<   2007年 09月 ( 19 )   > この月の画像一覧   

風 - あるオブジェの前で   


走りなさい、風
街から街へ
雲から雲へ

沸き立ちなさい、風
泡立ち抗い
渦巻きながら

騒ぎなさい、風
扉を揺らし
肩を震わせ

撫でなさい、風
夏の孤独を癒し
秋が優しく迎えられるように

染み渡りなさい、風
ひろびろと思い
しみじみと浸るように

風が生まれる
私の中から
私の外から
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by hannah5 | 2007-09-30 23:18 | 作品(2004-2008)

小さな完成品   


神さまが
こんなに小さな生き物を
創ったことが不思議だ

手のひらに乗るほど小さいのに
前足も
後ろ足も
人間の手足とよく似ている

体全体が毛で覆われていて
ぴかぴか光るひげを除けば
ちっちゃな人間みたいで
ねえ、どう思う?
なんて
つい話しかけてみたりする

遊んでいる最中に
連れ戻すとすねて噛むし
突然おしっこがしたくなって
ちょっとトイレ!
なんて
トイレに駆け込むところなんか
人間そっくり

小さな頭の中の
小さな脳味噌で
どんなことを考えているんだろう
ケージの中で
何を感じているんだろう

人間の耳では捉えることのできない
超音波を発しながら
人間と同じように
もしかしたら
人間以上に
言葉を発しているかもしれないね
このキャベツはまずいとか
この家は寒いとか
いつもペレットばかりで退屈だとか

あらゆる言葉を発して
ぶうぶう
文句を言っているのかもしれない

こんな小さな生き物が
その何十倍も大きい人間のそばで生きて
同じ空気を吸っていることが
不思議でならない

小さな小さな完成品
神さまの技の見せどころ
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by hannah5 | 2007-09-29 23:46 | 作品(2004-2008) | Comments(4)

城戸朱理さん主催のProject Ararat «JN氏の「秋」»に参加しました   


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  秋    西脇順三郎

タイフーンの吹いている朝
近所の店へ行って
あの黄色い外国製の鉛筆を買った
扇のように軽い鉛筆だ
あのやわらかい木
けずった木屑を燃やすと
バラモンのにおいがする
門をとじて思うのだ
明日はもう秋だ


猛暑がいまだに足跡を残す9月のある日、A4サイズの少し集めの封筒が届けられた。送り主は城戸朱理さん。封筒をあけると、『西脇順三郎コレクション』(慶応大学出版局)の内容見本パンフレット、西脇順三郎の詩篇「秋」をシルクスクリーン・プリントしたカード、ドイツのステッドラー社の黄と黒のストライプの鉛筆、赤茶色の封筒が出てきた。カードと鉛筆は『西脇順三郎コレクション』のパンフレットにスコッチテープで丁寧に留められている。赤茶色の封筒には1通の趣意書が添えられていた。趣意書の冒頭には西脇順三郎の「秋」が添えられていて、「黄色い外国製の鉛筆」の説明と考察、同種の鉛筆を探し求めた城戸さん自身の思い出、「バラモンのにおい」から広がる異国情緒のイメージ、インドのカースト制度の話が丁寧に書かれていた。趣意書の最後には城戸さんの自筆のサインとProject Ararat の判が添えられていた。

趣意書を読んでいるうちに、四次元の世界に踏み込んだような眩暈を覚えた。何かがゆっくりと立ち上ってくる気配がした。「黄色い外国製の鉛筆」は、たぶん、当分削れない。バラモンの香りは、西脇順三郎の詩よりも城戸朱理さんの趣意書から漂ってきたと思ったのは私の気のせいだろうか。(写真は城戸さんの了解を得て使わせていただきました。)


Project Ararat 《JN氏の「秋」》1
Project Ararat 《JN氏の「秋」》2
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by hannah5 | 2007-09-28 20:55 | 詩のイベント | Comments(1)

森の奥で   


そろそろ
卒業しましょうか
急ぎ足で歩くことや
駆け回って集めてくることから

おもちゃ箱をひっくり返したように
ぱんぱらぱんぱらと
いろんな色や形を
放り上げては遊んでいた

放り上げた瞬間に
ひと粒ひと粒がきらきらして
眩暈がするほど甘くて

ひっくり返したおもちゃのまん中に
坐りこんで いつまでも
いつまでも遊んでいた
子どものころのように

甘やかな想いが
透明な夜の空気の中へ
溶け出していく

もっと深くて
もっと大きいものがあるだろうかと

胸の裡が
えぐられる
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by hannah5 | 2007-09-26 23:49 | 作品(2004-2008)

私の好きな詩・言葉(112) 「騙し雨」 (水無月 科子)   


夜中の闇を突き射して雨が降る
段落のない経典のような
長い雨が地上に届く
わたしの屋根に降り続く

解けない数式のヒントが
跳ね返りの
雨のリズムにありそうな時が過ぎる
わたしの想いが楕円に広がり
その接点があなたの鋭角であっても
ノートは罫線を均等に分けて白いまま

