「日本の詩を読む/世界の詩を読む」第6期-「ダダ・シュルレアリスムの100年」第1回   


野村喜和夫さんが講義される現代詩講座の第
6期が始まりました。今回はダダとシュルレアリスムについての講義です。講義が始まる前に野村さんからいただいたメールには「言うまでもなくシュルレアリスムは、近代以降最大の文学・芸術運動で、その後の世界文学・芸術に与えた影響もはかりしれません。今年は、最初の自動記述による作品とされるアンドレ・ブルトン+フィリップ・スーポー『磁場』が発表されてからちょうど100年目にあたります。そこで、第6期はテーマを「ダダ・シュルレアリスムの100年」として行います。主としてフランスの詩人たちを中心に(テクストは翻訳を用いますので、フランス語の知識は必要ありません)、平行して日本のシュルレアリスム系詩人にもふれていこうと思います。」とありました。


以前は超現実主義という日本語訳が使われていたようですが、現在はシュルレアリスムという原語で使われることが多いようです。第1回目の224日はジェラルード・ネルバル、ロートレアモン、ギヨーム・アポリネール、アンドレ・ブルトン、トリスタン・ツァラ、山村暮鳥などについての解説を織り込みながら、シュルレアリスムがなぜフランス文学から始まったか、ダダが日本の詩人にどのような影響を与えたかなどを中心に講義が行われました。読んだ作品はネルヴァルの「オーレリア」(一部)、「シダリーズ」、「廃嫡者」、アポリネールの「地帯(抄)」、「ミラボー橋」、ロートレアモンの「第一の歌」、「第五の歌」、「第六の歌」、山村暮鳥の「(たは)(ごと)、野村さんの「百年の暮鳥」でした。






地帯(抄)
Zone


   ギヨーム・アポリネール



ついに君はこの古くさい世界に倦きた


羊飼いの娘 おおエッフェル塔よ 橋々の群れは今朝 羊のように鳴きわめく


君はうんざりしている ギリシアやローマの古代の生活に


ここでは自動車さえもが古く見える

宗教だけが未だに真新しい 宗教だけが


君は一人だ じきに朝が訪れる

あちこちの通りで牛乳屋が缶を鳴らす

夜は美しい混血娘(メチス)のように遠のいていく

それは腹黒いフェルディーヌか 注意深いレアだ


そして君は飲む 君の命のように燃えるこのアルコールを

命の水(ブランデー)のように君が飲む君の命


君はオートゥイユのほうに向う 歩いて家に帰り

オセアニアとギニアの物神に守られて眠りたいのだ

それらの物神は 別の形をした別の信仰のキリストたち

漠とした希望の 下位にくらいするキリストたちだ


ではさらば さようなら


太陽 () 切られて(クペ)






(たは)(ごと)


   山村暮鳥



竊盗金魚

強盗喇叭(らっぱ)

恐喝胡弓

賭博ねこ

詐欺更紗

瀆職(とくしょく)天鵞絨(びろうど)

姦淫林檎

傷害雲雀

殺人ちゆりつぷ

堕胎陰影

騒擾(そうぜう)ゆき

放火まるめろ

(いうかい)かすてえら。







百年の暮鳥


   野村喜和夫



いちめんの野の鼻

いちめんの野の鼻


腸串って

あらしあらしキミハイタルトコロデ作動シテイル

強姦サキソフォン

監禁マダラカ


字と絵と)ぶらっ背)聾)ぶっ(出て(ぬぶっ(尾おっ(麩論(出っぱれ

露)得て(洩ると


腸串って

にくしんに薔薇を植ゑキミハ呼吸シキミハ熱ヲ出シキミハ食ベ

字と絵と)れれべ)いやん(荒れ得ぬ(生

ぶっ)餌(血みっど


キミハイタルトコロデ作動シテイル

主体ヲ載セカツ轢キ殺シ


呪るべ)穴)ぼわっ)る)られ)地痰(れ(らぶ(れ得ぬ(うっ


腸串って

あかんぼのへその芽キミハ大便ヲシキミハ肉体関係ヲ結ンデイルキミハ


字も絵も(治安(ぶっ(まん(こまん(驟雨)老べろん)飛ん)べーる)おっ)婆)斜背


いちめんの野の鼻 いちめんの野の鼻

いちめんの野の鼻 いちめんの野の鼻


目ヲ瞑レマダ正午ダ目ヲ瞑レマダ正午ダ目ヲ


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【講義予定】

# by hannah5 | 2019-03-11 23:37 | 詩のイベント | Comments(0)

「日本の詩を読む/世界の詩を読む」第5期-「愛の詩の12ケ月」第4回   


「愛の詩の
12ケ月」の4回目(最終回)は、最初の前半でパウル・ツェランの詩を中心に講義が行われ、後半は受講生達が選んだ愛の詩(一人数編ずつ)の中からそれぞれ編ずつを野村さんが朗読されました(1/27)。愛の詩には受講生自身の詩を入れてもよく、またそれらの詩は多岐にわたっていて大変面白かったです。題名と作者を列挙してみると:


