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生み出されたものへ ─ 「マナーモード」から   


いのちがいのちを呼び
いのちがいのちに流れこみ
いのちがいのちをうねり
いのちがいのちを創りだす

いのちがいのちに溶け
いのちがいのちを押しあげ
いのちがいのちをかなしみ
いのちがいのちをよろこぶ

いのちがいのちを食べ尽くした
  あなたの
  わたしの
  わたしたちの

いのちはどこから来たのか
どこへたどり着こうとしているのか

いのちは川となり
二本の川となり
  よじれ
  もつれ
  かさなり
  たわみ
一本の力となり
  高く
  低く
  波うち
  震え
また二本の川となる



※葛原りょうから森田直樹に捧げる追悼詩を聴いて
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by hannah5 | 2008-07-30 23:11 | 作品(2004-2008)

『マナーモード』葛原りょう×中園直樹【作家と詩人による朗読会】   


詩誌の投稿者の中で私が名前を記憶している人はそれほど多くはない。ある時、某詩誌で「葛原りょう」という名前を目にして、どこかで見たことがあるような気がした。それは妙に印象のある名前だった。それから何ヶ月かしたある日、偶然にもりょうさんが私のmixiに足跡を残された。RYOという名前をたどっていくと、長い前髪をたらしてマントのような物をかぶった姿の写真が現われた。その時私はどういうわけか、この人は詩を書いたり朗読したりすることを趣味にしている中年のオジサンだと思ったのだ。 mixi に足跡が残っていても、お礼をしたりメッセージを送ったりすることはほとんどない。でも、RYOさんの場合はちょっと気になって、じっくりmixi を眺めさせていただいた。mixi にリンクしてあるりょうさんのHPを読むうちに、なんと詩を書く若い人であることがわかった。しかも詩だけではなくて、短歌や俳句も書き、詩の朗読を頻繁にされているらしい人であることがわかってきた。メールで少しお話をし、りょうさんが出られるという朗読会に行くことにした。


              ****************************


7月26日(土)午後6時から、文芸社の地下1階サロンで、詩人の葛原りょうさんと作家の中園直樹さんの2人による朗読会がありました。名づけて 『マナーモード』。葛原りょうさんと中園直樹さんがそれぞれの作品を朗読し、合い間に津軽三味線奏者の山本竹勇(ちくゆ)さんが加わって3人でセッションをするというとてもユニークな朗読会でした。なぜ「マナーモード」かというと、朗読会のチラシにはこう書いてあります。「生きるために必要な「真実」や「魂の叫び」を描く中園や葛原の作品は、純粋なエンターテインメント作品と違いなかなか広まり辛い。しかし、現代に生きる若者達が本当に必要としているのは、中園や葛原の言霊。既に多くの魂を震わせている。しかし、必要としている読み手が他人に触れられたくない傷を持つ場合も多いという性質上、届いたとしても「一人ひっそり大切に」となる場合が多い。つまり、着信音を周りにまで響かせることを避けるような読者が多い。発信者側からの意味だけではなく、着信側にもそういう意味がある。朗読会「マナーモード」は、そういったことを必要としている人々のために、本だけではなく空気と鼓膜と魂を震わせる「二人の生きた声」と伝え、二人の存在そして作品の存在を広めようという試みである。」( 『マナーモード』 チラシより)

どうしようもなく生(なま)な生き方。むき出しになったいのちがこすれて、それをどうすることもできずにいる自分とひたすら歩くしかない-心の内を天に向かって噴き出すようにして語るりょうさんの朗読を聴きながら、そんなことを思っていました。私にははっきりといじめられたという経験はありませんでしたが、生きることそのものが砂をつかむように空しく痛かった時期がありました。風の彼方に追いやってしまったはずのその日々が昨夜ふたたび私の目の前に蘇ったようで、孤独の日々を言葉に現わすことすらできなかった私は、多くの傷を受けながらも言葉を見つけていくことができたりょうさんの資質と感性に羨ましさを覚えると同時に、その強さに圧倒されるような思いでした。

人の痛みを理解することは、同じ痛みの経験者でない限り、本当にはできないことです。親や大人たちが私の痛みを理解することができなかったように、私には私が経験していない痛みを持つりょうさんや中園さんや、その他多くの若者達の苦しみを本当に理解することはおそらくできないだろうと思います。

孤独を言葉で表現することがどうしてもできなかった私は見えない出口を求めて探し回り、最終的に出会ったのは私の孤独と痛みを理解してくれるイエス・キリストでした。その出会いを通して、人の孤独や痛みはたとえ理解できなくてもじっと感じることはできる、祈ることはできる、そこにある痛みの壮絶さや孤独の暗闇に圧倒されながらも、一人じゃないからね、と静かに抱きしめていることはできるということでした。

「生きていてほしい」-声を振り絞りながら何度も何度も語っていたりょうさんの思いは、必ず受け取ってくれる人たちがいるだろうし、その思いはたとえ着信がむずかしくてもきっとどこかへ届くだろうと思います。




