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連続講座「大岡信の詩と真実」 3   


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大岡信展図録


世田谷文学館で行われている「大岡信の詩と真実」の連続講座の3回目は、谷川俊太郎さんと三浦雅士さんの対談でした(10/24)。講座の参加者には、三浦さんが作成された大岡信・谷川俊太郎・対照略年表があらかじめ配られました。いつの頃からか二人はよく一緒に登場するような印象があったのですが、年表を見ると生年月日だけでなく詩を書き始めた年代も近く、また同じ時期に詩誌「櫂」に参加したり二人の対談集を出すなど詩人としての活動も共通している点が多くあります。それだけでなく、谷川さんは大岡さんに対し、他人には感じない情を感じていたり、最初のエッセイ集を大岡さんに見てもらうなど、もっとも深いところでつながっていたと語られていました。

三浦さんが独自の大岡論や谷川論を展開する中で、谷川さんはそれを受ける形で自身の生い立ちや恋愛の話、大岡さんとのことなど、終始穏やかに語られていたのが印象的でした。私事になりますが、現在参加している喜和堂では詩誌のために連詩が行われていますが、その大元は大岡信さんが始められたもので、大岡さんのしずおか連詩の会に野村喜和夫さんが参加されているなど、思わぬところで大岡さんとの繋がりがあることに不思議な縁を感じます。1時間半の対談は密度の濃い内容で進められ、改めて大岡信という詩人の業績の大きさを感じさせられました。
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by hannah5 | 2015-10-28 17:49 | 詩のイベント | Comments(0)

連続講座「大岡信の詩と真実」 2   


「大岡信の詩と真実」の2回目は野村喜和夫さんの講演でした。あらかじめ「大岡信における想像力と批評」と題したレジュメが配られ、大岡詩全体に対して分析と考察が試みられ、野村さんらしい詩論の展開がなされました。(これまで「伝統と現代」と「うたげと孤心(=全体と個)」という観点から大岡信の詩論を書いており、今回は「想像と批評」という観点から講演を行う趣旨の断わりが野村さんからありました。)大岡信は私が詩を書き始めた時から好きな詩人の1人でしたが、全部の詩を読んだわけではなく、これから少し読んでみようと思います。いつもの野村さんらしくかなり込み入った展開の講演でしたが、楽しんで聴かせていただきました。

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背広にネクタイ姿の野村さんは珍しいです

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by hannah5 | 2015-10-23 10:47 | 詩のイベント | Comments(0)

大岡信展と連続講座「大岡信の詩と真実」   


世田谷文学館で大岡信展が始まりました(10月10日から12月6日まで、2階展示室)。大岡信さんの詩稿や草稿、創作ノートなど、膨大な資料が展示されています。パソコンがなかった時代、原稿や草稿ノートなどすべて手書きで、書き足したり、消したり、直しを入れたりした跡が残っていて、大変興味深いです。また、会場の随所には大岡さんの詩が印刷されたハガキ大のカードが置いてあって、見学者は自由に持ち帰ることができます。

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この展示会に伴って、同館では大岡さんにゆかりのある詩人たちによる連続講座が開かれており、第1回は高橋順子さんによる講義でした。かつて編集者として大岡さんと親交のあった高橋さんは、大岡さんの素顔を見られた数少ない1人で、いろいろ裏話を披露され、終始興味深いものでした。

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大岡さんの話をする高橋順子さん


連続講座は全部で5回、各回とも魅力的な出演者が予定されています。

10/10(土) 高橋順子(詩人)
10/17(土) 野村喜和夫(詩人)
10/24(土) 谷川俊太郎(詩人)と三浦雅士(評論家)による対談
10/31(土) 長谷川櫂(俳人)
11/1(日)  吉増剛造(詩人)
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by hannah5 | 2015-10-14 23:32 | 詩のイベント | Comments(0)

私の好きな詩・言葉(169)   


小さきものをそっと抱く


「おれは戦場で太郎と花子を育てたよ」突然父はかすれた声でそう言いました。私はその時まだ子どもで、ただ子犬を飼いたいと思っているだけでした。

 初めは遠くからおびえる目で野営地を見ているだけだが、兵隊が乾パンを投げてやると、争うように飛びついてカシカシ食っていた。
 もちろん体は泥だらけさ、時々河にでも入っていたのだろうけど、あとで、体を洗ってやったらシラミだらけ、傷だらけ、可哀そうにずいぶん野生に耐えていたのだろうな、
 家族を国に残した古参の兵隊が何度も声をかけてやった。残飯をそっと隠れて取りに来る。「こわくないぞ」といっても言葉が分からない。
 ある日、小さい方が鉄条網に絡まっていた。解いてやり兵隊の飯食わせたら真黒顔で笑ったよ。それからもう一方も来た。何かもらえると思ったのだろうな。
 若い兵隊が覚えやすい名前を付けてやった。「太郎と花子」呼べば飛んでくるようになった。みんな可愛がったさ。あんなところに小さいものなんかないのだから。
 戦が始まると、あいつら何処かへうまく隠れていた。部隊が移動すると、少し距離を置いて黙黙とついて来る。親なんかいなかったろうな。遊んでやると本当に喜んでいた。二年ぐらいたって、ある時大きな作戦があったのだよ。俺たちはタコツボでドンドン落ちる弾に耐えていた。やられたものもいる。けがにんばかりになっていた。両方が引いて終わった戦だが、厳しかったな、あれは。
 そう、河のそばで見つけた。小さい少年の方、うつ伏せに倒れていた。かおは覚えていない。そっと抱いたが覚える顔がなかったのさ。少女の方は、それからまだ会ってない。
 みんな夜には目を凝らして、ずっとずっと震えながら寝た。もう遠くのものしか見られなくなっていた。

(花潜幸詩集 『初めの頃であれば』 より)

ひと言
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by hannah5 | 2015-10-07 21:18 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(0)