<   2009年 03月 ( 11 )   > この月の画像一覧   

うろろんとあったかく   


冬の午後の
風のない日の
陽だまりの中に
ぼんやり考えごとを投げだしているような

水を入れつづけて
やっと浸かることができるようになった湯に
体を沈めて
とろとろと細胞をふやかしているような

無言の余韻が小さく揺れつづけて
真ん中あたりで切れそうになる
あわてて揺れを押さえて
今にも切れそうな真ん中に
手を当てる

思いやりが
ひょーいひょーいと
角を出す
そのたびに酸っぱい雨が降ってきて
角ばった思いやりが
あわてて引っこんでしまう

しばらくすると思いやりが
ひょーい・・・・・
と遠慮がちに角を出す

ひょーい・・・・・
ひょーい・・・・・

ひょい!

酸っぱい雨が降ったってかまわないよ

思いやりが少しだけ強くなり
酸っぱい雨にもめげないくらいに丈夫になり
人の顔いろをうかがわずに
ひょい!
ひょい!
と角を出すことができるようになったら
少しくらい陽だまりが欠けても
少しくらい湯が浅くなっても
この中に思いやりを埋めこんで
徐々に発火させれば
氷の風の吹く冬の昼下がりでも
難破しそうな気持のまま航海を続けていても
思いやりから発熱するエネルギーは莫大なので

芯までうろろんと
あったかくなる
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by hannah5 | 2009-03-30 23:09 | 作品(2009~)

愛とか   


同情が
   ふくふく
 湧いてくる
       心臓の付け根あたり
涙にまみれた
チープっぽい熱
そうだよね、
わかるんだよね、って
カナシミが溢れて
            こんこん
  と湧いてくる

抱きしめるほどに想い
              思い
                 オモイ
キミの人生をなぞって
ゆるゆると流れる血を浴び
ゆるゆると思い焦がれて
わたしのイノチの
わたしの背丈ほどの
両腕に抱えきれいない厚みと
                  熱みと

一度は泣いたよ
 絞るようにして
本当に命が絞りあげられて
 残り滓になって
かすかすになってしまった心で
 やっぱり泣いた
泣くとね
響くんだよね
からだの中の基盤がぶっこわれそうになる

自分の終わりを告げるものは何だろう
ニンゲンそう簡単にこわれるもんじゃないんだけどね
と思っていたことが
 つんつん、
     つつつん、
つんのめる

(詩と思想4月号佳作)
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by hannah5 | 2009-03-27 14:14 | 作品(2009~)

先に   


先に
真っ先に
わたしの前を行くものたち


空、
薄墨色の雲の間で重なり
ふくらむ

風、
光の中を通りすぎて
帰ってくる

花、
開いて折れ曲がり
息を吹きかえす

波、
空気のすきまを伝ってくる
ふるえ

夜、
しずかに流す青白い涙
朝がくる前の安らかな孤独

さざ波、
うすくれないにほどく
時間の爪あと

最近は。。。
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by hannah5 | 2009-03-26 23:39 | 作品(2009~)

ふわふわしたいね   


今日は東京はかなりあたたかくて、一段と春の陽気になりました。
いつも詩織を見ていただいてありがとうございます。

翻訳等々、仕事が立て込んできてしばらく更新が途絶えていますが、
もう少しで再開できると思います。

こんなあたたかい日は、お外でふわふわ遊んでいたいなぁ。。。
と思いながら、しこしこ仕事をしています。

再開したらまたおつきあいくださいませ。


はんな
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by hannah5 | 2009-03-19 12:43 | ご挨拶 | Comments(4)

眠っている間に   


わたしが眠っている間に
あなたはわたしを包み
わたしを癒し
わたしの疲れた心を洗い
わたしが目覚めるころには
心の中からとげを抜いて
やわらかくしてくださる主よ

あなたが油を注いでくださる
圧倒的なご臨在の中で
あなたはわたしに恵みを送り
喜びを与え
平安で覆い
わたしから捧げられる良いものは何ひとつないのに
それでもあなたは
わたしをそのままで愛してくださる

美しく強く偉大な主よ

あなたのご臨在の中で
わたしはもういちど
新しく生まれかわる


This is Our God (by Hillsong)
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by hannah5 | 2009-03-15 23:18 | イエス・キリスト

