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小川英晴さん朗読会 ~ 冬の旅   


1月30日(金)午後7時より、ギャルリー東京ユマニテ(銀座)にてLa Voix des poetes (詩人の聲)(天童大人さん)主催による小川英晴さんの朗読会「冬の旅」が行われました。

朗読は第一部と第二部から成り、どちらにも佐藤達男さんの美しいギター伴奏が組み合わされていて、小川英晴さんの詩の世界を彩り豊かなものにしました。まるでシェイクスピアの芝居を見ているようであったり、美しく描かれた中世の絵が何枚も現れたり、低く垂れ込めた雲の下で風が吹き始め、やがてスコールの雨が降ってきたり、朗読される詩がこれほどドラマチックで美しく、心に深く訴えるものであると感じたことはありませんでした。

画廊の白い壁を背にして立つ小川英晴さんがやや緊張した面持で詩を読み始めると、白い空間の中から声が次々と湧き上がるようでした。その声は聴いている私たち一人一人の魂を絡めとり、次々と展開されるドラマの中を遊走し、白い空間の中に埋め込んでいき、また湧き上がり、ドラマの中を遊走し・・・それはまったく予期しなかった人生を歩んでいくような感じで、朗読が始まって間もなく、朗読者と伴奏者と聴衆の間にはなんとも言えない不思議な一体感がありました。

第一部は小詩集 『遥かなる楽園-エヴァに寄せて』から「はじめての日」、「音楽」、「蜜」などの作品を朗読、所々でブランテルやダウランド、タレガなどの曲が入りました。第二部は小詩集 『冬の旅』からの朗読。ギターの曲はシューベルト、ドゥ・ビゼー、タレガなどでした。最後に佐藤達男さんに寄せて書かれた詩「鳥の歌」を朗読して、朗読会は締めくくられました。

朗読について、小川英晴さんは次のように書いておられます。
「(詩を)朗読するために詩の分析や解釈も重要だが、そのまえに詩と一体になる想いの深さがなければなるまい。一粒の米粒を例にとって、ビタミンやでんぷん、それに脂肪など一粒に秘められた構成要素をいくら分析したところで、そのすべてを集めてまた一粒に固めたところで、それはもはや土に埋めても決して芽吹くことはない。つまり分析によって一粒のお米のいのちは死んでしまうということ、この最も重要な事実を意外に多くの人が忘れ去ってしまっている。・・・・詩の一瞬一瞬を生きるということは、とりもなおさずその一瞬に永遠を感じ、永遠と呼応し、一行一行を無心になって生きることに他ならない。
 詩の一行は神から与えられ、二行目からようやく詩人の手になると言われる。それほど最初の一行は敬虔なものなのだ。詩の生成はおそらく神の領域に属する世界の出来事なのだろう。それゆえに朗読はそのような契機と一瞬をなによりも尊重せねばならず、自らも朗読の一瞬一瞬を、いままさにそれをはじめて体験するように朗読をするしかない。それに朗読者は決して詩の解説者ではない。むしろ預言者に近い存在なのかもしれない。」(「イスパニア図書」2008年秋第11号よりコピー抜粋)

終盤に向かって私自身、涙が止まらず、深い感銘を受けた朗読会でした。

小川英晴さんと佐藤達男さんの略歴
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by hannah5 | 2009-01-31 13:31 | 詩のイベント | Comments(0)

右から始まり左へ終わる   


電車が着く
改札口に人人が山を作る
もこもこと湧きだし
もこもこと増えつづけ
もこもこと膨れあがり
もこもこと溢れかえり
もこもことはみだし
もこもこと流れだし

黒のズボンの
青いズボンの
茶色のブーツの
黒いタイツの
ダークなスニーカーの
紺色の
肉厚の
盛り上がる
突進する
前進する
支える
歩行する
振り向く
左右に揺れる
上下する

もこもこと広がり
もこもこ、と散りはじめ
もこもこ、と散り散りになり
もこもこ、と間引かれ
もこ、もこ、とまばらになり
もこ、もこ、と、浮遊し
もこ、もこ、と、消えはじめ
もこ、もこ、と寂しくなり
もこ、もこ、と思わず
もこ、もこ、と
もこ、もこ、
と、
もこ、
こ、


