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譚詩舎文学サロン「立原道造と私たち―ことばを巡って」   


12月23日(火・祝)、譚詩舎の文学サロンが東京芸術劇場で開かれました。今回は「立原道造と私たち―ことばを巡って」と題して、谷川俊太郎さんと吉田文憲さんによる対談が行われました。特に北軽井沢に住んでいたことがあり、立原道造の詩に少なからず影響を受け、道造の詩の世界をよく理解されている谷川俊太郎さんの話には大変興味がそそられました。

道造は私が若い頃、一時期大変影響を受けた詩人で、道造の詩をノートに書き写しては暗唱したりしましたが、今でも私の作品にその頃真似た道造の言葉づかいが出てくることがあります。感情的、感傷的にのめり込んだこともあって、そのせいかあれこれ分析解釈する立原道造論なるものには拒絶反応を起こしてしまいます。(それで、現代詩手帖10月号の立原道造特集はほとんど読めませんでした。)吉田文憲さんには大変申し訳ないのですが、文憲さんが朗読された道造の「はじめてのものに」は私の中の道造のイメージとはほど遠く、今回のサロンに出席したことを少し後悔しました。


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対談中の谷川俊太郎さんと吉田文憲さん



はじめてのものに


ささやかな地異は そのかたみに
灰を降らした この村に ひとしきり
灰はかなしい追憶のやうに 音立てて
樹木の梢に 家々の屋根に 降りしきつた

その夜 月は明かったが 私はひとと
窓に凭れて語りあつた(その窓からは山の姿が見えた)
部屋の隅々に 峡谷のやうに 光と
よくひびく笑ひ声が溢れてゐた

――人の心を知ることは・・・・・・・人の心とは・・・・・・
私は そのひとが蛾を追ふ手つきを あれは蛾を
把へようとするのだらうか 何かいぶかしかつた

いかな日にみねに灰の煙の立ち初めたか
火の山の物語と・・・・・・また幾夜さかは 果して夢に
その夜習つたエリーザベトの物語を織った

        (立原道造詩集『萱草(わすれぐさ)に寄す』より)



【プログラム】

開会  挨拶・司会 譚詩舎 布川鴇
対談  「立原道造と私たち―ことばを巡って」 谷川俊太郎、吉田文憲
歌曲  渡辺文子
     「悲しくなったときは」
     「落葉松」
     「爽やかな五月に」
スピーチと対談
閉会  挨拶 布川鴇
(敬称略)
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by hannah5 | 2014-12-28 19:35 | 詩のイベント | Comments(0)

メリークリスマス!   


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Adoration of the Shepherds
(ヘラルト・フォン・ホントホルスト(1592-1656))



ひとりのみどりごが、私たちのために生まれる。
ひとりの男の子が、私たちに与えられる。
主権はその肩にあり、
その名は「不思議な助言者、力ある神、
永遠の父、平和の君」と呼ばれる。
(イザヤ9:6)




神さまのあたたかい祝福が
おひとりおひとりの上に豊かにありますように。

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by hannah5 | 2014-12-24 20:44 | イエス・キリスト | Comments(0)

日本の詩を読む XII 第1回 ~西脇順三郎へのアプローチ~   


野村喜和夫さんが講義される「日本の詩を読む」シリーズの第7回目が始まりました(教室は淑徳大学池袋サテライトキャンパス)。今回の講義は西脇順三郎の作品を中心に、萩原朔太郎との比較や朔太郎からの移行、西脇から現代詩への移行などについて行われます。

第1回目の講義は萩原朔太郎との比較を織り交ぜながら、西脇のプロフィールを中心に見ていきました。いつも教室に行ってから作品を初めて読むことが多いので、今回は少し予習をしていこうと思い、現代詩文庫の『西脇順三郎詩集』にざっと目を通しておきました。しかし、読めば読むほど最初の感動的な印象が薄れて、日本の詩壇に新しい息吹を吹き込んだ西脇の詩の凄さがわからなくなり始めたところだったので、この講義は楽しみにしていました。作品のむずかしさはともかく、プロフィールを見る限り西脇の仕事の大きさには圧倒されるものがあります。教室では「秋」という作品を読みました。この作品は特にⅡが好きです。




  Ⅰ

灌木について語りたいと思うが
キノコの生えた丸太に腰かけて
考えてる間に
麦の穂や薔薇や菫を入れた
籠にはもう林檎や栗を入れなければならない。
生垣をめぐらす人々は自分の庭の中で
神酒を入れるヒョウタンを磨き始めた。

  Ⅱ

タイフーンの吹いている朝
近所の店へ行って
あの黄色い外国製の鉛筆を買った
扇のように軽い鉛筆だ
あのやわらかい木
けずつた木屑を燃やすと
バラモンのにおいがする
門をとじて思うのだ
明朝はもう秋だ

(西脇順三郎詩集『近代の寓話』より)

講義のシラバス
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by hannah5 | 2014-12-23 20:25 | 詩のイベント | Comments(0)

創世―― ウニャ・ラモスに   


始まりの初めに
あなたが立っていたことを知らなかった

固く閉ざしたままの乳白色
触れたことのない息遣い
触れられたことのない熱
疼くように潜んだまま 身じろぎもせず
平らにならした表面の下で
長く じっと

予感とも呼べないほどの微かな震えが
幾重にも重なるように打ち寄せ
受け止めようとする両方の手のひらに
溢れるように落ち始めたそれら

射し込む葦笛の音
魂のひだが隙間もないほど揺れて
熱をもち倦んでいく
密かに匂うゆらめきの
小さな痛み
倦み疲れることに憧れ
けれど 踏み出せないまま

叩かれる音
空気を突き刺して

魂のひだをばらばらに切り離しては
あちこちに散らばったそれらをかき集め
握りしめる
手の中で
呻き声をあげて はじき出ようとする

寄せては返し
寄せては返す
あの向こうに見えた
大きな月の光を
かき抱いて

※ウニャ・ラモス(1933―2014)。アルゼンチンの音楽家、作曲家、ケーナ奏者。代表作に Una Flauta En La Noche、Eve、Puente De Madera (シャルル・クロス・アカデミー賞受賞)、La princes del mar などがある。
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by hannah5 | 2014-12-11 23:06 | 投稿・同人誌など