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雨が降る   


黒々と
雨が降る
舗道の上に
靴の上に

雨の日は
寄り道をせず
真面目に
まっすぐ歩く

湿ったまま
膨らんだ靴が
黙々と
舗道を歩く

靴が踏む
うつむいて
雨のように
ひそひそと
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by hannah5 | 2007-05-31 23:47 | 作品(2004-2008)

夜のララバイ   


一章翻訳を終えるたびに
自分へのご褒美に
駅前のマクドナルドで
一杯百円のコーヒーと
一個百円のホットアップルパイを買った
全部で十四章あったから
合計十四杯の一杯百円のコーヒーと
十四個の一個百円のホットアップルパイということになり
これがけっこう心をゆるめてくれた

今夜も
一杯百円のコーヒーと
一個百円のホットアップルパイを目の前にして
けれど今夜は
心をゆるめてくれるご褒美ではなく
どことなく解放されてゆくような
淡々と抜けていくような感じがしている

夜は案外捨てがたく
昼間のデジタルな鋭角を脱ぎ捨てて
カラフルな点々が斑点になったり交じり合ったりして
アナログでしか切り取れない曖昧を
悠然と着込んで過ごす

だから、夜出会う人々は
昼間の私を知らないし
昼間の人々は
夜になって虚ろな顔をして
時間のあちらこちらをうろついている私を知らない

夜が擦り切れて沈んでいる

時間の狭間に埋めてきた思いや感覚が
風のように舞って
浮遊している
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by hannah5 | 2007-05-30 23:43 | 作品(2004-2008)

私の好きな詩・言葉(105) 「<永遠>抄」(城戸 朱理)   


(冥王星)よりも昏い
プ ラ ト ー
     十三番目の惑星を見つけるべく
少年が手にするのが
            <天体望遠鏡>なら
“罪体”なき事件に遭遇すべく
不在証明を綴りつづけるのが
生ある者の日課のごとき
              <宿命>だろうか
昼には散策の途中で青いドングリを摘み
夜には書斎で難しい顔を練習する“文筆家”
ある星は「水」で出来ている
ある星は「鉄」で出来ている
だから、多量の水やら微量の鉄やらで出来ている人間が
郷愁を覚えたりするのが
              <星空>
玉蜀黍の髭を抜き
トウモロコシ
熟れた西瓜を割ったりしながら
夏の休暇は過ぎる
暗黒に浮んでは興亡する
                <太陽系>
                 ソラーシステム
だが過ぎ去るのは“時”ではない
紙でできた時計を考案せよ
次には、それを燃して
残された<時間>を計測せよ
石は「永遠」を感得しない
鉄は「永遠」を感得しない
それゆえに、人間であるならば
                   朝になると
とりあえず起きることにする
夕方に読むなら“犯罪小説”
          クライム・ノベル
夜が来たらば朝を待ち
              お尻の青い子供を叩いたり
白くたわたわとした肉体と
                絡み合ったりもせよ
石は「永遠」を感得しない
鉄は「永遠」を感得しない
その“分子的結合”からは
関係律が
     さらさらと
           焼失していく
次なる説話に見る“東洋的”喩法 ――
「大地の中央に巨大な(巌石)がある
               いわいし
縦、八十里
       横、八十里
              高さ、八十里
そこに降臨するのが(天女)
三年に一度、降り立っては
天衣で岩をヒラリとこする すると
(天女)が昇天してから
    再び降り下るまでの時間が“三年”
そして(巌石)がすり減って
“無”になるまでの時間が
                <永遠>」
(不死ならぬ者)ならではの
 モ ー タ ル
                 避け難い宿命を
眠れぬ耳に聞かされる子供たち
(天竺)の昔話を
          夜毎、聞かされたとしても
翌朝になると
        ほとんど忘れ去り
手の染まりそうな
          <青天>の下で
捕えた魚を空に
          磔にしたりする
          はりつけ



( 『現代詩文庫 城戸朱理詩集』 )

他1篇
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by hannah5 | 2007-05-27 00:57 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(2)

