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あ、   


あ、
の発見があった
ごはんの仕度をしていた時
突然ゴムが切れたみたいに
パチン!

一瞬、部屋中に電気が流れて
ビリビリと視界が破れた
あ、あ、あ、
理解が雪崩のように落ちてきた

その途端に
あっちこっちに散らばっていたパズルのピースが
いつのまにか行儀よく収まって
一枚の絵になっていた
なるほど、これとこれは隣同士だったか
それとそれは上と下だったんだ

二千五百ピースのジグソーパズルを持っている友人がいる
全部組み立てると落穂拾いの絵になる※
もうずいぶん長いことパズルを組み立てようとしているが
小さなピースの色や形はどれも似ていて
なかなか進まない
あのパズルが落穂拾いになるのは
たぶん、十年先か

私の
あ、
はまだ二百五十ピースくらい
落穂拾いの迫力になるには
あ、
と言ったまま
何回も雪崩に襲われなければならない

ごはんが出来た

今夜は
あ、
が響いて
まだごはんが食べられないでいる


『ミレーの落穂拾い』



(7/1 推敲訂正)
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by hannah5 | 2007-06-30 23:43 | 投稿・同人誌など

私の好きな詩・言葉(107) 『六十二のソネット』より(谷川 俊太郎)   


56


世界は不在の中のひとつの小さな星ではないか
夕暮・・・・・
世界は所在なげに佇んでいる
まるで自らを恥じているとでもいうように

そのようなひととき
私は小さな名ばかりを拾い集める
そしていつか
私は口数少なになる

時折物音が世界を呼ぶ
私の歌よりももっとたしかに
遠い汽笛 犬の吠声 雨戸のまた刻みものの音・・・・・

その時世界は夕闇のようにひそかに
それらにききいっている
ひとつひとつの音に目をたしかめようとするかのように


(『六十二のソネット』より、『谷川俊太郎詩選集Ⅰ』(集英社文庫)にも収録)

もう一篇
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by hannah5 | 2007-06-28 23:48 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(6)

渋谷   


バツグンにきれいな脚の女の子たち

ホットパンツの下の長い長い脚が
地面にゆるやかにおりていって
遊んでる 足の先

十センチはあるヒールのサンダル
自分より二十センチも低いボーイフレンドと
嬉しくて 歩く

マラカスのシャカシャカと
ロックのドラムと
透明なボーカルが混じり合う街の中を
腰までの髪がスパスパ歩く

道路の欄干をひとまたぎする
脚が優しくて 大らかで 軽くて まぶしくて
歩くことは生きているそのままだから

男の子が綺麗だなと思う脚
女の子が自慢したくなる脚

揺れて立ち止まる桃色の爪先

白くて細くてさっそうとした脚が
ここから向こうへ
ここから向こうへ
きゃぴきゃぴと歩く

呼吸している
脚たち

街の中
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by hannah5 | 2007-06-26 23:54 | 作品(2004-2008)

  


ぎいっ

誰かがどこかで
扉をあける音がした
近くであいたような気もするし
遠くであいたような気もする

歩き回って
耳を澄ましてみるけれど
扉はどこにも見つからない

ぎいっ

どこかでまた
扉のあく音がした
微かに聴こえてくる明るい話し声
胸の奥にあたたかな光が灯った

捜し回ってみるけれど
やっぱり扉は見つからない

ぎいっ

扉のあく音がした

扉を見つけたくて
音のした方に向かって歩いていく

ぎいっ

またどこかで扉があいた

けれどいつまでたっても
扉は見つからない

見えない扉を捜して
ひたすら歩き回る



こんな日は
さようなら
と言ってしまいたくなる

すべてのものに




(何度も推敲の上訂正^^;)
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by hannah5 | 2007-06-24 23:44 | 作品(2004-2008)

解散前のトルソ   


トルソ達が寄り合う
仲の良い兄弟のように
甘い匂いの彼らや
酸っぱい匂いの彼女らに
引き寄せられ 同化されていく
新しいトルソがふいに立ち寄り
ゆらゆらと揺れながら 匂いを確かめ
やがて同化する接点を見出し
いつのまにか新しい匂いが消し去られている

トルソ達の集合体が膨れあがっていく
途中 何かに驚いた魚のように
分散していくトルソの固体 二つ 三つ
それには気づかないように
新しいトルソが加わり続け
トルソ達の群落が一つの生命体を明滅し始める
トルソ達は同じ方向に呼吸をなびかせ
一つの心音を響かせて 立ち尽くす

新しいトルソがまた立ち寄る
甘い匂いの彼らや
酸っぱい匂いの彼女らに
引き寄せられて
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by hannah5 | 2007-06-22 23:56 | 作品(2004-2008)

一枚の顔   


顔が了解する
顔が測る
      パレットの配置・順番・配置・順番
顔が考える
顔が相談する
顔が納得する
顔が判断する
      ロールの上・下・上・下
顔が覗き込む
顔が確認する
顔が合図する
顔がバックする
      爆音の炸裂・炸裂・炸裂・炸裂
顔が角度を変える
顔が見つめる
顔が思わない
顔が前進する
      爆音の炸裂・炸裂・炸裂・炸裂
顔が迎えに行く
顔が待つ
顔が数える
顔が並べていく
      段々・段々・段々・段々

