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日本の詩を読む X ~ 四季派の時代(第1回)   


先週月曜日の18日から、野村喜和夫さんが講義される「日本の詩を読む」シリーズの10回目が始まりました。今回は四季派の詩人たちを中心に、全部で7回の講義です。私自身は一時立原道造に心酔していたこともあり、四季派という名前は知っていたのですが、それが具体的にどういうものかはほとんど知りませんでした。今回の講義では四季派の成立や背景、雑誌「四季」に関わった詩人たちなど、広範な視点から四季派を見ていきます。

第1回目の講義は堀辰夫が「四季」という小説やエッセイ、詩などの総合季刊誌を創刊したことや、その後、丸山薫、三好達治らによって受け継がれ、詩の雑誌になったことなど、「四季」の成立を中心に講義が進められました。


【講義予定】
1.4/18  「四季」の成立
2.5/16  三好達治(『測量船』)
3.5/30  三好達治(『測量船』以後)
4.6/13  丸山薫/その他の四季派の詩人たち
5.6/20  立原道造
6.6/27  「コギト」と伊藤静夫
7.7/11  詩と戦争
(教室はいつもの淑徳大学池袋サテライトキャンパスです。)



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by hannah5 | 2016-04-25 20:52 | 詩のイベント | Comments(0)

日本詩人クラブ新人賞   


第26回日本詩人クラブ新人賞に、喜和堂の同人颯木あやこさんの 『七番目の鉱石』 が受賞しました。9日(土)はその授賞式でした(於東京大学駒場キャンパス21 KOMCEEレクチャーホール)。『七番目の鉱石』は颯木さんの3冊目の詩集です。詩集をいただいたお礼のはがきに、こんなことを書きました。「この詩集は本当に鉱石のようだと、最初に通読した時に思いました。鉱石のように固く、磨いていくとやがて美しい宝石になる。たった一つの原石から、やがて美しく輝いて、人を魅きつける宝石になることへの確信に近い願望・・・(中略)・・・ひりひりするような孤独と痛み、それでも見失うまいとする希望と光。」前の2冊の詩集は読んでいないのですが、本の栞や祝辞を述べられた人たちの言葉から、『七番目の鉱石』が完成度の高い詩集に仕上がっているという印象をもちました。颯木さん、受賞おめでとうございます。これからも颯木さんの作品を楽しみにしています。

新人賞の他に日本詩人クラブ賞の贈呈もあり、林嗣夫さんの 『そのようにして』 が受賞しました。(颯木さんの後ろに座っている方が林嗣夫さんです。)詩人クラブのもうひとつの賞である詩界賞は該当者がいませんでした。


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作品を朗読する颯木あやこさん




雨だれ

   颯木あやこ詩集 『七番目の鉱石』 より

黒豹だ

きっと雌だ

いま 屋根に爪先で着地した
ひとあし ひとあし歩き回り
(大きく育ったマグノリアの花を貪り)

天井の下 わたしは
毛布をかぶり直し
その 爪の先端から放たれる
ぬれぬれとした光から 身を守る
身を

黒豹
   窓を
     かすめ

爪の光に穿たれて
全身 孔だらけ 灰色の蜜 噴き出し
寝床に染みだけ残して
消え去ってもよい
こんな夜に

わたしの幻影が
月にさえ背を向けて
道のカーヴの奥行きへ
吸いこまれてゆくのを見た と
青に近いほど白い影だった と

ひとり 蟋蟀のような男が
秋に呟いてくれればそれでよいのに

黒豹は
土砂降り
捨て子となって
流れてゆく





【贈呈式式次第】

1. 開会の言葉                           太田雅孝

2. 会長挨拶                             武子和幸

3. 経過報告                             村尾イミ子

4. 選考経過
   第49回日本詩人クラブ賞                  硲杏子
   第26回日本詩人クラブ新人賞               根本明
   第16回日本詩人クラブ詩界賞(該当者なし)       三田洋

5. 賞の贈呈
   第49回日本詩人クラブ賞 詩集『そのようにして』    林嗣夫
   第26回日本詩人クラブ新人賞 詩集『七番目の鉱石』 颯木あやこ

6. 受賞者の紹介
   林嗣夫氏について                        石川逸子
   颯木あやこ氏について                      葛原りょう

7. 受賞詩集から試作品朗読
   詩集『そのようにして』から                   林嗣夫
   詩集『七番目の鉱石』から                   颯木あやこ

8. 花束贈呈

9. 受賞者挨拶
   第49回日本詩人クラブ賞                   林嗣夫
   第26回日本詩人クラブ新人賞                颯木あやこ

10. 閉会の言葉                           細野豊
    (敬称略)



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by hannah5 | 2016-04-12 20:38 | 詩のイベント | Comments(0)

鈴村和成×野村喜和夫「テロと三島と60年代」   


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対談中の鈴木和成さんと野村喜和夫さん


4月7日(木)、鈴村和成さんの新著『テロの文学史 三島由紀夫にはじまる』の刊行を記念して、野村喜和夫さんをゲストに迎えてのトークイベントがありました(場所は本屋B&B)。三島由紀夫を中心に、テロとは何か、三島由紀夫VS作家や詩人などの文学者たち、三島由紀夫の60年代、鈴村さんや野村さんの60年代、三島由紀夫の問題等、ぐるぐると渦を巻くようにして(スパイラル)のトークでした。鈴村さんは金子光晴の足跡を訪ねて野村さんとマレーシアを旅行されたせいか(その旅行記は野村さんの詩集 『芭(塔(把(波』 に描かれています)、お二人のやり取りもこの本の内容より深いところでやり取りされていて、わりと突っ込んだ内容になっていたように思いました。