案内板のテロップはいつまでも
一人で流れ一人で覚えている
準急と各停の停車駅が指示通りに
右から始まり左へ終わっていく

電車が着く
改札口に人人が山を作る
もこもこと湧きだし
もこもこと増えつづけ
もこもこと膨れあがり
もこもこと溢れかえり
もこもことはみだし
もこもこと流れだし

黒のズボンの
青いズボンの
茶色のブーツの
黒いタイツの
ダークなスニーカーの
紺色の
肉厚の
盛り上がる
突進する
前進する
支える
歩行する
振り向く
左右に揺れる
上下する
中から外へ歩きつづける
中から外へ歩きつづける

もこもこと広がり
もこもこ、と散りはじめ
もこもこ、と散り散りになり
もこもこ、と間引かれ
もこ、もこ、とまばらになり
もこ、もこ、と、浮遊し
もこ、もこ、と、消えはじめ
もこ、もこ、と寂しくなり
もこ、もこ、と思わず
もこ、もこ、と
もこ、もこ、
と、
もこ、
こ、


案内板のテロップはいつまでも
一人で流れ一人で覚えている
準急と各停の停車駅が指示通りに
右から始まり左へ終わっていく

電車が着く
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by hannah5 | 2009-01-28 23:49 | 作品(2009~)

  


言葉よりも
響いてくるものがあって

静かな白い魂の
ひっそりとしたうねり
ふかい無音の奥底で
すべての営みが閉じられる

小さな灯を
手の中にかざす
小さすぎて
灯があることさえ
忘れてしまいそうになる

何年も
置き去りにしてきた灯から
オレンジ色のゆらめきが
こぼれ落ちる
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by hannah5 | 2009-01-26 23:24 | 作品(2009~)

遠くて近い   


詩を読んでいると
ごく普通の
ごくごく当たり前な生活が見えてきて
私たちのふだんの
脂汗の滲んだ
詩とはまったく関係のないふだんの生活が見えてきて
案外、詩は自由だったんだと
私の生活からひょこひょこ歩いていけそうな距離にあったんだと
安堵するような感慨に襲われる

詩の中に棲むおじさんやおばさんや少女や少年たちの
大した記事にもならない顔が
ふだん着を着たまま息をしていて
私とおんなじだね、よかったね、
と、なんだか親しみを感じてホッとする


この前犬の写真を撮ったんだ
白い犬のね
それから、通りの看板、アルファベットの
-見たことのないアルファベットの並べ方だったから、英語じゃないことはたしかだけど
を撮って、何枚か
それから海辺、
走りだしそうな足を撮って、何枚か
それでキャプションをいろいろ考えて
思いつくままに書いてみたのだけれど
無関係な言葉の羅列が
不思議と写真に吸い込まれていって
-気持いいくらい吸い込まれていって


あまり至近距離に立っていると
ここからそこまでは自由の距離だったんだと
感慨深く思うこともない
詩はできるかぎりかなり遠く
無関係なほど遠い所に立っていた方がいいと思う

心臓の付け根あたりがきゅっと絞りあげられて
あ、つかまってしまった
と思っても
なんでつかまってしまったのかさっぱりわからないくらいの方が近い
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by hannah5 | 2009-01-20 23:13 | 作品(2009~)

私の好きな詩・言葉(129) 「鳥の言葉は」 (新井 豊美)   


「鳥の言葉は」


飛びたつ鳥を追ってゆく
はいいろの雲のさけめ
そこだけが澄んだ淵のような
いっそう蒼みを帯びてくる少女の怒りの眼のような

   鳥よ おまえの
   ゆくところはどこか

あの街の高い塔の上にも鳥は群れていた
変わらぬうたを愛語のようにかわしながら
微風にも揺れるしなやかなゆうかりの葉群れに抱かれて
彼らはなにをうたっていたのか
なにを思い なにを悲しんだのか
海峡と岬をへだて 山襞は幾重にも険しく迫って
あれははるかな調べだが
生まれるまえに聴いた誰もが知っているうただから
わたしはその意味を思い出せるはずだ