沈黙が貼り付いている
もうもうと排気ガスが立つ
コンクリートの倉庫の中
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by hannah5 | 2007-06-20 23:55 | 作品(2004-2008)

フォルム   


ひとつの美しいフォルムがある

連続動作の繰り返しの中
無表情が貼り付いたまま
作業帽の下の静かな沈黙

エンジンが唸りをあげて燃え、排気ガスを噴き上げる
フォークリフトが単調な前進と後退を繰り返す/前進する・後退する・前進する・後退する・前進する・後退する・前進する・後退する
フォークリフトは飽きることなく運搬する/ロールを掴む・上げる・回す・下げる・後退する・積む・離す・後退する・前進する・ロールを掴む・上げる・回す・下げる・後退する・積む・離す・後退する・前進する・ロールを掴む・上げる・回す・下げる・後退する・積む・離す・後退する・前進する
フォークリフトはまた倦むことなく動き続ける/パレットにフォークを突き刺す・上げる・後退する・前進する・置く・後退する・パレットにフォークを突き刺す・上げる・後退する・前進する・置く・後退する・パレットにフォークを突き刺す・上げる・後退する・前進する・置く・後退する

排気ガスから熱気が放射される
沈黙は波立ち、顔が了解する
顔が待つ
顔が覗く、ロールの上下(うえした)
顔が判断する
顔が角度を変える
顔が迎えに行く
顔が数える、にぃ しぃ ろぉ やぁ

排気ガスで薄紫色になった倉庫の中
前進と後退が共鳴し
顔が次々と並べられていく

しんいちさんへ
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by hannah5 | 2007-06-19 23:52 | 作品(2004-2008)

こんな日   


そういうことだ
なんて断定できない日がある

どこそこへ何時までに行くというスケジュールがあり
ミーティングや打ち合わせや昼食会をすませて
次の目的地へ移動する

車窓から見える景色のように心は流れ
時々立ち止まり
水のように溢れてまた流れ始める

記憶の奥でかすかに音が聴こえる
それがどんな音だったか
いつか思わぬ時に
たとえば他の記憶の繋ぎ目で暮らしているような時に
ふいに断片が聴こえてきたりする
記憶の底にこびりついているような音だ

その音を聴いていたのはこんな気分の日だった
古いメールを開いてみるように
その時の気分をフラッシュバックしながら開いてみる

静かな昼下がりだったかもしれない
明るい夏の午後だったかもしれない

つかまえようとしたら底に沈んでいたのは
ピンと張った水色の記憶と
薄く引き伸ばした空気

奥底を引っ掻いてみる

音がふっと消えた

この頃時々
こんなことがある
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by hannah5 | 2007-06-17 23:57 | 作品(2004-2008)

窮鼠猫を噛む   


穴の中を覗くようにして
言葉を覗きこんでみる
何か書こうと思うのだけれど
夕べのことが心の中に引っかかって
言葉が出てこない

考え事をしているうちに
夕飯の時間をだいぶまわってしまった
洗濯機を回してからごはんを作り始める
丸くなって眠っていたハムスターが
起き出してうろうろしている
ひとしきり体をかいたり籠をかじったりしているうちに
また丸まって寝てしまった
洗濯物を二階に干しにいく
庭の枇杷の木で何かが猛烈に暴れている
枝がドサッと落ちた

(あれこれ手を出していたら
(全部、物見遊山で終わってしまいますよ

谷川俊太郎はひとつの書き方に何度も飽きて
違う書き方をしてきたし
詩人ならいろいろ書きなさいよ
と思っているのに

それにしても、このハムスター、えらく気性が荒い
かわいいと思って指を出したら
きっきっと声をあげて猛烈な勢いで噛みついてきた
それで思い出したのが「窮鼠猫を噛む」という言葉だ
追いつめられた鼠は
居直ってがぶっと噛みつくというわけか

そういえば最近、あっちこっちでよく噛まれる
追いつめられた人間が居直ってガブリ!
これがけっこうこたえる


私は詩を書く時は自由でいたいのです
あなたの事情も
あなたの親切も
あなたの評価も
何もかも振り切って歩いているからといって
急に噛みつかないでください
言葉は唯一
私を解放して、再生してくれるものなのですから
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by hannah5 | 2007-06-15 23:57 | 作品(2004-2008)

これから   


飛び込んでいく
池よりも
プールよりも
海よりも
もっと大きな 溢れる 中へ

叫ばなくても
呼ばなくても
ぽこぽこと湧いてきて
そこに入ると 溺れそうだ

形よく
お行儀よく
体裁よく並んでいる言葉たちへ
さようなら

いのちの真ん中から溢れてくる
いびつで
ごつごつしていて
ひび割れていて
甘くて
酸っぱい言葉たちへ

これから 会いに行く
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by hannah5 | 2007-06-15 01:48 | 作品(2004-2008)