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遠くて近い   


詩を読んでいると
ごく普通の
ごくごく当たり前な生活が見えてきて
私たちのふだんの
脂汗の滲んだ
詩とはまったく関係のないふだんの生活が見えてきて
案外、詩は自由だったんだと
私の生活からひょこひょこ歩いていけそうな距離にあったんだと
安堵するような感慨に襲われる

詩の中に棲むおじさんやおばさんや少女や少年たちの
大した記事にもならない顔が
ふだん着を着たまま息をしていて
私とおんなじだね、よかったね、
と、なんだか親しみを感じてホッとする


この前犬の写真を撮ったんだ
白い犬のね
それから、通りの看板、アルファベットの
-見たことのないアルファベットの並べ方だったから、英語じゃないことはたしかだけど
を撮って、何枚か
それから海辺、
走りだしそうな足を撮って、何枚か
それでキャプションをいろいろ考えて
思いつくままに書いてみたのだけれど
無関係な言葉の羅列が
不思議と写真に吸い込まれていって
-気持いいくらい吸い込まれていって


あまり至近距離に立っていると
ここからそこまでは自由の距離だったんだと
感慨深く思うこともない
詩はできるかぎりかなり遠く
無関係なほど遠い所に立っていた方がいいと思う

心臓の付け根あたりがきゅっと絞りあげられて
あ、つかまってしまった
と思っても
なんでつかまってしまったのかさっぱりわからないくらいの方が近い

by hannah5 | 2009-01-20 23:13 | 作品(2009~)

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