脂汗を流しながらしゃがんでいると、様々な落書きが目に入る。その中に一際大きく、力強く書かれているものがある。
「今は孤独とじゃれあえ!」
それは間違いなく中学の頃、僕が書いたものであった・・・
僕は便器を舐めながら誓った。
いつだってしぶとく生き抜いてやろうと。

二十三歳の夏の事だった。


(『みちのく鉄砲店』より)

他2篇
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by hannah5 | 2007-04-28 15:55 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(8)

光よ、落ちてこい   


生きるっていうことは
どうしたらいいかわからないことがあるということ
絡まっても絡まってもほどくことができなくて
絡まり続けることがあるということ
こらえてもこらえても
沈んでしまうことがあるということ
いつ出口に辿り着けるかわからないことがあるということ

どん底を這い回る
掴もうとしても掴もうとしても逃げてしまう

それでも這い回る
見えない出口を求めて
見えない出口に向かって

手を差し出す

光よ、落ちてこい

この両方の手の上に


※ 『みちのく鉄砲店』 を読んで
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by hannah5 | 2007-04-27 23:16 | 作品(2004-2008) | Comments(2)

  


ひと息入れてコーヒーを飲んだ。

夜が更けて人々はまばらになり
疲労が漂い始めていた。
わたしは底に沈んでいたものをようやく見つけた。

薄暗い陰でひっそりと息を殺したまま
両手で顔を覆い
人目につかないように小さく蹲っている姿があった。
昼間には決して姿を現わさず
その存在を誰にも告げず
大股で歩く人々の間で踏み潰されてしまったと思われていた
小さな小さな姿。
明るい光の中では浮き上がってこないから
いくら目を凝らしても見ることはできなかった。



どこからか
かすかに泣くような声が聴こえてきた。
それはまるで地中の深い所から
苦しげに、しかし、諦めきれずに長々と尾を引くような声だった。

声の出所はこうだった。

時間と時間がこすれ合い
季節が新しい季節を生み出すことを忘れていた。
世の中のわずかな差異が亀裂を作り
それは埋めようもないほど大きくなった。
やがて亀裂は修復できないほど裂けた。
わたしは喉を振り絞り
亀裂の向こう側に届かせようと力の限り声を放り投げた。
幾度も幾度も喉を振り絞り
亀裂の向こう側めがけて声を放り投げた。
何度目かに放り投げた後
わたしは自分の声が到底亀裂の向こう側に届かないことを知った。

何という徒労!
何という無駄!
声はすっかり貧弱に衰弱してしまった。

わたしは声を捨てることにした。

二度と声を耳にすることがないように
二度と声を想うことがないように
わたしは声を小さく丸め
地中深くにしっかりと埋めた。

そして、声のことはすっかり忘れていた。


。。。。。


今夜、思いがけず、久しぶりに声を聴いた。
遠い地中の奥深くから忘れていた声が聴こえてきた。

小さく蹲っている姿が
声を恋しがって、出ない声を絞って泣いている。

一度捨てた声はなかなか拾えない。
ましてや地中に埋めた声は掘り出そうにも
地中深くに住みついてしまって掘り出せない。



今夜はまだ声を掘り出さない。
たぶん明日も
明後日も。

いつか。。。

ゆるやかに風が吹いてきて
その風にそっと乗ることができたなら
世界の向こうの広がりの中へ
声を掘り起こしに行こう
と、思う。


(4/26 全面的に訂正しました)
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by hannah5 | 2007-04-25 23:56 | 作品(2004-2008)

ごく主観的な調和   


話していて面白いのは男
住んでみて面白いのは女
一緒に仕事をして面白いのは男
食事をして面白いのは男
―― 極上、大衆、あらゆる場において秀でた存在
歩いていて面白いのは女
―― ただし、泣かないという条件付きで
沈黙して面白いのは女
旅をして面白いのは男
歌を歌って面白いのは女
踊りを踊って面白いのも女
分解し組み立てて面白いのは男
この論理から引き出して、分析し構築して面白いのも男
涙を流して面白いのは女
―― 実際、涙は驚くほど男をうろたえさせる。横暴な男も涙には勝てない。
優しくて面白いのは男
―― ただし、ある一定の守備範囲の中で
上下に貫いて面白いのは男
―― いや、点と点の孤立した存在というべきか
左右連なって面白いのは女
―― 合い間を埋めていくのがお上手
新しさにおいて面白いのは女
―― 女はいつもとらわれない。生命を生み出すわけだから。
踏襲して面白いのは男
―― 保守と守備がかなりいい

引き出しをいくつ持とうか

引き出しをいくつ持つかによって決まる面白さの振幅
雌雄両方を交互に入れておく
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by hannah5 | 2007-04-24 23:45 | 作品(2004-2008)

出遭えたこと ― ある詩人に   


そしてまた、こうして始める
終わりのない旅の始まりと
始まりのない旅の終わりの
繰り返しを

熱がある
ぼんやりと続いているひとつの熱
本当は何を望んでいたのか最初から知っていたのに
そこへ辿り着けなくて
まわり道ばかりしていた熱

静かなあなたの熱の中で
疲れて折れ曲がっていたわたしが満ちていく

あなたが持っているものを
たぶん、舐め尽くしてしまう
ひそかに
あなたに気づかれないほどさりげなく
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by hannah5 | 2007-04-22 23:50 | 作品(2004-2008)

