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茨木のり子展~記念コンサート「茨木のり子を弾き語る<りゅうりぇんれんの物語>」   


4月19日から今月29日まで、世田谷文学館で茨城のり子展が開かれている。その関連企画がいくつか行われているが、昨日はシンガーソングライターの沢知恵さんの弾き語りで、茨木のり子の「りゅうりぇんれんの物語」の全曲演奏会があった。茨木のり子のこの詩は、しばらく前に読んで心にどしんと残り、詩織でも少し書いたことがあるが、それをどんなふうに弾き語るのが楽しみにしていた。と言っても、この関連企画はどうやら申込者が多く、抽選に当たった人だけ参加できるものらしく、もうひとつの谷川俊太郎と小池昌代の記念対談にははずれてしまったのでこちらのコンサートに行けるかどうかちょっと心配だった。幸い抽選に当たり、演奏会を心待ちにしていた。

沢知恵さん自身、茨木のり子がお好きらしい。そのせいか、全編ドラマのような盛り上がりで、りゅうりぇんれんが14年間も逃げ回って穴の中で暮らした様子がありありと伝わってきて、詩を読むのとはまた違う感動があった。どこか脆弱な現代詩と比べたらなんと力強くて胸にこたえるのだろう。中国の農民たちを騙して日本に強制連行し、ろくな食べ物も与えずに石炭堀の重労働につかせた功罪は、ナチのユダヤ人迫害にも匹敵する。幸い、りゅうりぇんれんは14年後に発見され、無事中国に帰ることができたが、多くの中国人たちは死んでいった。連行された中国人は十万人といい、抵抗する者は殺された。朝鮮からは66万余人が連行されたという。(『りゅうりぇんれんの物語』注解より)

小さい内向きの詩ではなく、外に、宇宙に向かって開くような詩が書きたい-最近、詩作の方向性を探っていて、このコンサートは縮こまった背筋を伸ばしてくれるような思いがした。夕べはずっとコンサートの余韻に浸っていた。

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発見された直後のりゅうりぇんれん(北海道タイムス)
『りゅうりぇんれんの物語』よりコピー)



私の好きな詩・言葉(68) 「りゅうりぇんれんの物語」(茨木のり子)
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by hannah5 | 2014-06-22 17:55 | 詩のイベント | Comments(0)

喜和堂2号   


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野村喜和夫さんの詩塾喜和堂で学ぶ人たちの同人誌が発行されました。
連詩と詩と散文の同人誌です。
今回で2冊目の喜和堂に、私も初めて参加させていただきました。

同人誌喜和堂の参加者は野村喜和夫さんの他、以下のメンバーです。
そらしといろ
来住野恵子
山腰亮介
佐峰存
唐作桂子
颯木あやこ
墨亮
森川雅美
沢村俊輔
はんな
有泉はるみ
渡辺めぐみ
野村龍
岩切正一郎
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by hannah5 | 2014-06-19 18:12 | 投稿・同人誌など | Comments(0)

日本の詩祭2014   


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自作の詩を朗読する白石かずこさん(左)


6月15日(日)午後から、日本現代詩人会主催による「日本の詩祭2014」がありました(於ホテルメトロポリタンエドモント)。H氏賞、現代詩人賞、先達詩人が発表され、H氏賞は峯澤典子さんの『ひかりの途上で』、現代詩人賞は甲田四郎さんの『送信』が受賞しました。入口で詩集を売っていたので、どちらの詩集も購入しました。まだほんの数ページしか読んでいませんが、どちらも良い詩集だと思います。峯澤さんの詩は、たぶん、私の好きなタイプの詩です。これから読むのを楽しみにしています。


日本の詩祭2014プログラム

[I]
開会のことば                    北畑 光男

・ 第64回H氏賞贈呈
   選考経過報告                奥 重機
   H氏賞贈呈                  財部 鳥子
   受賞詩集『ひかりの途上で』について  吉田 文憲
   受賞のことば                 峯澤 典子
・ 第32回現代詩人賞贈呈
   選考経過報告                梁瀬 重雄
   現代詩人賞贈呈               財部 鳥子
   受賞詩集『送信』について         水島 英巳
   受賞のことば                 甲田 四郎
・ 先達詩人の顕彰
   先達詩人への敬意・記念品贈呈     財部 鳥子
   安藤元雄氏について            野村喜和夫
   白石かずこ氏について           八木 忠栄
   先達詩人のことば              安藤 元雄
   先達詩人のことば              白石かずこ
・ 詩朗読
   H賞受賞詩集『ひかりの途上で』から「はつ、ゆき」   峯澤 典子
   現代詩人賞受賞詩集『送信』から「開聞八月十四日」 甲田 四郎

[Ⅱ]
音楽さとう宗幸 「青葉城恋歌」ほか
講演植木雅俊 「お釈迦さまも詩人であった」

閉会のことば                    山本十四尾
(敬称略)
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by hannah5 | 2014-06-18 01:44 | 詩のイベント | Comments(0)

日本の詩を読む XI 「金子光晴の詩の世界 その2」   


金子光晴の詩の世界の2回目の講義が6月2日に行われ、森三千代との出会い、世界放浪、戦争の足音などを中心に講義が進められました。

忙しい合間を縫って少しずつ垣間見ている金子光晴の世界に対して、まだ感想らしいものはありませんが、金子光晴の生きていた時代の時間の流れ方が今とだいぶ違っているように思います。今はともかくすべてが早く早くという感じですが、では早くした後で何が残るかと言えば、何となく徒労感と虚無感が底の方を徘徊しているような気がします。金子光晴の生きていた時代は一寸一秒も惜しんで生産性を上げることはなかったにしても、だから一般的には今ほど物質的に豊かな暮らしはなかったはずですが、何かもっと大事なものを得ていたような気がしてなりません。生きることも文学をすることも時間的な間隔が大きかったにもかかわらず、本質的なものを得ていたと思います。

今回読んだのは「洗面器」という作品1篇だけでした。野村喜和夫さんはこの詩をすごいすごいとおっしゃっていたのですが、私はどうもこういうみじめったらしい詩に拒絶感を覚えてしまいます。さびしいと感じるのは金子光晴の日本人的感覚で、実際の現地の客を待っているこの女たちは、もっとたくましくざわざわと生きていたはずです。私にはそういう女たちの方に魅力を感じました。



洗面器


(僕は長年のあいだ、洗面器といふうつはは、僕たちが顔や手を洗ふのに湯、水を入れるものとばかり思つてゐた。ところが爪硅人たちはそれに羊(カンピン)や魚(イカン)や、鶏や果実などを煮込んだカレー汁をなみなみとたたへて、花咲く合歓木の木陰でお客を待つてゐるし、その同じ洗面器にまたがつて広東の女たちは、嫖客の目の前で不浄をきよめしやぼりしやぼりとさびしい音をたてて尿をする。)

 洗面器のなかの
さびしい音よ。

くれてゆく岬(タンジョン)の
雨の碇泊(とまり)。

ゆれて、
傾いて、
疲れたこころに
いつまでもはなれぬひびきよ。

人の生のつづくかぎり。
耳よ。おぬしは聴くべし。

洗面器のなかの
音のさびしさを。
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by hannah5 | 2014-06-08 23:29 | 詩のイベント | Comments(0)