灰色の家路


小さな子供は石を蹴る
口々無心に石を蹴る
何も考えずに 何も思わずに
楽しくもなく つまらなくもなく
冷たく、鈍く、黒光る
足もとの小石だけをみつめて
この子は小石と話してる
この子の眼の云うことにゃ
人間社会がいやになりまして
あなたと遊んでいたいのです
ぼくの本当の友達は
蹴られても何も云わないあなただけ
聞こえるともなくため息が一つ
ランドセルがカタカタ鳴っている
小石もカタカタ転がりまして
わきのドブ川にポチャ
家路が灰色一色に染まりました

               (葛原りょう詩集 『魂の場所』 栞解説文より)

葛原りょうさんの略歴
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by hannah5 | 2008-07-27 23:10 | 詩のイベント | Comments(4)

夏の宵   


老年の男と女が
夜更けのレストランで静かに食事をしていた
年の頃はたぶん七十に近いか
ひととおりの食事のあと
少しの日本酒をグラスに注ぎ
小さく乾杯

息子の話
お嫁さんの話
仕事の話
聞くともなにし聞こえてきた世間話は
夫婦の会話というより
親しい間柄の会話のようだった
男が大方の話をし
女は合い間に
「そうなの?」とか
「そうねえ・・・」とか
「ふうん」とか
相槌を打って話を聴いていた
女がたまに言う言葉は意見というより
印象を述べている感じだった
それは話の中で
お互いのしあわせを見つけるような
今までの営みを垣間見るような
男と女の会話だった

よく見ると
女は頬に紅をさし
髪を栗色に染め
ジーンズにベルト
赤い格子を袖口に覗かせた濃紺のブラウスを着て
精一杯のおしゃれをしていた

女の頬がゆるんで
くっくっという笑い声が漏れてきた
男は思うところを遠慮なく述べながら
女に同意を求めていた
女はひと言も逃すまいと
一心に男の言葉に耳を傾け
時折相槌を打った

やがて男が立ち上がった
女がそれに続いて立ち上がろうとした
すると、途中まで腰を浮かせたまま
女は動けなくなった
男が手を貸して女の上体を引きずりあげた

「いや! いやよ! 立ってられないから」
「ほら、つかまって」
「・・・・・」

男は女のバッグを自分の肩にかけ
女の持ち物をすべて手に持ってやった
女がようやくの思いで立ち上がると
男はそのままレジへ向かって歩いていった
女は頬を高潮させ肩で息をしていた
やがて、思い直したように背筋を伸ばし
杖をつきながらゆっくりと歩き出した
不安定な上体を確かめるように
一歩ずつ足を前にさしだした

白い素足が 心なしか
紅に染まっていた
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by hannah5 | 2008-07-26 23:46 | 作品(2004-2008)

わたし暮(ぐ)らし   


考える
ということの重さを脱いで
胸の下あたりをひんやりと感じてみる

考える
ということの中には
大小とりどりの不安があり恐怖があり束縛があり無理があり
抹消神経が凍りつき
胸の中をしくしくとした痛みが走る

けれど
胸の下あたりのひんやりとした部分には
ささやかなわたしの息遣いが棲んでいる

そこは
きょうもあしたもあさっても
その先ずっと“今”という時間が続いていくところ
その時間に名前をつけたり
体裁を整えなくてもよい
だれにも叱られず
だれとも比較されず
ゆっくりと休みながら息を整え
空気のゆるやかなところを掬い
今日のお天気具合を占えばよいところだ

考える
ということの中で
わたしの声色を真似た
わたしそっくりの生き物が
次々と生まれては死んでゆく

胸の下のひんやりとした部分では
生まれては死んでいった生き物のことを
懐かしむことも思うこともなく
(もしかしたら、その生き物のことは知らないかもしれない)
やさしいムースのような暮らしをしている
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by hannah5 | 2008-07-24 23:26 | 作品(2004-2008)

空白   


手帳を失くした
おとといの夜
ファミレスでコーヒーを飲みながら
説教原稿を整理したり
友人とメールのやり取りをしたり
その合い間に今週の予定を確認して
キャンセルした予定を消し
新しく決まった予定を書き入れたりしていた

黒い表紙のごくありふれた手帳だった
ビジネスダイアリーは分厚すぎて持て余してしまい
何の変哲もない薄い手帳が
飽きがこなくて気に入っていた

手帳は半年くらい先まで
決まった予定が書き入れてあった
一週間ごとにあるページは
週が終わる頃には毎週の予定でいっぱいになった
きのうまでのページは
時間や場所や名前や住所や日曜の説教内容や聖句や
その他忘れないために書き留めたありとあらゆる情報で
ぎっしり埋まっていた