抒情文芸 ~ 詩に出会う ~   


しばらく前から「抒情文芸」という詩の投稿誌に作品を投稿しています。
今回、残念ながら入選せず佳作でしたが、
今回投稿した作品は、私が最近出会った詩集の詩に感じて書いた作品です。
出会って心に深く感じて詩を書くことになったもとの作品はあとでご紹介するとして、
まずは私の作品からです。



小箱の中で


小箱を開ける
何かに会えるように
何かを見つけることができるように

ことばの粒たちが静かに置かれている
長い時間をかけて拾い集められた粒たちだ
粒たちは片隅でちいさくうなずいて
そっと目を伏せた
それからおそるおそる差し出したわたしの手の中に
うつむいたままいくつもいくつも落ちてきた

(見えることは罪ではなく)
(見えないことも罪ではなく)

粒たちはわたしの手の中で丁寧におじぎをすると
恥ずかしそうな笑みを送ってきた

誰かに見せるわけではなく
思い出の一枚にするでもなく
遠ざかってしまった時の奥に隠れるように置かれたまま
いつまでも風化しない出来事が
突然わたしの前に現われて
わたしは思わずたじろいだ

粒たちは動揺して早鐘のように鼓動を打った
鼓動は空気を振動させ
わたしの中でも早鐘を打ちはじめた
本当は開けてはいけなかったのかもしれなかったのに
むやみに立ち入り
見てはいけないものを見てしまったバツの悪さが
申し訳ない気持ちで流れこんできた

大事にしますとも
丁寧に扱いますとも言えないまま
わたしはそこに立ち尽くしていた



                        ********


そして、私が出会って感銘を受けた詩です。
震えるように繊細で美しい言葉が置かれていて、読みながら優しい気持になりました。
この詩は去年の12月23日に、
秩父のポエトリーカフェ武甲書店で行われた詩誌「スーハ!」の朗読会
「それぞれの、善き人への冬の歌」で朗読された佐藤恵さんの作品です。



乾電池


故郷から離れるというその朝
家族の寝息がこもる家を抜け出た
山裾の村から海辺の町へ
夜明け前のうすぐらい山道を抜け
車でさえ上る時には息切れする長い長い坂を
自転車で走り下りた
急な坂の大きなカーブをブレーキの音させて曲がる
雪さえ融けきらずに残る早春のつめたい風に打たれて
わたしのはなやほおは、どんなに赤かったことだろう
始発の電車に乗るその人を駅で待ち
偶然をよそおって顔をあわせた
かじかむ両手で火照るほおをかくして、おはよう、と声をかけたわたしに
まだ眠そうな顔でやってきたその人は、ぎょっとした様子で
ひふを切るようにつめたかった風よりも、もっともっとつめたい声で
なにしに来たんだよ、ときつく言った
わたしはあわてて「ああ、乾電池を買いに。じゃあ」と言ってすれちがった
四キロの道のりを、自転車に乗って風を受けつづけた目は
あつくうるんでとけて
いなか町で、駅前といっても店さえまばらで、こんな早朝から開いている店などないのに
とっさに出た言い訳が、乾電池だったなんて、なんだかおかしくて
始発のバスもまだ動き出さない駅前のバス停でひとり
わらいながらカタカタとふるえはじめたからだを押さえて泣いた

人はなぜくちづけなどするのだろう
缶ビールを片手に恋愛ドラマを観てはやれやれと
腕を引き抱きよせる場面などあらあらと
ひとりつぶやいてしまうちかごろのわたしが
くちづけもしなかったその人を思い出す
こごえて帰った日に
両手でつつんだお茶から吹きかかる熱い湯気で
はなのあたまをしめらせるように

その人がたった一度だけ
長い坂を自転車で上って
会いに来てくれたこと
おどろいた顔のわたしを見て
うれしそうに笑ってくれたこと


(佐藤恵詩集 『きおくだま』 より)(七月堂より出版)




作者プロフィール

佐藤 恵(さとう めぐみ)

1961年 秋田県象潟町生まれ。
詩誌「スーハ!」同人。
佐藤恵さんのブログ: 銀葉の舟
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by hannah5 | 2009-03-12 23:31 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(2)

生まれる   


甘いお砂糖の中から生まれてくる
卵ひとつ

まあるい卵をあなたの腕の中であたためる
細かい微粒子のような風が
卵のそばまで降りてきて佇むと
ゆるゆると空気が回転し始める

空間に棲む思いをひとつもぎとって
あなたのそばに置く
あなたはどこからともなく似た色の思いを取ってきて
わたしのそばに置いていく
あなたが置いていった思いを拾い
気づかれないように腕の下に隠す
わたしが置いた思いを
あなたはいつのまにか拾って知らん顔している

