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音もなく
降る雨は
線のようにおりてくる

レインコートの上に
傘のすきまに
レインブーツの底に

雨の日は
雨のようにひそひそ歩く

雨がふる

からだに沿って
雨がふる
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by hannah5 | 2008-09-30 23:42 | 作品(2004-2008)

雨の日に   




さめざめと雨の降る日は火を焚かん濡れそぼちゐる者よあつまれ




さめざめと雨の降る日は火を焚きてさびしき友よともにうたはん




しみじみと暖炉燃やしてたましひの底あたためん雨のふる日は




                           (小浪歌集『水音』より)





11月の気温。
長い雨。
今日一日。
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by hannah5 | 2008-09-29 23:45 | 『水音』 | Comments(2)

夜をつかまえて   


いつまでも
いつまでも起きていたい夜があって
そんな時は
目の前に広がっている空間の中で
いちまいずつ夜を剥いでいく

いちまいめの夜を剥ぐと
風が落ち着かない様子で通りすぎていった
私も真似して早足で歩いてみたけれど
何かしっくりこない
風の歩いたあとなんて
ほんとうはかなりすてきなことなんだけれど
(だって自由になれるでしょう?)
なんだか気持がざらざらして落ち着かなくなった
それで風のあとを歩くのはやめた

にまいめの夜を剥ぐと
寂しい顔をした猫が暗がりを
ふどうみたいな眼をしてじっと見つめていた
近づくと猫はくねくねと体をしなわせ
くるりと回り
反対方向にもういちどくるりと回り
わたしの、あなたの、わたしたちの、ここにいる、ここにいて、ここ、こっち、だからそれで、
と口早に言う
怪しげな恋愛感情がこぼれそうになった

さんまいめの夜を剥ぐと
トラックが次々と疾走していった
切なくて優しくてやわらかくて
心臓が引きちぎられるような爆音を立てて
トラックが走っていく
いつかもこんなふうに
点滅するライトを見ていたことがあった
それはとっても感傷的で
とっても甘くて
けれどどうにも行き止まりの夜だった

よんまいめの夜を剥ぐと
形容詞が見つからないほど
夜は自由になっていた
シンデレラは時計が夜中の十二時を打ち始めると
慌てて自分のうちへ帰っていったけれど
わたしが住んでいるここでは
時間がひろびろと広がっていて
ひんやりした空気に足を浸しながら
さらさらと歩いていく

自由は、
これからが本番なのだ
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by hannah5 | 2008-09-25 23:53 | 投稿・同人誌など

撃沈の日々   


皆さま、こんばんは。
とてつもなくヘビーなスケジュールの合い間にコンピューターを開けております今夜のはんなです。徹夜の翻訳、深夜近くまでのミーテイング、今週土曜日の学生センター開所式のための準備、両親の介護(要介護5と要介護3です)、山のような洗濯、両親を施設に短期入所で移動、明日からは聖書註解書の翻訳者のためのトレーニングセミナー(Full Life Study Bible (俗称Fire Bible))という聖書の註解書の翻訳を私の教団で始めることになり、翻訳者の一人に任命されました)、etc, etc. その合い間を縫って詩を書くことと読むことを死守しておりますが、体が言うことをきかず、今夜は帰宅後、山のような洗濯をしつついつのまにかうたた寝をしてしまいました。今、少し生気を取り戻したところです。

というわけで、今週はいつどこで詩が書けるかわかりません。どなたかにもう少しふっくらした方がいいと言われましたが、少しばかりつきかけた脂肪はブルドーザーのようなスケジュールに引きずり回され、果ては吸い取られて、骨はいつまでも肉がつかず涼しげです。明日は久しぶりに朝7時半に仕事に向かいます。今週が終わるころには少しでも詩のことを覚えていたらいいなーと思っております。

来週には更新・復帰できているかもしれません。
それまで、お元気で。


はんな
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by hannah5 | 2008-09-16 01:46 | ご挨拶 | Comments(12)

抒情文芸   


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この1年ほどちょっとした投稿モードですが、今回初めて入選しました。
抒情文芸128号<秋>の号です。(作品は「わたしを拾う」。)
選んでくださったのは清水哲男先生。
いただいた評価はちょっと辛めです。
でも、心して受け止めたいと思います。

