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時計が十二時を打ったら   


猫のように床にうずくまる
板張りの床はひんやりと寒くて固い
だが 椅子に座るより自由で
魂が居つくにはちょうどいいようだ

床の上で眼をつむっていると
時間がゆっくりと廻転していく
今まで聴こえていた街の音が少しずつ小さくなり
やがて完全に消滅する

それからわたしはあくびを一つして
ゆっくりと手足を伸ばした


音の途絶えた夜の一隅に小さな亀裂ができ始めていた
一つ さらにもう一つできた
亀裂は次々とでき
やがてある時 突然 夜のいたる所に広がった

冷えた体を丸め
亀裂の中を覗きこんでみる


きのうの出来事を広げてみた
小さないらだちがぶつぶつの泡となって広がっている
ところどころ腫れている
不快指数が高くなりそうな気配なので
きのうの出来事をたたんだ

半年ほど前の出来事を広げてみた
あの時の青い空は長く続かなかった
晴れのちくもり やがて雷雨になった
きょうは乾いた雲が広がっている
半年ほど前の出来事をたたんだ

明日の出来事を広げてみた
きょうまでの出来事の片隅に明日の予報が小さく載っている
くもりときどき晴れのち雨のち・・・・・
その先がよく読めない
明日の出来事をたたもうとした
が たためなかった


深夜の底で
出来事を広げたりたたんだりしている


冬の夜が猫のように忍び足で歩いている



(12/31 全面的に書き直しました)
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by hannah5 | 2007-12-30 23:45 | 作品(2004-2008) | Comments(2)

『旋律』   


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やっと出ました!
生まれて初めて同人誌に参加させていただきました。
長崎ラ・メールの会が発行している『旋律』に2篇の詩を載せていただきました。

こんなふうに東京以外の場所から、自分の詩が活字になって発信できることが
とても嬉しいです。
「ネットワークが広がったね。」弟に話したら、そう言って喜んでくれました。
そして、自分の足場が出来たことも嬉しく思います。
編集者の水無月科子さんにはお世話になりました。

これを記念して、『旋律』を希望者にさしあげたいと思います。
希望する方はカギコメにてメールアドレスを教えてください。
確認のメールをお送りしますので、
折り返し『旋律』をお送りする住所とお名前をメールにてお知らせください。
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by hannah5 | 2007-12-28 23:52 | 投稿・同人誌など | Comments(2)

今日の優しさ   


冷たい夜がしんしんと広がっている
その夜の底をひそひそと歩く
冷たい空気を攪拌するように歩いていると
静まった暗闇の中で心を落としそうになる

今日あったこと
きのうあったこと
人と人がもつれたこと
私がそこに絡まってしまったこと
小さな悲しみがぷつりと湧いてきて
じっと見つめていると
ぽろり、と落ちる音が聴こえてくる

この道をまっすぐ行くと下り坂になる
放っておくと 落ちた心は
坂道を転がっていって排水溝に落ちてしまう
排水溝に落ちたら その先はどぶ川で
その先は海だ

夜の底で
落ちそうになる心をひしと抱えて歩く
喉元に上がってきた塊が ぽろりと
坂道を転がっていった
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by hannah5 | 2007-12-26 23:42 | 作品(2004-2008)

メリークリスマス   

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                あたたかいクリスマスが訪れますように

                   いつも詩織を見てくださって

                         ありがとう

                Wishing you a Merry Christmas

                   and a Happy New Year!
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                          はんな

おひさしぶりです
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by hannah5 | 2007-12-25 01:17 | ご挨拶 | Comments(10)

私の好きな詩・言葉(117) 「花のかけら」 (新井 豊美)   


その道のうえで
わたしは何かを捨て 行きながらそれを捨て
ちぎっては捨て さらに捨て それが何であったのか
冬の木々にならい わたしは葉を落とし
棒のようなものとなり
直立するわたしの頭上を風が渡り わたしは
捨てたことさえ忘れ 忘れることによって何かを与えられ


とはいえそれは 風の形見ようなもの
抜けたオナガの青い尾羽のようなもの
割れた器のかけらほどにも役立たないもの
その曲線がかつて内側に保っていたものを想像させるとしても
切っさきは宥められていまは
意味をなさないひとつの破片 その表に
ひたすら咲きつづける それらはすべて夢の切れはし
繋ぎとめられない願い


