<   2007年 07月 ( 20 )   > この月の画像一覧   

雨がふる   


いつまでも
立ち去りがたく 待っている

雨の夜

思いの中に
立ち現れては 消えてゆく

すれ違い
舌足らず
かすり傷

降る雨に 落としてみれば
雨粒の小さな爪先に 絡められ

いつまでも
雨を見ている この夜の

パドゥドゥ
パドゥドゥ
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by hannah5 | 2007-07-31 19:54 | 作品(2004-2008)

鰯の缶詰工場   


鰯と鰯が鰯の間に押されて
ぎゅうぎゅう
鰯くさい息を吹きかけ
鰯の眼をして
鰯のまんまで
疲れた顔で垂直に並ぶ

鰯と鰯が鰯の上に重なり
ぎゅうぎゅう
鰯くさい汗をかいて
鰯の膚いろ
鰯の奥まで
疲れた体を押し込み押し込む

鰯と鰯が鰯の隙間に挟まり
ぎゅうぎゅう
鰯の気持ちになって
鰯の顔をして
鰯になったよ
ぎゅうぎゅう ぎゅうぎゅう

真夜中の電車は
鰯の缶詰工場
吊革に古ぼけた顔がぶらさがり
ぎゅうづめの鰯たちが整然と並ぶ
孤独な鰯たちの奇妙に孤独でない時間が
今夜もまたひと時ある
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by hannah5 | 2007-07-28 23:56 | 作品(2004-2008)

新しい歴史が始まる   


脳髄が麻痺するほど酔いつぶれる時
新しい歴史が始まる

たかだか二十センチ四方の球体の中で
日夜休むことなく活動し
展開している森羅万象の観測と発見
そこから引き出される考察と結論
微小な世界の一個体の出来事が
球体の周辺に留まることをよしとせず
一個体を抜け出し
一都市を通過し
一国家を超え
あらゆる国へと波及していく

月へ行く宇宙飛行船に
球体を積み込んで飛び出していく日も近い
月に到達した球体はやがて
宇宙に連々と浮かんでいる星々に信号を送るだろう

脳髄が酔いつぶれて壊れてしまわないように
球体をよく鍛えておくがよい

地球が混沌としていることに気をとられているうちに
顕微鏡でも認識できないほどの微細な変化が
一夜のうちに世界の歴史を塗り替えるだろうから
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by hannah5 | 2007-07-28 02:02 | 作品(2004-2008)

誰も知らない可笑しみを笑う   


脳がはじけて可笑しいときには
へそがぐふっぐふっと振動する

最近もそんな出来事に出くわした
一つの場所から次の場所へ行くまでの小休止に
ある場所に
―― それは私しか知らない空間だったが
深々と身を沈め
ようやく息をついた時だった
私はその場所がひどく気に入って
あらゆる自分を放り出してそこに坐っていた
目の前には
小さなカップに注がれたいくぶん甘めのアップルティが置かれていた
私は湯気に立ち上っていくアップルの香りをぼんやりと見つめていた
携帯が何度か点滅し
何通かのメールが受信されるころ
アップルの香りとともに立ち上っていた意識が
ふと、湯気の中に掻き消えて
彷徨と徘徊を繰り返し始めた

私はいつのまにかよく知っているはずの
―― けれど、その時はまるで初めて見るような
街に立っていた
私の足がふわりと歩いた
やがて、私が気づかないうちに
足はものすごいスピードで街の中を疾走し始め
まるで車窓から眺めているみたいに
街の景色が、びゅんびゅん、と飛んで行った

時々、ひとつの街の中を徘徊し、
所々に立っている標識やら記念碑やらのところで立ち止まり
歴史の一点であることを確認し
景観の一点であることを認識し
地上の一点であることを感嘆し
やがて、また、びゅんびゅん、と飛んで行った

次へ次へと疾走し
いたって真面目に追求した
(「真面目」とは微細に踏み込み、「真=真に、まっすぐに、直線に、ぶれることなく」であり、「面=つらがまえ、おもて、体裁よく」であり、「目=覗く、見る、窓、情報の出入り口」であるからして、几帳面におごそかに、ひたすらじっと見据え、ひたすら観察し、ひたすら理解し、ひたすら蓄積することである。)

それは意識から無意識へ
あるいは無意識から意識へ切り替わる瞬間の
しごく無防備な姿の発見だった
無防備であることに真面目であればあるほど
滑稽という文字の可笑しさがつのった
ごく主観的な出来事の始まりは
内側に留まることを止め
裸になって外側を歩くことらしい