   鳥よ おまえが
   かえってゆくところはどこか

塔は崩れ 木は倒され
ゆくところなく
かえるところなく
とどかぬところ ゆきつけぬところ

   ゆえに非在の場処であるかのような ここ 唯一の場処で
               問うことの無意味によってわたしの問いは 忘れられ

北北西を指す風見の針
沈黙の石は磁気を帯びてかすかに震え
それらの上におおいかぶさってくる 冬の重力

錆びた滑車が
ギリリと 軋み



(「現代詩手帖」(2009年1月号)掲載)

ひと言
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by hannah5 | 2009-01-18 23:42 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(0)

光の中で   


光の中で 光の中で
ゆるゆると笑うが溶けだす

まっさらな光の中で 光の中で
笑うが溢れ 溢れつづける

光が透きとおり
笑うが透きとおり
一面を光が覆い
一面を笑うが覆い

光が笑うに覆われ
笑うが光に覆われ
笑うが光をとらえ
光が笑うをとらえ

光の中で笑うが満ち
笑うの中で光が満ち
光と笑うが満たしあい
光と笑うが満たされあい

笑うの中で光が融合し
笑うの中で光が融合され
光と笑うが覆い 覆われ
覆いつくし
覆いつくされる
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by hannah5 | 2009-01-16 23:36 | 作品(2009~)

やがて、   


感覚の鋭くなっていく先の研磨された先端
ひりひりする神経のそこに到達するまでの長い長い時間

夜になると繊毛の空気が騒ぎたち
じっと見つめる目の端から一滴の感覚が落ち
波状の振幅が次々と生まれるさまを待ちつづける
波状の振幅のあとから生まれる振幅のあとから生まれる振幅のあとから生まれる振幅のあ
  とから生まれる振幅の
中心にある内なるふるえの生まれようもない核
その下を脈々と水は流れつづける
陽の当たらない地下での茫洋とした営みが
無関係ではいられなくなるほど流れつづけ
やがて、
と形容される時間の中の一点で
核が生み落とされる

常に新しくなり続ける時間の存在そのものが
人の記憶から忘れ去られる頃
生み落とされた核は一瞬のうちに成長を始め
産声と声変わりを同時に始めるのだ

そのように歴史は作られてきた
そのように歴史は作られていく

詩と思想新年会
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by hannah5 | 2009-01-14 23:49 | 作品(2009~)

冬の伝言板です   



とうとう本格的に寒くなってしまいました。(ぶるる)
でもどんなに寒くても、夏に比べるとずっと元気でいられる私です。

皆様はどんな冬をお過ごしでしょうか。
風邪やインフルエンザにかからないよう、あたたかくしてお過ごしくださいね。

コメントや伝言などありましたら、書いてください。

いつも詩織を覗いてくださって、ありがとうございます。


はんな
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by hannah5 | 2009-01-10 19:27 | 伝言どうぞ♪ | Comments(6)

夜のつづき   


夜は歩くのにふさわしく
どこまでも

やわらかい道が沈んで 黒く
踏みしめることがおぼつかないまま
伸びていく その続きのまま
どこまでも

一人でいることが
かぎりなく押し寄せてくる

霧のように寄せては返し
寄せては返す陰を抱きとめ
黒のいちばん深い底に放して流す

見あげれば
藍いろに広がる空の真中に
淡い月が埋めこまれたまま
あいかわらず顔いろはすぐれず
ぼんやりと物憂い

夜の底に足音を忍ばせ
思うことと願うこと
かぎりなく
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by hannah5 | 2009-01-09 16:29 | 作品(2009~)

喪 失   


道が曲がる
そこのカドを曲がったところの
目じるしは銀行で
その先のコンビニの先のカドの
向かいのまっすぐな道の先の
道が消えたあたりの
すぐそばの
ホントにすぐそばの
道の真ん中あたりの
入り口が階段になっている
そこの

道が曲がる、また、
折れる、消える、
ひと巡りする頃には
角ばった箱が立ち並び
大小とりどりの
同じ色と同じ形の箱が平然と往来する

道が曲がる
曲がりつづける道の道の道の道の道を
またいで走り抜け
またいで走り抜け
またいで走り抜け
道の向こうにある道の向こうにある道の向こうにある道の

道が曲がる
1-15の隣は1-3で
その間の点点は見えない

たぶん
暗がりに隠れている
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by hannah5 | 2009-01-08 23:19 | 作品(2009~)