現代詩の中で抒情詩は主流ではありませんが、私にとってはとても気になる存在です。
現代詩にも受け入れられる抒情詩ってなんだろう。
ただいま、模索中です。
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by hannah5 | 2008-09-09 22:37 | 投稿・同人誌など | Comments(8)

私の好きな詩・言葉(127) 「かみさまの匂い」 (三角 みづ紀)   


かみさまの匂い


かみさまの匂いがする夜は
どうやっても眠れない
晒されているのだ、わたしの
愚かさや拙さが

クローゼットには
脱皮したわたしの産物が
きれいに整列していて
幼い。
そう云っておとこは
いつも笑った
わたしも笑った
笑いながら
また産まれつつある
細胞を
くまなく撫でた

かみさまの匂いがする夜は
たいてい、過去に引き戻される
手をつなぐ重要さを
惰性にしている罪は
どこからやってきたのだろうか?
今夜も産まれるというのに
わたし
は髪さえ容易に切る

おとことの一センチの隙間に
見知らぬおんながさらりと入った
新しく産まれた
わたしだった
ならば
このわたしは廃棄物
業務用のゴミ袋でなければ
はいらないの

あまりにも
産まれすぎて、
かみさま
あなたの匂いを
わたしは手のひらにまるめるのです


(三角みづ紀詩集 『錯覚しなければ』 より)

他1篇
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by hannah5 | 2008-09-07 23:41 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(0)

眠れない夜に   


ずっとわたしを
見ていてほしかった

忘却のわずかな隙間に潜んでいる
小さな望み

しあわせって
なんだろう

魂の一番ふかいところに
火の粉のように降ってきた
混ぜ物なしの直感
わき目もふらずに
しっかり握っていれば
どこかでしあわせになれたかもしれない

泥にまみれるのが怖かったのか
心が信じられなかったのか
自分を頼りきることができなかったのか
たぶんどれもが正解で
どれもが当たっていない

死ぬということは
ある日突然
思い出の中から掻き消えてしまうということ
そこから先は
いくら考えてみても
思い出のつづきはつくってはくれない
今まで大切にしてきたものが
死という一線を境に
小枝をぽきりと折るように
わたしの心とは無関係になるということだ

あれからわたしは
あなたの知らない夢をいくつも見てきました
折れ曲がったり
千切れたり
切り傷をつくったりしながら
理性とか常識とか世間体とか
そんなものが何になるでしょう

ずっと
ずっと
あなたの心の中で
遊んでいたかった
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by hannah5 | 2008-09-06 12:06 | 投稿・同人誌など

産まれたばかりの卵ひとつ   


えぐられているのが
好き
ほじくり返されるのが
好き
ギャロップ
突進
焼け焦げジュウッ!

あなたはわたしにくれるのです
眠っていたものが
目覚めるのを通り越して
突然駆けだすみたいに
今まで何をしていたんだろう
と思うほど
わたしはぼんやりしていた
氷のように眠っていたのね
わたしは食べつづける
じっとしていたら
置いてきぼりを喰っちゃうよ

あなたは
揺れていますか
空腹ですか
届かないですか
手のひらに落ちてくる
あなたのあたたかいぬるりとした粘液
あなたに悲しい顔は似合わない
悲壮感も似合わない
砕けてしまった小さくて弱いもの
それらの破片を拾い集めて
じっと握りしめても
まだ足りない

だから
やっぱり会いにいく
やっぱり書いている

産まれたばかりの卵
ひとつ
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by hannah5 | 2008-09-04 13:27 | 作品(2004-2008)

本当は自由だった   


失くなった手帳が出てきた

テレビの下のラックの奥の
そのまた一番奥の紙と紙との間に
何気なく置かれていた

何度も同じレストランに足を運び
もしかしたら今日こそだれかが
忘れ物として届け出ているかもしれないと
かすかな期待をして聞いては その度に
素っ気ない返事が返ってきて

手帳があった日と
手帳が失くなった日との間に広がる空白を
どのように塗り潰そうかと
ぼんやりしたままやりすごしたあとに
やっと水色が似合うと決めたばかりだったのに

空白を埋めるために見つけた水色は
新しくひろびろとしていて
こんなふうな再開もありなんだと
一年の途中で急に転換した方向を
案外面白がっていたのだけれど

手帳が戻って
ざらざらと泥のように盛りあがって
こびりついていた過去も戻ってきた

手帳が失くなって
本当は自由だったのだ
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by hannah5 | 2008-09-02 19:28 | 作品(2004-2008)