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行ってしまったものたち   


行ってしまったものたちを
取り戻すことなんてできなくて
それでも少しは取り戻せるかもしれないと
行ってしまったものたちの
はるか後ろから追いかける

時々、行ってしまったものたちに
よく似たものたちに出会うけれど
やっぱり行ってしまったものたちとは
似ているようで違うのだ

私はあの頃かなり未熟で
ぼんやりしていて
本当はここにいて欲しかったのに
ここにいて、
なんて言えなかった

いつか自分がちゃんとしたら
行ってしまったものたちを取り戻そうと思い続けて
あれから何年にもなるけれど
いつになったらちゃんとするのやら

あれから何年も経って
やっとわかったことは
行ってしまったものたちは
二度と帰ってこないということよ

二度と同じ間違いをしないように
行ってしまおうとするものたちを
ひしと両腕で抱えてみるけれど
私はどこかやっぱり未熟で
やっぱりどこかぼんやりしているから
ぽろり、ぽろりと
みんな行ってしまう

行ってしまうものたちを
悲しく思い過ぎないように
寂しくなり過ぎないように
心を鍛えてやっていこうと
決心したよ

でもね
やっぱり

寂しいよ

寂しいね

ただいま。。。
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by hannah5 | 2007-10-29 22:47 | 作品(2004-2008)

いつも詩織を訪れてくださる皆様へ   


いつも詩織を訪れてくださり、ありがとうございます。
本日10月25日より11月2日まで仕事で留守にします。
留守の間、詩織の更新は休ませていただきます。
帰りましたら、またお付き合いください。


はんな
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by hannah5 | 2007-10-25 20:30 | ご挨拶 | Comments(8)

単純な人   


わたしは案外
単純にできている

おいしいものを食べたり
好きな人のそばにいたり
仔犬の頭をなでたり

体の真ん中が
ストン!
と抜けたところに
シアワセがてんと
落ちている

あるいは悲しみが
突き抜けたあたりに
絞る涙もなくなって
やっぱりやっていける、が
ふつりと沸いてくるようなもの

おいしいものを食べると
体中の細胞が沸き立つ
手先や足先の毛細血管が
うるうると笑ってしまう

そういう時に
生まれてきてよかったね、
生きていてよかったね、
と、体の芯がうなずく

または一挙に下降線を下り
その下りきった所で
青白くやせ細った心を落とし
二度と拾わないと
固く唇を閉じて
歩き出すようなものだ

わたしは案外単純で
1+1=2
くらいの可笑しさ


(10/24 推敲の上訂正)
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by hannah5 | 2007-10-23 23:40 | 作品(2004-2008)

ブルーミントの石   


散逸してしまった石ころを
かき集める

一つずつ手に持ち
狙いを定める

鋭いナイフのような切っ先で
石ころは
狙い通りに的を射る

一つ
また一つ
さらにまた一つ

打つことが美しかった日
私は書くことを止めなかった

そこはかとなく明るく
純度の高いブルーミント色した石ころを
再び集めて

ペンを執る


※言葉のエネルギーをイメージしていたら、ブルーミントの石が浮かびました。
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by hannah5 | 2007-10-23 01:26 | 作品(2004-2008)

牛を放してやれ   


言葉が放たれたがる時は
放してやれよ
牛を放牧地に放すみたいに

狭い牛舎の中から
広々とした放牧地へ放たれた牛は
飛んだり跳ねたり
体じゅうで自由になった喜びを表現する

跳ねて
跳ねて
この自由を失くしてしまわないように
体の隅々に緑の空気を染み込ませようとする

生きていることが
  よかったね
生まれてきたことが
  よかったね
って
体じゅうが笑っている

言葉だって同じだよ

狭い檻の中では
しゃべることもできず
動くこともできない

檻を破って
新しい空気の満ちた放牧地へ
あらゆる不自由を断ち切って
自由に酔いしれる世界へ
言葉を放してやるといい

自由に跳ね回っている牛は
もっとも力強く
もっとも美しく
生命そのものだ

走りたいように
飛びたいように
行きたい方向へ放してやると
言葉は息を吹き返し
ぎらぎらしたエネルギーが溢れ出し
心が叫びたくなるような生命力を発散させるようになる

好きな所へ
好きなように
行っておいで

邪魔をしちゃいけないと
思うんだよね



※『ランボー 『地獄の季節』 詩人になりたいあなたへ』 (野村喜和夫)を読んで
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by hannah5 | 2007-10-17 23:35 | 作品(2004-2008)

詩学追記   


角田寿星さんの記事です。
http://po-m.com/forum/thres.php?did=2390&did2=152

実は私も寺西さんに直接電話して聞いてみたのですが、経済的ににっちもさっちもいかないとおっしゃっていました。「詩学」で新人賞を取ったり、詩学社に所縁のある人たちにとって、詩学社倒産はものすごくショックです。

かなり長い間迷いに迷って、「詩学」の定期購読を決めました。今の私にとって、雑誌を定期購読するほどの経済的余裕はほとんどないからです。けれど、価値あるものに投資してみよう、自分の詩を少しでも一人前のものにしたければ多少の投資をしていこうと決心して定期購読を始めました。

