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日本の詩を読む IX ~ 詩的アヴァンギャルドの100年 (第1回)   


野村喜和夫さんが講義される「日本の詩を読む」シリーズの9回目の授業が始まりました(教室は淑徳大学の池袋サテライトキャンパス)。今回は前衛詩を取り上げる予定で、題して「詩的アヴァンギャルドの100年」です。講義は全部で10回、11月2日に第1回目の講義がありました。この日は山村暮鳥の 『聖三稜玻璃(せいさんりょうはり)』 の作品が取り上げられました。アンドレ・ブルトンの 『シュールレアリズム宣言』 が出たのが1924年ですが、それよりはるか以前の1915年に、日本の暮鳥がシュールレアリズムに負けずとも劣らない詩を書いていたことに驚かされます。しかし、暮鳥の作品はあまりにも時代に先行していたため、世間からは理解されませんでした。



囈語(たはごと)


窃盗金魚
強盗喇叭(らっぱ)
恐喝胡弓(こきゅう)
賭博ねこ
詐欺更紗
瀆職天鵞絨(とくしょくびろうど)
姦淫林檎(かんいんりんご)
傷害雲雀(ひばり)
殺人ちゆりつぷ
堕胎陰影
騒擾(さうぜう)ゆき
放火まるめろ
誘拐かすてえら。

(暮鳥詩集 『聖三稜玻璃』 より)

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by hannah5 | 2015-11-10 16:13 | 詩のイベント | Comments(0)

連続講座「大岡信の詩と真実」 5   


せたがや文学館で行われていた連続講座の最終回は吉増剛造さんの講演でした(11/1)。吉増さんが用意された資料は、A3用紙4枚の両面に詩や雑誌の掲載記事が細かな文字で隙間なくコピーされ、随所に吉増さんの文字や線が書き込まれていました。思わず読み飛ばしそうになるところを、最初から丁寧に読んでみると、実は吉増さん、私たち参加者のためにかなり親切に書き込みをなさっていたようで、入念に時間をかけて用意された資料であることがわかります。(実際、吉増さんはこの資料を1週間かけて用意されたそうです。)資料の冒頭には「大切な??(判読不明)ニチヨービの午後、.......今日のおいでをふかく感謝をいたします。貧しい乏しい、個人的な記憶にそうようにしてのお話し、…..というのよりも語りになるのでしょうが、出来うるかぎり正直に…..(「オフ・レコ」のようにとイシキもいたしまして、…)語ってみようと、心に決めておりました。…..(ナゼ飯島氏、大岡氏だったのか?たとえば谷川氏/入沢氏ではなくって)とでも成るのでしょうか、…..。」と手書きの書き込みがあります。資料は「お燈(どう)明、、、、、水底(みなそこ)ノ笛(ふえ)」(燈明は「とうみょう」ではなく、飯島耕一さん風に「どうみょう」と読むのだそうです。)と題され、8月に亡くなった「大切な親友」であった井上輝夫さんへの追悼文に始まり、飯島耕一さんの詩や雑誌、同人誌などへの寄稿文、2005年の『國文舉』に掲載された大岡信さんと吉増さんの対談全文、大岡さんについての天沢退二郎さんの引用文、大岡さんが十代の頃に書いた詩「水底吹笛」、「巨きな驚き」である大岡信さんのことを書いた吉増さんの詩などが盛り込まれていました。1時間半休むことなく語り続けられた講演は、「三田詩人」を出し始めて飯島耕一さんと大岡信さんが参加された時の話、生涯の友だった井上輝夫さんの話、寒気がするほど朗読が嫌いだったという飯島さんの話、大岡さんの大きさの驚きの話等々、吉増ワールドがはじけて溢れかえるようで、聴いていた人たちもかなり楽しんでいた様子でした。それ以上に楽しんでいらしたのは吉増さんだったようで、「今日は楽しいな。おいしいワインでも買って帰るかな。」と本当に楽しそうに語られていたのが印象的でした。

今回吉増さんの話を聴き、資料を読んでいて発見したのは、私自身はそれほど吉増さんの詩に興味がある方ではないと思っていたのですが、他のどの詩人たちよりも詩に対するぴーんと張り詰めたものが伝わってきて、詩への純粋な感覚や感情が呼び覚まされるものがありました。吉増さんのような詩人が存在することは、本当はかなりありがたいことなのだと、改めて思いました。
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by hannah5 | 2015-11-06 13:11 | 詩のイベント | Comments(0)

連続講座「大岡信の詩と真実」 4   


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大岡信さんの詩の連続講座4回目は俳人の長谷川櫂さんの講演でした(10/31)。長谷川さんは朝日新聞に連載された「折々のうた」を中心に講演され、折々のうたの背後にある大岡さんの思想背景について ① 詩の仕事 ② 批評(美術、音楽)③ 連詩の3点から考察を加えられました。(最後の連詩については、時間がなかったせいか、残念ながらほとんど触れられませんでした。)

「折々のうた」は1975年1月15日から2007年3月31日まで、1日も休まず朝日新聞に掲載され、その数6762回で、これは万葉集4500首をしのぐものだそうです。シュールレアリズムによる影響、日本の文化史や文学史の中での「折々のうた」の位置付け等、かなり細かく掘り下げられた内容の講演で、準備も大変だっただろうと思わせられました。面白かったのは、シュールレアリズム的な言葉の文化は禅問答という形で古来より日本文化の中に存在しており、それが大岡さんの思想の中に流れ込んでいるのではないかという指摘でした。

長谷川さんは冒頭で、最初の句集の中の「冬ふかし柱の中の波の音」が「折々のうた」に取り上げられ、これが大変嬉しかったと述べられ、その理由は世界的視野に立った詩人によって選ばれたからであると最後に結ばれていたことが印象的でした。
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by hannah5 | 2015-11-02 23:42 | 詩のイベント | Comments(0)