まずは at random に読む   


閉じていた扉をおもむろに開けば
形の良い思考が行儀よく並んでいる

らしい装いと体裁
らしいポーズとスタイル

一つずつ、一定の速度で導き出した言葉に
スタイルを着せ
隙のない緊張を纏わせ
等間隔に並べていく

安逸な言葉を求めない
可能な限り彷徨を続け
世界の奥底や
精神の内部に潜む不思議を探り
極めて冷静に求めていく

知と知が和音を奏で
抒情は流れない
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by hannah5 | 2007-05-26 22:35 | 作品(2004-2008)

緑が萌える   


緑が日一日と濃くなる

緑は呼吸の中から湧き上がり
あらゆるものを緑に染め替え
生命の奥底に刻みこまれる

新しい細胞が生まれるたびに
生命は光合成を繰り返し
隅々から再生される

見上げれば緑
さわさわと葉ずれ
小刻みに震えて
風が生まれ
緑が生まれる

緑は風に呼ばれ
深々と溢れながら
風の向こうに続いていく
息を吸い
息を吐き
風の中に緑が生み落とされる

見渡せば緑
地を這い回り
足を捉えて
立ち昇る
足からももへ
腹から胸へと

体の中に緑が生まれる
体の外に緑が生まれる
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by hannah5 | 2007-05-24 22:33 | 作品(2004-2008)

ある日々   


主のために
一日があるように

朝、目覚めた時から
私たちは主の臨在の豊かさを喜んだ
御言葉を知ることによって一日が始まり
賛美の礼拝に心躍らせ
兄弟姉妹と食事をともにし
夕方には労働と奉仕に勤しみ
消灯まで御言葉の学びを続けた

私たちはそうして一日を過ごし
一週間が過ぎ
一月が経ち
一年、二年、やがて四年が過ぎて
学びを終えた

主のために日々があり
主の臨在と栄光の中で御声を聴き
御手に導かれるままに
生きていくことができるように
主の臨在の中に生き
住み続けることができるように

祈り
励まし合い
日々、思いが清められ
未来に光が灯り
主とともにいることの確かさと平安を
かけがえのない宝石のように抱き締めた

いのちが洗われて
古いいのちが滅び
新しいいのちが生まれた


神学校で学んだ日々は
巡る季節の中で
今も美しく輝いている


※ある神学校で

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by hannah5 | 2007-05-22 14:20 | 作品(2004-2008)

メンソールの香りがする自由 ― 詩人K に   


ざぶんと飛び込めるのがいい
躊躇せずに飛び込めるのがいい
飛び込んだら自由気ままに泳げるのがいい
たとえ下手でもどこにもぶつからずに
いつまでも泳いでいられるのがいい
泳いでいるうちに体中が呼吸して
細胞の隅々まで酸素が行き巡り
のびのびと栄養が行き渡っていくのがいい

知と情と思と感がある時は交互に順序よく
またある時は順序不同に身勝手に
私の中に流れ込んでくる
そして潔く溶けていく
それはよくある人生の燃焼や
熱い思い入れといった熱の伝達とは違う

知の重積と広範がある
古今東西の収集と咀嚼がある
それらが言葉の合い間や余白の空間に住み
冷徹な脳髄の香りとなって伝わってくる

脳味噌の先端で発しているそれらの
鋭い切っ先が心地いい
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by hannah5 | 2007-05-20 19:27 | 作品(2004-2008)

  


風の向こうに
風が聴こえる

風は
木々の間を駆け巡り
生い茂る葉を梳き
街の底を這い回り
あらゆる物を撫で
遠くへ
遠くへ
駆けていく

街はずれまで駆けていった風は
ひと巡り
ふた巡り
み巡り
彷徨を繰り返しながら
地面に突き刺さっていく

風の向こうで
風が騒いでいる

空気を揺さぶり
こすり合わせ
人々の労働や眠りの隙間をすり抜けて
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by hannah5 | 2007-05-18 23:22 | 作品(2004-2008)