今年1月から定期購読を始めると同時に、定期的に投稿を始めました。毎月1篇、やっと7/8月号の「一次選考通過者」の一番最後に私の名前が出た時には本当に嬉しかったです。詩学でがんばって足場を築いてみよう。そう思っていた矢先でした。

私: 「今日これから投稿しようと思っていたところだったんです。」
寺西さん: 「もう投稿しないでください。投稿は他へしてください。」
断ち切られるようでした。

詩学社がなくならないで、なんとか再興できないでしょうか。
なんとか奇跡が起こせないでしょうか。

詩学社ホームページ
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by hannah5 | 2007-10-16 23:50 | ご挨拶 | Comments(11)

時間   


規則正しく
積み木を積み上げる

そうじとせんたく
2階を掃く

干す、物干しで

ももが出たがるから走らせる

洗濯機を回す
水を入れる
脱水する

なべをこする、洗う

手紙を書く

メールを送る
プリントアウトする

昼食を買いに出る
ついでに郵便局で切手を買う

ひまわりの種とりんごをキャリングケースに入れる
タクシーを拾う
交通渋滞
獣医に行く
体重は43グラム

父のパンツを洗う
母のオムツを換える
背中を拭く
爪を切る

並べておいた積み木が
いつのまにか
一ピースずつ空中遊泳している

   ぽおん

       ぽおん
 
  ぽおん

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by hannah5 | 2007-10-15 23:33 | 作品(2004-2008)

Uncontrollable Time of Unmanageable Choices   


時間を注文した

「プラスチックの箱に入れてください
一つずつ箱に入れて積み重ねてください」
「はい、包装はどういたしましょうか」
「包装はけっこうです」

透明なプラスチックの箱に入れられた時間が
うやうやしく捧げもたれて現われた
箱は一つや二つではなかった
数え切れないほどおびただしい数の箱が
床におろされて積み上げられていった

私はおもむろに仕事に取りかかった
床を掃いた
郵便局で切手を買った
ふと、アレルギーを思い出した
甘いりんごをもらった
ゆで玉子がついてきた
タクシーを拾った
交通渋滞で動けなかった
バスに乗った
本を開き、本を閉じた
うちに着くころ
メールが怒っていた
言い訳が笑っていた

突然
プラスチックの箱がふわふわと転がり始めた
シャボン玉のように飛んでいくものもあった
雪崩のように落ちていくものもあった
おびただしい数の箱だった


父のパンツを洗い
母のオムツを換えた
父の背中を拭き
母の爪を切った


やっと
仕事が終わった
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by hannah5 | 2007-10-13 23:56 | 作品(2004-2008)

お知らせ   



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詩学社からお知らせをいただきました。

代表取締役の寺西幹仁さんの健康上の理由で、
詩学社を廃業することになったというお知らせです。
詩学社から出されている「詩学」は1947年に創刊され、
60年続いてきた詩誌の老舗です。
詩に対して真面目で純粋なものが感じられ、新人賞を設けたり、
最近は朗読会を行うなど、積極的な活動を行っていました。

「詩学」は一部の一般の書店では取り扱っていなかったようですが、
知る人ぞ知る詩誌で、毎号読むのを楽しみにしていました。
詩学社がいつかまた再興されることがあるでしょうか。

寺西さんの健康が回復されますよう、お祈り申し上げます。

それにしても、本当に残念です。
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by hannah5 | 2007-10-11 14:37 | ご挨拶 | Comments(6)

青い虫   


私は昔
母親を食べたことがある
頭の骨を割り
脳味噌をすすり
目玉をくり抜いて食べた
旨かったかどうかはあまり覚えていない
ただ、やたらに腹が煮え立ち
炎熱の溶鉱炉のような空腹感の中で
いくら食べても腹が膨れなかったことを覚えている
頭から肩へ
肩から胸へと食べているうちに
どこからともなく
「許しなさい!」
という声が聴こえてきた
その声は指を食べ終わるまで続いた

不思議なほど憎らしいことに
母親は私に食べられていることなど
まるで気づいていないようだった
失った目玉の窪みの奥で
相変わらず母親らしくかいがいしく働いていたし
指のない手で作った料理は
以前と同じ母親の手料理の味がした
だから、私は母親の体を食べていることを
母親には告げなかった


烈しく堕ちていく夜があって
夜の底で
虫たちが蠢いているのが見えた
昼間の光の中では決して見えない虫たちだった
虫たちは青白くやつれていた
腹をすかせていたから
当然だったかもしれない
何匹いたのか覚えていないが
私は昼間の光よりもその虫たちに魅せられた

蒼い夜の底で虫たちは増殖し
ますますやせ細り
前にも増して活発に騒ぎ立てた
私は虫たちを一匹ずつ口に含んだ
虫たちは口の中で甘く溶けていった


母親は体のあちこちが欠けたまま
そうとは知らずに平穏に暮らしてきた

私は今も母親に何も告げずにいる
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by hannah5 | 2007-10-09 23:55 | 作品(2004-2008)