刺激的 「現代詩フェスティバル」   


今日は夕方4時から、世田谷パブリックシアター(東京、三軒茶屋)で行われた「現代詩フェスティバル 2007 ~環太平洋へ~」に行ってきました。(4月21日(土)、22日(日))

本日の出演者は、日本からは吉岡剛造、野村喜和夫、キキダダマママキキ、小笠原鳥類、関口涼子、中国から田原、于堅、アメリカからマイケル・パーマー(Michael Palmer)、石田尚志の映像「部屋/形態」(野村氏とのコラボレーション)、ダンスの伊藤キム(敬称略)と多彩な顔ぶれでした。詩のイベントと言われるものに初めて行きましたが、詩も映像もトークも全部刺激的で全神経全開で聴き、大いに楽しませていただきました。

日ごろから詩は活字だけの平面的なものであるはずはない、もっと立体的であるはずだと思っていた私は、自作の詩を声に出して朗読するだけでなく、全身のパフォーマンスや映像とのコラボ、ダンスによる表現、外国語と日本語のコラボなどによって表現されているのを見ながら、終始どきどき、興奮しっぱなしでした。

吉増剛造さんが「詩を書いている最中に手が止まってしまった、これで詩作は終わりです」と言われて、皆から惜しまれていました。これから氏の作品をゆっくり読もうと思っていた私はちょっと寂しかった。でも、もしかしたら、また書かれるかもしれませんね。野村氏の言葉を借りれば、「たくさんの最後がある」そうですから。

野村喜和夫さんの 『現代詩手帖 野村喜和夫詩集』 を持っていたので、野村さんからサインをいただきました^^ 小笠原鳥類さんは意外と細くて声が高くて、それに若い!(笑) 緊張していたせいか、鳥類さんはものすごいスピードで詩を読み、途中からスピードを落として読まれました。

いろいろな方たちが見えてました。城戸朱理さんも見えてたし、一色真理さん伊藤浩子さんにもお会いしましたよ。みつとみさんも見えていたけれど、途中で見失ってしまいました。他にも詩と思想研究会の方たちが何人かいらしたみたいです。

私は明日は行けませんが、もし関東近県にお住まいの方でお時間のある方はぜひいらしてみてください。明日の出演者は和合亮一、城戸朱理、平田俊子、近藤達郎、藤井貞和、白石かずこ、翠川敬基、マイケル・パーマー、ヤン・ローレンス、ジョン・マティア、ダンス「スリッピング・グリンプス(A Slipping Glimpse)」があります。(午後2時から)(当日券3500円)

言葉っていいな、詩ってやっぱりいいな、とどこまでも感じ入って帰宅した次第です。


世田谷パブリックシアター
〒154-0004 東京都世田谷区太子堂4-1-1(キャロットタワー3F)
【電話】(03)5432-1526
お問い合わせ: アトリエ・エルスール 【電話】(03)5376-8260
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by hannah5 | 2007-04-21 23:43 | 詩のイベント | Comments(6)

剥き出しの魂   


そうだよ
あなたを想って泣くんだよ

生きても
生きても
いのちが削られていって
それでも生きることを止めないあなたを想って
泣くんだよ

そこにある剥き出しの魂をぐいと掴む

逃げないから
逃げないから

不揃いなあなたよ

私も生きてる
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by hannah5 | 2007-04-20 01:22 | 作品(2004-2008)

愉快な夜   


夜の街に足を踏み出す
暗がりが凹凸に並んでいて
所々に街灯が低く沈み込んでいる
薄暗いコンクリートの断片が
今夜は切れ切れになりそうな気持ちを繋ぎ止めている

今夜、あの詩人はどこを彷徨っているのだろうか
私とさぼど遠くない所で
ひたすら歩き廻っている人を想った

薄い綿帽子の群落が暗がりに滲み出している
黒々とした犬三匹が丸まっている
そのそばに影のように飼い主が立っている

薄暗がりの石段を段々々とひとまたぎ、ふたまたぎ、みまたぎ
段々
段々

ぼんやりと街灯に人が現れた
向こうの暗がりを人がゆらゆらと歩いている
突然、自転車置き場から人が飛び出した
夜道にふいに現れる一人、また一人
真面目に仕事を終えて帰宅する人々
真四角な疲労が覆っている

彷徨彷徨、また彷徨・・・・・
詩人の言葉を口ずさんでみた

今夜は愉快だ


(4/26 推敲訂正)

※あの詩人。。。
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by hannah5 | 2007-04-19 23:20 | 作品(2004-2008)

ゆるめにいこうよ、しばらくね   


どうにもこうにも
厳しいばかりで
きりきりと絞りあげるようにきつく言う
(いや、突き刺すと言った方が適切か)

深刻に考えれば考えるほど
思考回路は内へ内へとのめり込んでいく
辿り着いた所は
荒涼としたナイフの地
さぁーっと振り上げて
おい、お前、やいやい!
と突き刺す

つらい思いをさせた人々が
幾人か
XYZにシュッ、シュッ!

切り口がパックリ開いて
血がしたたり落ちることおびただしく

みんな私にやられて
ザックリ

忙しいとは「心を亡くす」ことだとずっと以前に教わった
忙しいと時間を絞りあげてぎゅうと
自分を絞りあげてぎゅうぎゅうと
体を絞りあげてぎゅうぎゅうぎゅうと
何もかも絞りあげて
絞り取って
ぎゅううううううううう

忙しいと
みんなやってしまいそうだ
だから、大勢の人をメッタ斬りにする前に
一度ザックリゆるめたい
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by hannah5 | 2007-04-17 23:41 | 作品(2004-2008)