MY DEAR でまた秀作をいただきました。   


自分だけで詩を書いていると、人はどんなふうに私の詩を見てくださるのかわからないのですが、見ていただいて評や感想をいただくと、ああ、そうか、人にはそんなふうに映っていたんだなとか、逆に思い入れたっぷりに書いたのに相手に伝わっていないんだなどと思わされます。島さん、三浦さん、伊藤さん、いつもいつもありがとうございます。(MY DEAR

今回は2作に秀作を、1作に秀作1歩手前をいただきました。


1. 「波の間」
       (2007年2月7日投稿)


「元気にしてる?」
「うん、まあまあね」

あなたのまあまあねは
明るくなったりグレーになったり
振幅があるから
今日はどのあたりなんだろうかと考える
寂しいような情けないような顔が
ふと浮かんできて
今日のまあまあねは
濃いグレーかもしれない

十日ほど前、朝早く
ひりひりして目が覚めた
底の方に
唐辛子のあなたが沈んでいた

あの日の出発は
なんだか心細そうだったし
引きつったままの気持ちをさすりさすり
誰かに甘えることもなく出て行った

気にしてみても始まらない
何より、決めたのはあなた自身だから
そっとしてあるのだけれど

小舟よりもっと危うい
木の葉のような細々としたあなたの後ろ姿が
大海の波間に漂って揺れている

「平気だよ本当に」
「それならいいけど・・・」

波の間に
唐辛子がぽつんと浮かんだ
心配性だからねぇって
笑ったみぞおちのあたりが
まだゆらゆらしている


島さん評

はんなさん「波の間」
登場人物が、どうもクチべたな様子なので、私は母に対する息子イメージで読ませてもらいました。本当のところはどうか知らないけれど、たぶん凡その人はそう読むでしょう。
思考が粘り強く続くようになりましたね。軸が1本しっかりあって、ブレなくなりました。表現方法はいろいろ試されるようだけど、本質的な進歩はそこにあると思う。
情感も比喩も、その思考の軸にうまくミキシングしていきます。この詩あたりが、やっぱりはんなさんの基本スタイルだと思う。秀作を。
「まあまあ」の振幅の話。大阪弁の「ぼちぼちでんなー」とタブりながら、苦笑しながら読みました。第2連は、序盤の「掴み」としては、最高ですね。
第4連の「気持ちをさすりさすり」、第3連登場の「唐辛子のあなた」という表現。また唐辛子がのちに木の葉と入れ替わるところもおもしろいです。
「みぞおちのあたりをゆらゆら」も、あまり硬質にならず、抒情詩に合う距離感を、よく掴んだ比喩だと思います。
成人した子供と、それを遠巻きに心配する親の、直接会話は少ないながら充分な心のやりとりのある一場面で、感情的な1作です。文句ないですよ。これも残しておいて欲しい作品です。



2.  「カレー屋」
         (2007年3月20日投稿)


何年前のだかわからないナツメロがかかっているカレー屋で
腹をすかせた男たちの中に坐る

女のいない男たちの空間は
カレーとスパゲティの大盛りを
ひたすら体の空洞に流し込む
大盛りのサラダにどぼどぼかけたドレッシングが
湖のように千切りの野菜を浸す

色気抜きの男たちの目のいろは
会話というより体の中から発する音に近く
たまに交わす相槌が途切れてつながっている

男たちは女の子といるとこういう店より
小奇麗でよそよそしいスパゲティの店に行くのだろう
神妙な顔でスパゲティをフォークにくるくる
だがそんな所では男の顔には会えやしない

ここでは男たちは目を輝かせて
ひたすら点のような会話を食べている

ものすごい勢いで食べていた隣の男が出て行った
体の中から立ち上っていた熱も
男とともに出て行った
坐っているだけで体の厚みが
部屋の温度を上げてしまうような男だったけれど

男たちが二人また入ってきて坐った
二人一斉に横を向いて壁のメニューを見つめている
注文を終えると二人揃って前を向き
のっぺらぼうに広がっている空間を覗き込んだ

くぐもった声が最低必要限のふた言み言
一人がおもむろに煙草に火を点けた

ふと、何の脈絡もなく
あの人の顔が厨房の向こうに立った
それはごく自然でさりげなく
あの人の空気そのものだった


島さん評

はんなさん「カレー屋」
大衆的な食堂の雰囲気がよく書けていて、いい詩です。実に雰囲気がある。ちゃんと仕上げれば、あなたの代表作の1つになってくれる詩ですから、ぜひ、ちゃんと仕上げてあげて下さい。
秀作にあと一歩。