というよりも時の残闕と呼ぶべきもので
血を流すことはなく すきとおる空虚の形をもち
ここからわたしはふたたび何かを与えられ
そのたびにわたしはすこしずつ軽く


鳥たちが群れているクヌギの梢ではいましも
一羽がさえずり 一羽は翼をひろげ 一羽は目を閉じて
瞼の裏に描かれた藍色の
花のかけらをふしぎなもののように覗き込んで


(新井豊美詩集 『草花丘陵』 より)

ひと言
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by hannah5 | 2007-12-21 23:52 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(0)

夕暮れ   


フレーズをひとつ残して 立ち去る
コーヒーショップで

つづきは 夜が溶けだすころの入口で
夢みるように また想う
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by hannah5 | 2007-12-20 23:44 | 作品(2004-2008)

流れる   


水のように流れていく意識

時間が観念をすり抜けていく
またある時は澱む
忘れ物が思い出せない
あるべきものがそこになかったバツの悪さを憶えている

気持よくなるための自由と
秩序を保つための不自由が
混ざり合いながら流れつづける

記憶の底にも
意識の中にも
わたしの種が落ちているから
ぷちりぷちりとむしり取っていく

見られることを思わなかった子どものころの
きらきらしていた水

ガラスのビーズが好きで
いろいろな色を糸に通して指輪やブレスレットを作った
それらが艶めかしく流れていく

心臓のどきっという鼓動が
水の底から湧きあがってきて
ガラスのビーズがシュンと痛い

きらきらと想う憧れ
ことばという
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by hannah5 | 2007-12-19 23:57 | 作品(2004-2008)

夜が寒い   


夜の底を救急車が走る

  ピーポー ピーポー ピーポー

この街のどこかでひきつった声が叫ぶ

あたしを返して!
勝手に取っていったあたしの未来を返してちょうだい!

悲痛な声がこわばり
必死になって掴もうとする手の中には
静寂がひとつ落ちてきただけだった

寒い暗闇の中で慌ただしさが緊迫を増し
無言の足音がひとしきり 足踏みと躊躇を繰り返したあと
声が絶叫になって 切れた

  ひととき
  ふたとき
  さらに みとき
  よとき

静寂が沈黙を押し殺し
暗闇に飲み込まれたまま過ぎ去ろうとしていたその時
突如 救急車が火花をあげた

ピーポー ピーポー ピーポー ピーポー!

救急車は闇をどこへ連れ去ろうとしているのか

夜の底で人々が隠れるように覗き見る

  ここにも
  そこにも
  ほら そこにも
  あそこにも

眉をしかめ
不安げに息を押し殺してじっと見ている

夜は
胸倉が抉り取られるほど
寒い
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by hannah5 | 2007-12-17 23:55 | 作品(2004-2008)

冬日   




向ひ家の犬庭隅に繋がれて物干し台の吾に対へる



彼方なる犬に向ひて手を伸ぶる冬の日和にたゆめる午(ひる)を



留守の家(や)の犬ひたむきに脚揃へ親愛示すこなたの吾に



背を向けて穴掘れるらし彼方なる犬階上よ遠くにし見ゆ


                            (小浪歌集 『水音』 より)


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by hannah5 | 2007-12-15 23:45 | 『水音』 | Comments(6)

出遭う   


ゆっくりと息をしながら
ここにいる
静かな空気の通り道
目的のない道行きの
螺旋と蛇行
彷徨と後退と進展と

あるのは
息をするたびに
紡ぎだされる血の流れ
湧きあがっては溢れてこぼれる

わたしがわたしを忘れ
わたしの奥深くに潜りこみ
渦巻きながら流れてゆく
見知らぬ方向へ

何も求めぬまま
何処かに流れつき
やがて生まれてくる
新しいいのちの訪れを待つ

地の底を這う
かすかな痛み

ひとつの流れに遭う
予感と呼ぶにはあまりに平明な
けれど偶然ではなく

定められていた恩寵の
優しくなつかしい響きが聴こえてくる
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by hannah5 | 2007-12-13 23:30 | 作品(2004-2008)