ジャック・プレベール:「夜のパリ」「朝の食卓」

黒田三郎:「秋の日の午後三時」

那珂太郎:「小品」

長島なみ子:「ドクダミ」

伊藤ひろみ:「歪ませないように」

尾形亀之助:「風」

小池昌代:「熱い岸」

新藤涼子:「行き方知れず」

寺山修二:「和子について」

野村喜和夫:「パレード13」「くみね日誌」「あるいはリラックス」

蜂飼耳:「丹沢」

高村光太郎:「あなたはだんだんきれいになる」「裸形」

吉原幸子:「オンディーヌ」「ジェイ二 坊や」

茨木のり子:「怒る時と許す時」

西脇順三郎:「ヴィーナス祭のぜんばん」

シェイクスピア:「ソネット第18番 ぶどう色の酒」

ポール・エリュアール:「最初により」

ユー・ギャハ:「リルケを読む」「僕と同様リルケが好きなかすみへ」

山内獏:「土地3

立原道造:「ゆうすげびと」

大岡信:「丘のうなじ」

岡島弘子:「こごえた初恋」

岩田宏:「幼い恋」

吉岡実:「単純」

飯島耕一:「赤丘」「夕陽の中へ」

清岡卓行:「アカシヤの大連」「夏の海の近くで」

入沢康夫:「夜 われらの逢い引きの場所」「楽園の思い出」

ユン・ドンジュ:「序詞」「空と風と星と詩」

シンボルスカ:「感謝」

サトー八ロー:「お母さん2より」

村上あきお:「十姉妹」

高橋睦夫:「あがない」

岸田将幸:「人の朝」

小笠原しげすけ:「涙」

金子光晴:「春」

川崎弘:「地下水」

田中さち:「風はいつも」

新川和江:「路上」

草野心平:「何もかももう煙突だ」

作者?:「立像のように」「愛の歌」「女坂」「恋のメモリ」「ドクダミ」

受講生の詩:「死ぬまで一緒に」「月の背中で」「無音」

(朗読順)






(コロ)()


   パウル・ツェラン



僕の手のひらから秋はむさぼる、秋の木の葉を――僕らは恋人同士。

僕らは胡桃(くるみ)から時を剥きだし、それに教える、歩み去ることを――

時は殻の中へ舞い戻る。


鏡の中は日曜日。

夢の中でまどろむ眠り。

口は真実を語る。


僕の目は愛するひとの性器に下る――

僕らは見つめあう、

僕らは暗いことを言いあう、


僕らは愛しあう、()()と記憶のように、

僕らは眠る、貝の中の葡萄酒のように、

月の血の光を浴びた海のように。


僕らは抱きあったまま窓の中に立っている、みんなは通りから僕らを見まもる――


知るべき時!

石がやおら咲きほころぶ時、

心がそぞろ高鳴る時。

時となるべき時。


その時。


(パウル・ツェラン詩集『罌粟と記憶』より/飯吉光夫訳)





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# by hannah5 | 2019-03-09 23:49 | 詩のイベント | Comments(0)

私の好きな詩・言葉(174)   


こごえた初恋



先生を好きになっても装うことを知らず

受け持ちの理科と数学を勉強した

クラブ活動は先生が顧問の科学部に友達を誘って入部

女子は二人だけだった

先生の指導の下アミノ酸しょうゆやクリームをつくった

実験をおえて帰る家路はあたたかい闇


夏でも朝は肌寒い

天井にはこごえたハエがじっとしている

ジャムの空きビンに水を入れビンの口でおおうとポトポト残らず落ちてきた

観察すると 水中のハエの体にびっしりと泡がついている

皮膚呼吸しているのだろうか


「ハエの皮膚呼吸」と題した自由研究が選ばれ

発表会に出品されることになった


発表会の会場の学校まで先生の自転車のうしろにのせてもらって出発する日

「うらやましい」といいながらクラスの女子全員が見送りに来た

あこがれの先生が目当てだったのだ


「ブドウが実っているね」 話しかけてくる先生に私は黙っていた

真っ赤になって固まっていたのだ

息もできず ハエのように皮膚呼吸していた

「どうしたの」とふりかえる先生


おもいきって

友達を誘って先生の家をたずねた

美しい奥さまに迎えられ めずらしいお菓子をごちそうになった

先生はるすだった


若葉が光に痛む 青く固いブドウのまま

卒業式を迎えてしまった


(岡島弘子詩集『洋裁師の恋』より)