第3連1行目「目のいろ」。たぶん、ひらがなにした方が強調になると思い込んでるフシがありますが、それは違います。ここは「目の色」と漢字にしないと、逆に弱まってしまってます。
第3連3行目、「途切れてつながっている」は、気持ちはわかるがあんまりです。ここまで書くと日本語になってないと思う。「途切れながらつながっている」くらいで。
第4連4行目、「そんな所では」は、強調の意で言葉を崩しましょう。「そんな所じゃ」でいいと思う。
第6連2行目、ここだけことさらルビというほどの部分ではないので、「立ちのぼっていた」と表記して、ルビなしにしましょう。
第6連5行目、「空気の温度」→「部屋の温度」または「室内の温度」。
第8連1行目、「最低必要限」→「必要最低限」。

言うと、1~8連までが導入で、終連がヤマなんです。終連をどんでん返しと間違えている。ここはヤマ場だから、バランスから言ってもとうてい4行では表現しきれません。もっとしっかり書いてほしい部分。顔が現れただけでは、実在とも、夢ともわからない。ここにはいない過去の男の幻影を見たのだろうと読者に誤解されても仕方のない書き方。そうではなくて、この男に会うために、作者はここに来たはず。男の働く様子、実在感が出るくらいにはここは書かないといけない。それからラストの2行に入ってほしい。
冒頭に書いたとおり、すごくいい詩になれる詩だから、しっかり仕上げてあげて下さい。



3.  「レールの終着点」
            (2007年4月5日投稿)


ひと山のズボンが改札口から絞り出される

ぐわり
ぐわり

黒々とズボンが歩く
バス停に並び始める
列が出来る
列からこぼれたズボンが
スーパーの向こうの暗がりに吸い込まれる

ひと山のブーツが改札口から絞り出される

くわり
くわり

細々とブーツが現れる
バス停の列に加えられる
列が出来る
列から漏れたブーツが
スーパーの向こうの暗がりに吸い込まれる

タッ タッ タッ タッ タッ

無言の靴音が舗道を鳴らす
ズボンが次々と歩く
ブーツが細々と歩く

タッ タッ タッ タッ タッ

働くために存在する足
歩くために存在する労働

バス停の列が膨れる
暗がりが吸い込む

寡黙なレールから降りる

今日という終着点


島さん評

はんなさん「レールの終着点」
ちょっと荒っぽいのですが、荒っぽいなりにトーンはあっているので、読む分にはさしつかなく読めてます。
下から30cm~50cmくらいに所に視線があるみたい。子供の視線よりまだ低い。もうこの視線だけで、がっちり印象に残る詩です。特に、第1連は鮮烈。その意味で秀作あげていいと思う。
「スーパーの向こうの暗がり」という、謎を1つ用意(スーパーではなく、スーパーの向こう側。何があるのか、いろいろ想像をかきたてられる)してくれていて、良いスパイスです。答えの見つからない楽しさがある。単調なこの詩にとって、必須のスパイスです。
この詩、擬音のところをおもしろく発音できれば、意外と朗読で映える詩ですよ。

島さんから評をいただいたあと。。。
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by hannah5 | 2007-05-17 23:45 | 投稿・同人誌など | Comments(12)

緑を食べる   


気になるのは


去年も
おととしも
日々息を吹き返し
新しく生まれてくる緑を吸っては
立ち尽くした

今年も
いつのまにか
あたりが緑に染め替えられていた

土の中から
木々の間から
家々の奥から
空気の中から
緑がぐんぐん生まれてきて
街を歩いていると
体中が緑色に透き通ってくる

私は青虫のように
緑をむしゃむしゃ食べている

緑いろの
いいにおい
溢れてる
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by hannah5 | 2007-05-15 23:36 | 作品(2004-2008)