まあるい卵が
あなたの腕の中でくっくっと笑う
空気が小さな回転をくりかえしながら溶けていく
腕の下から柔らかく溶けた空気が
しゅるしゅると広がっていく
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by hannah5 | 2009-03-08 23:06 | 作品(2009~)

詩脳ライブ ~ SHI NOU (Poetic Brain) LIVE ~   


3月5日(木)午後6時30分よりシアター代官山にて、「詩脳ライブ」という刺激的な詩のパフォーマンスがありました。ベルギー人の脳神経科学者で詩人のJan Lauwereyns(ヤン・ローレンス)氏をゲストに招いて、現代詩を代表する6名の詩人が朗読とシンポジウムを行いました。参加した詩人の方たちはJan Lauwereyns、岩切正一郎、川口晴美、城戸朱理、藤井貞和、野村喜和夫の6名(敬称略)。

最近、脳についての興味が増し、脳の研究が盛んになってきたようでテレビなどでも脳科学者の活躍を目にするようになってきましたが、「脳神経」という難しい学問分野の方がステージで繰り広げるパフォーマンスはもしかしたらちょっと地味で退屈かもしれないと思って出かけました。ところが蓋をあけてみると、確かに難しい脳細胞の写真やら論文やらが出てきて、あれは何だ??みたいな部分はありましたが、それよりヤン・ローレンスさんのユーモアまじりのひょうひょうとした朗読と解説が面白くて、最後まで引き込まれたまま楽しませていただきました。

プログラムと内容を簡単に書きますと。
1.「朗読パフォーマンス」 岩切正一郎、川口晴美、城戸朱理
2.「藤井貞和に聞く ~詩はいつから脳に入り込んだか~」 藤井貞和、(聞き手)野村喜和夫
3.「コラボレーションⅠ」 野村喜和夫、Compania Ballet Flamenco El Sur (野村真理子、公家千彰、塚原利香子)
4.「コラボレーションⅡ」 Jan Lauwereyns、 田中庸介
5.「シンポジウム ~詩的脳/脳的詩の可能性~」 Jan Lauwereyns、岩切正一郎、川口晴美、(司会)城戸朱理

どれもとってもよくて、刺激的で、ここで一つだけ取り上げるのはむずかしいので、私個人にとってのハイライトだけ書くことにします。何を隠そう、私は城戸朱理さんの隠れ追っかけでありまして、何とか城戸さんから城戸さんの詩集にサインをもらおうと目論むことしばし、しかし城戸さんが教えていらっしゃるという講義や講演会にはスケジュールが合わなかったり、合っても会えなかったり、いつも城戸さんとはすれ違ってばかりいたのですが、夕べはとうとう、そうとうとうです!城戸さんが外に出てこられたところをひし!と捕まえて『召喚』と「鎌倉ペンクラブ」にしっかりサインをしていただきました。「まあ、そんなに深い追っかけなんですか」と、そばで見ていらした北爪満喜さんがあきれて笑っていらっしゃいました。

その他にも会場に来ていらしたいろいろな詩人の方たちとご挨拶する機会があり、私にとってはとても嬉しい夜でした。
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by hannah5 | 2009-03-06 13:47 | 詩のイベント | Comments(0)

私の好きな詩・言葉(130) 「踏切」 (西原 正)   


踏切


朝は遺跡、踏切こそ
繰り返し踏み固められた重さに
時間が破れている
静かな二筋の鉄の板、日々は
落ちてこない空とレイルの間の
いちまいの版画
削られる時間は赤い鉄粉に染まり、人の
眼を鎮めては立ち尽くさせて、鳥が
いちばんに切る、踏切の朝
緑の滴が落ちて鉄の眼が開いた


(西原正作品集 『音函』 所収)

ひと言
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by hannah5 | 2009-03-05 16:38 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(2)

降りつもる   



静かな空間に
時間が降りつもる
きょう生まれた思いたちが
小さなかぎ裂きをつくって
時間の片隅にひっかかっている

鋭利な痛みが
かぎ裂きのどこかから
しゅん、と
漏れてくる

きょうは風が冷たかったから
かぎ裂きがひび割れてしまった
きのうまでのかぎ裂きが
乾いた声で笑っている

傷が割れた
思いだしたように
小さな叫び声があがった

夜が深くなっていく

しんしん
しんしん

いつまでも
思いが降りつづく
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by hannah5 | 2009-03-04 23:06 | 作品(2009~)