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ひと言

# by hannah5 | 2019-03-02 21:22 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(0)

現代詩ゼミナールと新年会   


112日(土)に日本現代詩人会主催の現代詩ゼミナールと新年会が催されました(於東京・アルカディア市ヶ谷(私学会館))。



【ゼミナール】


開会のことば   新藤涼子

講演       安藤元雄 「詩が立ちあがる場」

詩朗読      岡島弘子、中本道代、野田順子、野村喜和夫、浜田優、森水陽一郎

閉会のことば   麻生直子



【新年会】


開会のことば   秋亜綺羅

祝辞・乾杯・来賓・遠隔地・新入会員、スタッフ紹介等

閉会のことば   山本博道

(敬称略)


安藤元雄さんのお話、聞き入ってしまいました。

新年会は私自身の予定が詰まっていたので失礼しました。

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# by hannah5 | 2019-02-22 06:07 | 詩のイベント | Comments(0)

「日本の詩を読む/世界の詩を読む」第5期-「愛の詩の12ケ月」第3回   


「愛の詩の
12ケ月」の3回目は入沢康夫とアメリカの入沢康夫と言われたジョン・アシュベリーの詩を中心に講義が行われました(12/23/2018)。読んだ作品は入沢康夫の「失題詩篇」、「夜」、「ワレラノアイビキノ場所」、「未確認飛行物体」、ジョン・アシュベリーの「北の農場で」、他に野村さんが新聞などに寄稿された入沢康夫の追悼文2つを読みました。



失題詩篇


   入沢康夫



心中しようと 二人で来れば

 ジャンジャカ ワイワイ

山はにっこり相好くずし

硫黄のけむりをまた吹き上げる

 ジャンジャカ ワイワイ


鳥も啼かない 焼石山を

 心中しようと辿っていけば

 弱い日ざしが 雲からおちる

 ジャンジャカ ワイワイ

雲からおちる


心中しようと 二人で来れば

山はにっこり相好くずし

 ジャンジャカ ワイワイ

硫黄のけむりをまた吹き上げる


鳥も啼かない 焼石山を

 ジャンジャカ ワイワイ

心中しようと二人で来れば

弱い日ざしが背すじに重く

心中しないじゃ 山が許さぬ

山が許さぬ

 ジャンジャカ ワイワイ


ジャンジャカ ジャンジャカ

ジャンジャカ ワイワイ





北の農場で


   ジョン・アシュベリー



どこかで誰かが君をめざして、たけり狂って進んでくる、

信じられないほどの速度で、昼も夜もなく進んでくる、

吹雪も炎熱の砂漠もものかは、早瀬を渡り、隘路を通って。

けれども、彼に君の居場所がわかるだろうか、

会っても君だとわかるだろうか、

持ってきたものを渡せるだろうか。


ここはまるで不毛の地、

けれども穀倉は荒粉ではち切れそうで、

荒粉の袋は積まれて垂木にまで届く。

川は清らに流れ、魚は丸々と太り、

空は鳥に覆われている。いったいこれだけでいいのだろうか、

ミルク皿を夜のうちに外に出しておくだけで、

彼のことを時どき考えてみるだけで、

時どき、いや、いつもいつも、複雑にまじりあった気持ちで?

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# by hannah5 | 2019-02-20 06:16 | 詩のイベント | Comments(0)

あけましておめでとうございます   







クリスマスの御挨拶もせず、新年のご挨拶も
3日になってする今年です。

暮れからずっと翻訳の仕事が立て込んでいて、新年も昨日から仕事をしています。

毎年少しですがおせちを作るのですが、今年はそれも割愛、外のおせちを買いました。

でも京都風のおせちで、おいしかったです。


皆様にはあたたかい良い年を迎えられますよう。


今年もよろしくお願いいたします。



はんな

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# by hannah5 | 2019-01-03 20:36 | ご挨拶 | Comments(0)