日記をつける習慣がないので
手帳が過去の出来事の記録になっていた
過去の予定を見れば
その時の情景と出会った人々と
自分の心の状態までも思い出すことができた

その手帳を失くしてしまった
ファミレスに置き忘れたのか
家に持って帰ってきてどこかに紛らしてしまったのか
まったくわからない
七ヶ月の記録は所々覚えているが
詳細は思い出せない
分刻みで走ってきた七ヶ月だったが
手帳が失くなって
ひたすら息を切らして走り回っていたことだけが
印象となって残っているだけで
実際の詳細な出来事は跡形もなくなくなってしまった

手帳はどこを探しても見つからない

七ヶ月分の過去が空白になってしまった
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by hannah5 | 2008-07-22 19:56 | 作品(2004-2008)

絞る   


きりきりと時間を絞りあげて
これ以上絞れないほど絞りあげて
絞り汁になった時間のもっとも澄んだエッセンスから
大事な思いを一つ取り出しました。
大事だったけれど
あんまり絞りこんだから
鋭くちくちくと肌をさすような感じで
とても誰かにあげるような物ではなかったのですが、
結果はきれいに包んで送り出すことができました。

不思議な時間の連続です。

とても上手にできないと思っていたら
上手く味つけされた香りのよいものが出来てきて、
おいしいピンクの桃のようなものが
時間の隙間から生まれてきました。
きっと時間は伸縮自在なのでしょう。
わたしの心ひとつで
ゆったりと伸びてふかふかになったり
伸び損なって固まったりします。

時間はちくちくしていたけれど
今日は余裕がありました。
出来上がりはまあまあ。
みんなで分け合っていただきました。

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by hannah5 | 2008-07-20 23:04 | 作品(2004-2008)

小さなやさしさ   


小さな群れの
小さなあたたかさが
ゆっくりと部屋に広がって
前からずっと
ここにいるような気がする

手にしているのは
一人一人のほのかなやさしさ
ひっそりとした思い
未整理で
順序不同の曖昧な微笑み
しまい忘れた傷たちが
不揃いな思いを告げる
近くの未来が
さらさらと夏の風を受けて佇んでいる

両手に持てるだけの時間を
こぼさないように
溢れさせないようにそっと持つ
恐る恐る両手をすぼめてみると
トクッ トクッ トクッ
手の中に鼓動が落ちてきた

それはもっともわたしらしい時間
もっともあなたらしい時間
誰にも似ていないのに
誰かに似ている時間だ

小さな群れが
小さくうなずき
小さく微笑んでいる

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by hannah5 | 2008-07-16 11:51 | イエス・キリスト

TOKYO ポエケット in 江戸博   


去年、かなりマニアックだなぁと思ったTOKYOポエケットがなんとなく懐かしくなり、午後遅くなってから覗いてみました。(於江戸東京博物館、JR総武線両国駅より徒歩3分、都営大江戸線両国駅より徒歩1分)

去年参加しても今年は参加を見合わせたグループもあったようですが、総出展数は去年を上回る53グループ(去年は44)。去年はなんだかよくわからないな~と思いながらブースを見て回りましたが、今年は気持の上で少し余裕があって、ブースで店番をする詩人さんたちと言葉を交わすなどしました。購入したものは、「紫陽15号」(紫陽の会)、「あんど8号」(あんど出版)、「少女症」(出縄由貴、中村かほり、三角みず紀のアンソロジー)、「ガーネット55号」(空とぶキリン社)、それと只野凡人さんより「未詳01」をいただきました。(合い間に15分ずつ、服部剛さんと川口晴美さんのポエトリーリーディングがありました。)

詩を書く人も読む人も案外多くて、世の中がどんなふうに変わろうとも片隅でひっそりと書き続け読み続けている。そうして紡ぎ出された作品は、たとえそれが人々から称賛を受けなくても、魂の奥底から生まれてくる美しいエッセンスなのだと思います。来年もTOKYOポエケットは開かれるそうですが、それまでにはどんな詩や詩人に出会っているだろうか、私の言葉がどんなふうに変わっているだろうか-そんなことを思いながら帰宅しました。

ブースに出展された方たち、お疲れさまでした。


TOKYO ポエケット (2007)
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by hannah5 | 2008-07-13 23:25 | 詩のイベント | Comments(4)

  


菫色に降りてくる
夜の空気

皮膚の下で息をしはじめる
小さな自由

時間がやわらかくなり
今日と明日の境目が消えていく

鉛のように重かった鎖が
ぷつりと切れた

夜道に
わたしの靴音だけが響いている

静かでやさしい奥底

沈殿している
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by hannah5 | 2008-07-12 23:35 | 作品(2004-2008)

夏の掲示板。。。   


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夏の掲示板を用意しました。

梅雨があけたようなあけないような、急にすごく暑くなったり涼しくなったり、不安定なお天気が続いています。

地球温暖化のせいでしょうか。

こんな時は体調を崩さないように気をつけてお過ごしくださいね。

コメント、ご質問など、お好きなことを書いてください。

いつもありがとう♪


はんな
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by hannah5 | 2008-07-11 15:18 | 伝言どうぞ♪ | Comments(12)