私はその場所に
誰にも気づかれないようにはじけた脳をそっと隠した
夜毎、その場所を訪れるたびに
一人こっそりとはじけた脳を取り出すことにしている

やっとね。。。
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by hannah5 | 2007-07-27 12:46 | 投稿・同人誌など | Comments(0)

季節がわたしを振り返る   


陽はすでに明るくなっているのに
風が冷たい
季節はまだ幼くて
コートの襟を立てて歩く
凍みるような風が
わたしの体の中を通り抜けていく

ピンクや黄色やオレンジが陽射しの中で
匂い立ち始めた花屋の店先
薄桃色の霞がこぼれ落ちる
オレンジがパッチリと開いて
まあるいつぼみが上を見上げている

心の裡であたためていた想いは
誰にも届けられず
長い冬の中で封印したまま
けれど、想いは消えることはなく
陰影のある明滅を繰り返しながら
眠り続けた

それはふとしたきっかけだった

誰からも忘れられていた頃
季節が小さな寝返りを打った
空気が静かに余韻を鳴らすと
誰彼となく胸の奥が騒ぎ立ち
お互いの眼の底を覗き込んだ

うん?
うん
そう?
そう

揺れている空気を感じて
あちらこちらで頭が頷き合った
確かにあの向こうに
細波(さざなみ)を送り出す源がある

淡々(あわあわ)とした光の中を歩く

冬の中で眠っていた想いが
目覚め始めて
ゆっくりと伸びをした
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by hannah5 | 2007-07-26 23:49 | 作品(2004-2008)

舟出   


満ち満ちた様を手に取る
美しいヴァリエーションの波が寄せては返す

わたしがまだ見たことのない
広々とした大きな世界

一艘の舟を出す
ゆっくりと漕いでいく

陽がのぼっている間は舟を漕ぐ
疲れたら漕ぐのを止めて眠る

雨の日は雨を見ている
雨の降る音を聴いている

舟は何処へ行くだろう
行き先を告げられぬまま

知っていることはただひとつ
何処までも存るということ

舟を漕ぐ
深い世界のただ中へ
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by hannah5 | 2007-07-25 23:31 | 作品(2004-2008)

扉 - 詩人K に   


あなたについて行けば間違いはない
と思ったことがある

直感だろうか

いくら目をそらしても
いくら意識すまいと思っても
体の深い所に杭が一本打ち込まれたまま
身動きできずにいる

あなたについて行けば
どこかへ辿り着けるのだろうか

カーテンをあけたら
妖怪のようなおどろおどろしい世界が広がっていて
その異様さに魂が凍りつくかもしれない

直感というのは底知れぬ力をもつ
あらゆる思慮深さとあらゆる理性を引きちぎっても
平然としている
この直感のおかげで
何度も喪失の無力を味わった
それでも性懲りもなく不埒な行動を繰り返す

そういえば
あなたはとてつもなく大きな世界の話をする
世界の相互依存とか
世界の文化遺産とか
日本の歴史的貢献とか

識ることの充足

あなたについて行けば
しみったれた感傷が消えていく
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by hannah5 | 2007-07-23 23:48 | 作品(2004-2008)

hotel ヒポカンパス追記   


実は昨日の「hotel ヒポカンパス」でアップしたい詩があったのですが、ヒポカンパスのお知らせのポストカードや会場でもらった詩などを入れた手提げを帰りの電車の中に忘れてしまい、アップできませんでした。幸い、手提げは終着駅の落とし物・忘れ物の窓口に届いていましたので、今夜、アップします。(取っておいてくださった駅員さん、ありがとうございました。)

詩の朗読には「私の幼年時代」という共通のテーマが与えられていて、それぞれが幼年時代について書いた詩を披露しました。どれもすばらしかったけれど、その中で、私の中にすっと入ってきた詩がありました。井本節山(そつたか)さんの「夏のとびら」という詩です。ご本人に了解を得ましたので、下にアップします。(井本節山さんは 「hotel」 の同人です。)


「夏のとびら」

                  井本節山


こんもりとした木々の陰、深い湿った緑の暗がりから飛び出し、黄色に響く野花、をいとおしく縫い合わせてゆく、あのメジロの声が聞こえる、これが第一章の頁。

                                       収集されたこだまを壁に張り付ける、長い雨期の仕事。ここでも緑は湿っている。しわしわになり、端のめぐれ始める様々な響き。壁の状差しに刺さったまま遠ざかる切手の消印に似て。(かつてそれらは繁っていて、私の隠れ家だった。)