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鈴村和成氏プロフィール
1994年 名古屋市生まれ。東京大学仏文科卒。同修士課程修了。横浜市立大学教授を経て、同名誉教授。評論家。フランス文学者、紀行作家、詩人。
評論 『写真とフィクション』、『幻の映像』、『バルト テクストの快楽』、『ランボー、砂漠を行く アフリカ書簡の謎』、『愛について プルースト、デュラスと』 、紀行 『ランボーのスティーマー・ポイント』、『金子光晴、ランボーと会う マレー・ジャワ紀行』、『ヴェネツィアでプルーストを読む』、紀行小説 『ランボーとアフリカの8枚の写真』 (藤村記念歴提賞)、詩集 『ケルビンの誘惑者』、『黒い破線、廃市の愛』 など。( 『テロの文学史』 よりコピー抜粋)



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by hannah5 | 2016-04-11 11:43 | 詩のイベント | Comments(0)

日本の詩を読む IX ~ 詩的アヴァンギャルドの100年(第10回)   


「詩的アヴァンギャルドの100年」の最終講義は「詩的実験の現在」と題し、実験詩のいくつかが紹介されました(3/28)。紹介された主な詩人は藤井貞和、レーモン・クノー、ジョルジュ・ペレック、ジャック・ルーボーなどで、読んだ作品は藤井貞和の詩「〈柳虹とかいふ人の、......実に最劣の詩、ではない、詩のやうなものばかりだ。〉」、レーモン・クノーの詩集 『100兆の詩篇』、野村さんの詩集 『街の衣のいちまい下の虹は蛇だ』 の中の「(お肉さん、お肉さん、)で始まる部分と「街の、衣の、いちまい、下の、虹は、蛇だ、」が繰り返される部分(呪文パート)、野村さんが2003年11月8日の読売新聞に寄稿した「地球の顔21 セビリア(スペイン)」でした。(スイスで長編詩「街の衣のいちまい下の虹は蛇だ」を書き上げた後、野村さんは妻の眞理子さんを伴ってスペインのセビリアを訪れます。セビリアの旧市街には「蛇通り」という名の通りがあり、蛇通りの上には日除けのための布が張り巡らされていて、詩との偶然に驚いたことが書かれています。)また、篠田昌伸氏が「(お肉さん、お肉さん、)」と「街の、衣の、いちまい、下の、虹は、蛇だ、」を合唱曲として作曲し、2006年にみなとみらいホールで発表された合唱の録音も聴きました。

詩の実験が繰り返されてきた100年、そこで使われてきた言葉は人の常識を超え、言葉の法則として定着したものを覆し、分け入ることが困難なように思われますが、実験を繰り返すことで言葉の本質と核心に迫り、何物にもとらわれない自由な言葉が立ち現われていることを感じます。ふつう言葉は意思疎通と伝達の手段として使われますが、音楽や絵画のように芸術の高みにまで昇るせることができると、詩的アヴァンギャルドの講義を通して確信することができました。

次回の「日本の詩を読む」は4月18日から、四季派についての講義が行われます。場所は淑徳大学池袋サテライトキャンパスです。興味のある方はご参加ください。



「街の衣のいちまい下の虹は蛇だ」より


        野村喜和夫


街の、衣の、
いちまい、下の、
虹は、蛇だ、
街の、衣の、
いちまい、(meta)の、
蛇は、虹だ、
かすか、呼気、カーブして、
青く、呼気、カーブして、
わたくしは、葉に、揉まるる、
葉は、水に、揉まるる、
街の、衣の、いちまい、下の、虹は、蛇だ、
蛇の、粋の、いちまい、横の、声は、ヨーガだ、蛇の、
粋の、いちまい、(para)の、ヨーガは、声だ、声の、筋の、
いちまい、上の、景は、さやぐ、声の、筋の、いちまい、(poly)の、
景も、さやぐ、景を、あら敷き、結合の、きゃっ、添え、膜を、あら敷き、
分泌の、ひゃっ、添え、ふささ、さむ、衣の、にぎ夢、ひたた、たむ、衣の、
ざざ夢、ららら、ひとの穂、飛ぶよ、ららら、ひとの腑、浮くよ、街の、
衣の、いちまい、下の、虹は、蛇だ、蚶だ、蚯だ、蚫だ、蛔だ、
蛟だ、蜒だ、らむ、だむ、そよぎ、だむ、たむ、さわぎ、
蚶だ、蚯だ、きゃっ、ぎゃっ、きゃみ、髪、神、
街の、衣の、いちまい、下の、虹は、蛇だ、
わたくしは、葉に、揉まるる、
葉は、水に、揉まるる、
かすか、呼気、カーブして、
青く、呼気、カーブして、
街の、衣の、
いちまい、(meta)の、
蛇は、虹だ、
街の、衣の、
いちまい、下の、
虹は、蛇だ、

(野村喜和夫詩集 『街の衣のいちまい下の虹は蛇だ』 より)



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by hannah5 | 2016-04-02 21:32 | 詩のイベント | Comments(0)