六月に向かう気圧配置が
予想通りに動き出し
均整のとれた葉脈に包まれた
アジサイの花芽が身震いして膨らみ
雨の数日を経て
通りかかる子どもの傘の丈で花は揺れる

夜を数え 昼を眠る
雨の向こうの
星ぼしの億年の想いを
悩み続けるわたしは小さく砕ける
知らなかった数の規則性に紛れ込んで
どこまでも砕ける
騙し雨は無の静けさだ



( 『旋律』 第19号より)

もう一篇
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by hannah5 | 2007-09-23 23:41 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(2)

  


体の大きな猫がいた

大そう不機嫌でふてぶてしく
人間を人間とも思わぬ猫が
坂の途中で寝そべっていた

近寄ると
シャーッと威嚇した

陰で尾が音もなく
ぴたり
ぴたり
と、地面を打っていた

ごつごつした体に骨が固く凝縮して
眼はあらぬ方角を見つめていた

やがて猫はゆっくりと体を横たえた
傍でじっと見ている私など
まるで眼中に入らないかのようだった

尾は相変わらず
ぴたり
ぴたり
と、地面を打っていた

無愛想な猫に
私は愛想笑いを送ってやった
しなしなと下手に出てやった

猫はそんな私に一瞥もくれず
一段と速く
ぴたり
ぴたり
と、地面に尾を打ちつけた

おい、猫
今夜は月のいい晩だ
少し散歩に行かないか

おい、


突然
それまで知らん顔をしていた猫が
私を見た
大きなグレーの瞳が
私の瞳をまっすぐに見つめた

猫の瞳が大きく開いて
私の瞳を飲み込もうとしていた

私は眩暈を覚えながら
猫の瞳の中に広がる
氷のような冷たさと静けさを
じっと見つめた

尾はいつのまにか
地面を打つのを止めていた



猫は
あの晩以来
姿を消した

坂の途中に
大きなグレーの瞳が貼り付いている

おい、

今度会ったら
私の番だよ
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by hannah5 | 2007-09-22 22:41 | 作品(2004-2008)

特別企画 - 詩織から感謝を込めて   


(9月21日までトップに上げておきます。)

いつも詩織をご訪問いただきまして、ありがとうございます。

このたび、土曜美術社より『ネットの中の詩人たち』第5集が出版されました。
これは、島秀生さんが主催されている詩の投稿サイト「MY DEAR」に、過去1年間投稿されていた20名の詩人さんたちが詩を持ち寄って参加、アンソロジーとして編さんされたものです。
私も5篇、参加させていただきました。

詩織では、これを記念して、いつもご訪問いただいている方の中から抽選で3名の方に、『ネットの中の詩人たち』第5集をプレゼントしたいと思います。

つきましては、本を希望される方は、鍵コメにて
● メールアドレス
● 『ネットの中の詩人たち』第5集希望
と書いてお知らせください。

折り返し、こちらからご連絡させていただきます。

はんな
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by hannah5 | 2007-09-21 23:58 | 詩のイベント | Comments(8)

向き合う   


孤独であって
孤独ではなく

我儘であって
我儘ではなく

気ままであって
気ままではなく

実験を繰り返し
冒険を重ね

矛盾を内包したまま
次の方向を探し

孤独と
水入らずになる
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by hannah5 | 2007-09-20 00:00 | 作品(2004-2008)

ねえ、   


ねえ、










                    (深い予兆)









ねえ、









                    (蠢く嘆息)








ねえ、
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by hannah5 | 2007-09-19 01:36 | 作品(2004-2008)

『ネットの中の詩人たち』第五集   


ずっと
ずっと心待ちにしていました。
『ネットの中の詩人たち』第五集。

発売予定日の九月十五日を過ぎても
書店からは連絡が来ず
こちらから問い合わせたら
「来週になります」
という返事でした。

今日
昼ごろ電話をもらいました。
「ご注文の本が入荷しました。」

本を受け取りに行く道すがら
嬉しくて
なんだか恋人に会いに行くみたいで
もし、入荷が間違っていたらどうしよう、とか
もし、ここで私が交通事故に遭ったら
当分本には会えないかもしれない、とか
いろいろなことが
頭の中を駆け巡りました。
書店までたった十分の道のりなのに
永遠に時間が遠のいていくような気がしました。

二人の人が出遭って
星のように心がきらめいて
人々の心があたたかく溶け出している
そんなイメージがふくらむ赤いカバーの詩集が
店員さんから渡されました。

私はそうっと
ページを開きました。

一人一人の言葉が
丁寧に
大切に
置かれていて
一ページ繰るごとに
じっと見つめました。

(この人はどんな気持ちで
この詩を書いたのだろう。)

置かれている言葉の向こうに
一生懸命言葉を紡いでいる姿が想像されて
一人一人の心を想いました。

活字になった心たちを
いつまでも大事に
取っておこうと思います。
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by hannah5 | 2007-09-18 22:17 | 投稿・同人誌など