                     祖父の部屋こそが森のようだった。連なる本の背に書かれた外国の文字。もう誰も使わなくなったパイプにこびりついた真っ黒なヤニ。そこではかつて火が燃えていた。マントルの移動を説明する、そのゆっくりとした手の動き。どこか遠い中心で燃え続ける巨大なパイプ。音楽に似た外国のことば。

                                      疲れやすい子供。タオルケットにくるまって、開け放した縁側の向こうの眩い光に目を細める。土を渡ってきた風、湿った緑の匂い。かき氷が台所で準備される。けだるい、うっとうしい。あの草はなぜあんなに細くて、硬いのか。地上に、誘うようにゆっくりと光って、それが第二章の挿し絵。

                                                      死んでゆくひとたちのことを思う。祖母の匂い。病院の白すぎる壁、廊下。おいで、と微笑む、変わらぬ仕種。手渡した、庭の丸い小石に触れて、泣きだした祖母。小石を通じて祖母はつかの間、この庭に立ったのだろうか?隅のカタクリはやはり保たなかったのを見ないでほしい、と思う。

        湿った夜、その底にいる楽しみ。もっともっと夜が広がればいいと思う。ねむれ、カタクリ、ねむれメジロ。庭に出て、息を深く吸う、さやさやと鳴って、通過してゆくものたち。ねむれ、パイプ、ねむれ小石。

                       お気に入りだった絵本を引っぱり出してみる。薄い、大きな本の、ひんやりとした固い手触り。最後の頁がちぎれているのに気付く。私が破いたのだろう、こぼしたチョコレートのしみがべっとりと付いている。黒い兎はこのあとどうなるのだろうか?もう誰にもわからない。終わることを禁じられ、欠落へと開け放たれたままの物語。それは名づけ方のわからない、この章のとびら。
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by hannah5 | 2007-07-22 23:50 | 詩のイベント | Comments(0)

盛況でした hotel ヒポカンス   


いつも活字で読んでいる詩を耳で聴くと、作者は本当はこんなふうに書いていたのだなと思う。今日はスペースwa! で開かれた詩の朗読会 「wa! hotel ヒポカンパス」 に行ってきました。詩誌 「ヒポカンパス」 が主催し、もうひとつの詩誌 「hotel」 が協賛という形を取って、「ヒポカンパス」 の解散記念朗読会だったようです。(「ヒポカンパス」は岡島弘子さん、水野るり子さん、相沢正一郎さんによる同人誌。「hotel」 は野村喜和夫さん、海埜今日子さん、川江一二三さん等による同人誌。)(「ヒポカンパス」は脳の記憶を司る「海馬」の意味。)

「ヒポカンパス」はもともと井上直さんという画家と岡島弘子さん達がコラボで出されていた詩誌らしく、今日は会場に井上直さんの線画のデッサンが飾られ、野村喜和夫さんや岡島弘子さんたちの詩の朗読、そしてジャズと民族音楽をを融合させた創作音楽音を送り出しているROSSAというグループのコラボレーションが披露されました。いつもこういう所に来ると、私の中で波立つものがあります。芸術から発せられるエネルギーと情念のようなものが私に刺激とエネルギーを与えてくれるのです。出演者は相沢正一郎、水野るり子、一色真理、岡島弘子、新井豊美、柴田千晶、片野晃司、井元節山、野村喜和夫、根元明、広瀬大志、海埜今日子、浜江順子、川江一二三(詩)、井上直(”line-line” の線のデッサン)、ROSSA(演奏)でした。(敬称略)

最近、こんなふうに現在活躍中の詩人さんたちの集まりに行くことが多くなってきましたが、今はいろいろな詩人の方たちの詩から詩を学び、エネルギーを吸収していきたいと思っています。そのうち、私もどこかで朗読会をするかもしれません。
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by hannah5 | 2007-07-21 22:40 | 詩のイベント | Comments(2)

直感   


たしかに脳髄が攪拌される

革命の起こった日

解らないということがない
解き明かされていく言葉の襞・断層・連結・背景

イチ・プラス・イチ・イコール・ニ・カケル・ニ・ハ・ヨン

そんな世界なんだよ
詩は


詩はね
人間に必要なもの
食物を食べなければ生きていけないように
詩がなければ
涸渇するよ


つまり。。。
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by hannah5 | 2007-07-20 23:50 | 作品(2004-2008) | Comments(0)