<   2009年 02月 ( 10 )   > この月の画像一覧   

奪い合う 2   


長い
長い口論になって
薄く
薄く空気が引き延ばされていく
さらに薄く
薄く千切れるほど薄くなって
たまらなくなった空気は
地の底から熱を引き連れてくる
熱は熱く
一気に熱く加速していく
千切れるほど薄くなっていた空気に
火がつき
めらめらと火がつき
とどまることなく燃え
燃えあがる ぐわんぐわんと

いのちが一枚燃え
いのちが二枚燃え
いのちを一枚燃やし
いのちを二枚燃やし
しゅーしゅーと炎を吹きつけ
いのちの一枚といのちの一枚に炎を吹きつけ
いのちの芯が焼け
芯が焼け しゅーしゅーと
芯が焼け
芯が燃え
芯が燃えあがり

炎があがる
一面を覆う
炎があがる
一面を舐める
炎が舐める
舐める
舐め尽くす
炎は引火する
引火する

深く
深く火事になって
何もかも飲み尽くし
何もかも

憎しみが溶けだし
封印された憎しみが
憎悪を突き破って溶けだし
溶けだし
空気を伝い
空気の中へ
空気の薄く
引き延ばされた空気を破って
毒毒しく色づいて
どろどろと色づいて
おまえの
おまえのすべての
おまえという
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by hannah5 | 2009-02-28 22:38 | 作品(2009~)

奪い合う 1   


長い
長い口論になって
薄く
空気が薄く
薄く空気が延ばされて
たまらなく
空気はたまらなく
たまらなくなった空気は熱を
熱を地の底から引き連れ
引き連れ熱を地の底から
引き連れてくる熱を地の底から
熱く
熱は熱く熱は
一気に加速する
一気に熱く一気に加速する
薄く
千切れて薄く
薄く千切れて薄い空気に
火がつき
めらめらと火がつき
火がつきめらめらと火がつき
燃えあがり火が燃えあがり
あがり燃え燃えあがり
ぐわんぐわん燃えあがり
いのちが燃える
燃えるいのちが燃える
いのちが燃やされるいのちが
燃やされるいのちが燃やされるいのちが
しゅーしゅー
炎を吹きつけるしゅーしゅー
いのちに吹きつける炎を吹きつける
芯が焼ける
いのちの芯が焼ける
しゅーしゅー焼ける
芯がしゅーしゅー燃える
燃える芯がしゅーしゅー燃える
燃えあがる
芯が燃えあがる
芯が燃え燃えあがるあがる
あがる炎があがる炎が
舐める炎が
炎が舐める舐めつくす
舐めつくす炎が炎が舐めつくす
引火する
引火する炎は
引火する引火する炎は引火する

深く
深く火事になって
何もかも
何もかも飲みこみ
飲みこみ何もかも飲みこみ

憎しみが溶けだし
封印された憎しみが
憎悪を破って溶けだし
空気を伝い空気の中へ
毒毒しく色づき
どろどろと毒づき
おまえの
おまえという
おまえのすべての
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by hannah5 | 2009-02-27 23:30 | 作品(2009~)

長い詩   


とてつもなく長い長い詩を読んでいる
始まりは顕微鏡で見なければわからないほど小さく
どの季節に属していたのかも定かではない
偶然に偶然が重なって その詩を読み始めたのだけれど
読み始めた頃は 燃えつきの悪い墨みたいに発火するのに時間がかかった
なぜ時間がかかったかといえば
長い詩なんて退屈極まりないというのが今まで読んだ長い詩の印象だったし
詩人の無愛想な面立ちや密生している生活を見るたびに
詩を読むことが遠のきそうなくらい萎えてしまったからだ

優しい始まりではなかった

雨が降っている日は
長い長い詩は重くなってページを開けることさえできなかった
お天気のいい日は
かえって太陽がまぶしすぎたし
ページを開けると発火してしまいそうだったからやっぱり長い長い詩は読めなかった
それでも長い長い詩のことが気になって
深夜遅く家の中の音がすべて途絶え
わたしの影がひとつだけ灯りの下に残される頃
わたしは長い長い詩を取り出しては眺め ゆっくりとページをめくってみた

ある日
詩人のペンの先から不思議な音がこぼれ落ちるのを聴いた
水晶のように透き通った音 ざわざわとしていたまわりがしんと静かになった
わたしの心の中に透き通った水が流れ込み
初めて長い長い詩を読んでみようという気持になった

詩人は相変わらず無愛想な面立ちをしているし
複雑に絡み合った生活は透度が低くて見通せないし
長い長い詩を読んでいくためには
相当の体力と気力と覚悟(のようなもの)がいるだろうと思った
けれど、あの時聴いた水晶のように透き通った音 ざわざわしている中でそこだけ静かにし
 んとして 光っていた音がいつまでも耳の中から消えなかった

長い長い詩をゆっくりと読んでいる
たぶんこれからもずっと読んでいるだろうという気がしている
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by hannah5 | 2009-02-23 23:00 | 作品(2009~)

熱すること   


面白いと斬新が陳腐になる日
射貫き
食いちぎり
変形し
粉砕する
言葉が生まれる

魂に注入される歓喜の乱舞
熱に翻弄される芯の苦しみ
地中の深い所で生成されるマグマ
炸裂することの優しさを思う

宇宙の中で息づいている微生物の誕生
過去から未来へつづくいとなみ
その一瞬の永遠性
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by hannah5 | 2009-02-17 23:22 | 作品(2009~)

流し   


流し



濡れてゐる夜の流しに手を拭ひ眠るよりなき愚直のこころ


米研ぎ終へし流しに夜の灯光りをり揺れゐしこころ鎮まらんとす






干魚



瓦斯の火に干魚並べて焼く夕べさびしみてせむことならなくに


夕さりにもの煮てをれば階段を降りきたり子の佇ちて覗ける


                               (小浪歌集 『水音』 より)


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by hannah5 | 2009-02-15 23:20 | 『水音』 | Comments(0)

Happy Valentine's Day!   


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はい、今日はバレンタイン・デーです。
日本では女性が男性にチョコレートを贈って愛の告白をするようですが、
アメリカでは男性から女性に、友達から友達へ、夫から妻へ、
上司から部下へ、娘から父親へ等々、
ふだんの感謝や愛をこめて花束やカードやお菓子を贈ったりします。

ケーキはありませんが、いつも来てくださる皆様に感謝をこめて

        Happy Valentine's Day!
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by hannah5 | 2009-02-14 14:17 | ご挨拶 | Comments(0)

あしたへ   


私がきのうを置いてきたのは
きのうが信じられなくなったからでも
きのうから逃げたくなったからでもない

きのうは私と一緒に歩き
一緒に眠り
一緒に笑ったり悲しんだりした
それは幾分つつましく
ノスタルジックであるけれど
いつもどこか満たされなかった私は
ぼんやりと遠くを見つめて立っていた

過去は不確かではなかったろうか

未だ出会ったことのない未来は
私に優しく微笑んでいる
柔らかな香りを送ってくれる
過去に慣れっこになってしまった私は
おどおどしながら
けれど未来に惹かれたから
私を呼んでいる未来に向かって
歩いている

私を包み込む大らかな時の流れよ
私の愛するものたちの住むあしたよ

おまえに向かって歩いている


(初出 2005年9月8日)


あしたへ

ひと言
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by hannah5 | 2009-02-11 13:56 | 作品(2009~)

夜を抱きしめて   


一人深夜のカフェに座っていると
いつのまにか時間が流れだしていく
一度流れだしたら
二度と戻らない時間を
止めることも拾うこともできないまま
わたしの心まで流れだしていく

夜が落ちていくのはこんな時
似たような夜をいくつもやりすごし
そのどれにも引っかけることができずにいた

もろもろと崩れていく砂山に似て
足元のはかなさをどうすることもできずに
遠くまで流れていった夜を偲んでいる

夜はどこまで流れていったのだろう

さようならを描いて
ぼんやり底を見つめていた日
帰るあてのない夜を待ち続けて
掻き消えていく残像を抱きしめていた

時間が小さな鼓動を打っている
わたしの耳に届くか届かないうちに
鼓動は静かな空気の一部になって消えていった
泡のような鼓動の中に
紡いできた思いのひとかけらを落としておいたはずだったのに
その思いをもう見つけることはできない

夜がいつまでも明けなければいい
どこまでも深くなっていく夜の底で
あの時の夢のつづきを抱いたまま
かすかな苦みを閉ざしていられるから
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by hannah5 | 2009-02-10 23:44 | 作品(2009~)

現代詩の合評会 ~ みんなで読み解きをしてみよう   


2月8日(日)、埼玉県秩父市にあるポエトリーカフェ武甲書店で、光富いくやさんを講師に迎えて詩の合評会がありました。

合評会のメニューはなかなかユニークでした。
① 秩父お散歩: 秩父市内の昭和初期の建物(有形文化財)を見学したり、路地裏を探索したりする
② 昼食: ポエトリーカフェ武甲書店店主の坂本さんご夫妻の手料理と飲み物
③ 現代詩の合評会
  A. 現代詩の読み解き: 石畑由紀子さんの作品「ひとつひとり」と伊藤浩子さんの作品
    「らせん階段」
  B. 参加者の作品の合評会: 参加者の4作品の合評会

午前11時にポエトリーカフェ武甲書店に集合したあと、店主の坂本健一さんの案内で秩父市内の昭和初期の建物-煙草屋、旧秩父国際劇場(現在は上石建材店)、明治の商人宿、秩父神社などを見てまわりました。どれもなかなか興味深かったですが、中でも明治の商人宿は建物の中に大きな井戸があったり(現在でも水が湧いているそうですが、衛生上の問題から使用していないそうです)、2階の座敷は天井が低く窓には欄干があるなど、昔の宿場そのままの雰囲気でかなり面白かったです。お土産品の中に古代米のジャムがあって、試食してみましたが、一応ジャムの味はするものの、お米の味と香りがしてなんとも不思議なジャムでした。

秩父市内散歩のあとは書店に戻って、坂本さんご夫妻の手料理の昼食をいただきました。(ちなみに、奥様は詩人の落合朱実さん。)玉ねぎとプチトマトといんげんのサラダ、たけのこの煮物、炊き込みごはんなど、とてもおいしかったです。

昼食のあとは午後1時から、現代詩の読み解きを行いました。初めの作品は石畑由紀子さんの「ひとつひとり」でした。光富さんが最初に解釈・感想・批評を述べられたあと、参加者が銘々に意見を述べ合うというもので、かなり深い所まで読み取れ、意見を述べ合うことができました。また、この作品に共感する意見が多かったです。(石畑由紀子さんは北海道にお住まいなので、合評会には参加されませんでした。)

そのあと、参加者の作品4篇の合評を行いました。形式は石畑由紀子さんの読み解きと同じで、最初に光富さんが意見・感想・評を述べ、そのあと参加者が自由に意見を述べ合うというものでした。作品は石川さんの「遠足」、したらきよしさんの「夢の連鎖」、土屋怜さんの「信じる」、はんなの「誰も知らない可笑しみを笑う」でした。

最後に、後から参加された伊藤浩子さんの作品「サーカス」を読みました。「家族という罪人たちのサーカスという見せ物が子々孫々と続いていく暗い情念」(光富さん)、「中原中也の「サーカス」の「ゆあーん、ゆよーん」を思い出す」(イタヅカマコトさん)、「フェリー二や姥捨て山をイメージする」(石川さん)などの意見が活発に述べられました。

合評会は午後4時30分に終了。30分ほど書店内で光富さんや伊藤さん、したらさんとおしゃべりをしたあと、5時すぎに書店を後にしました。


                     *********************************

初めてお会いした方たちの作品をその場で初めて読む合評会でしたが、私にとっては久しぶりの合評会であり、その上自分なりの読み解きをしながら意見を述べ合うという作業はかなり勉強になりました。こういう合評会がどこかであったらまた参加したいと思います。

光冨いくやさんのプロフィール
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by hannah5 | 2009-02-08 23:50 | 詩のイベント | Comments(2)

欠けている日の美しき   


綺麗になるためには
不眠不休を削らなければならない
ということでもあるらしく

睡眠が壊れてしまったから
あした見る夢が
おバカさんにならないように
羽を生やして飛んでいくことにします
静かに降り始めた夜の中へ

今夜は少し斜めになってしまいそうな夜だから
足元を確かめるために
ひとつのくだりを思いだしました

── 美しい男に出会ったら
── シャッポを脱ぐよ

美しい男に出会ったら
シャッポを脱ぐのです
そのために慌ててうちへ帰って
シャッポのしわを伸ばし
きちんとかぶり直して出かけることにします

それで少しは足元が安定し
少しは睡眠が美しくなり
少しは眼の中に光らしいものが灯って
少しはさらさらとした気持にもなりまして

明日はいかばかりかと
すっかり深くなってしまった夜の奥底を覗いてみますと
わたしらしいらしさと
あなたらしいらしさが
肩を並べて歩いていて
そんなふうに思うことのできるやさしさのようないつくしみのような怖さのようなすべてが欠け
 ているような
小さな隔たりと大きな繋がりが
斑になって点在しており

わたしはまだ未熟者ですから
くれぐれも くれぐれも 壊さないように
大事にお取り扱い下さいませ
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by hannah5 | 2009-02-05 20:37 | 作品(2009~)