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夜を抱きしめて   


一人深夜のカフェに座っていると
いつのまにか時間が流れだしていく
一度流れだしたら
二度と戻らない時間を
止めることも拾うこともできないまま
わたしの心まで流れだしていく

夜が落ちていくのはこんな時
似たような夜をいくつもやりすごし
そのどれにも引っかけることができずにいた

もろもろと崩れていく砂山に似て
足元のはかなさをどうすることもできずに
遠くまで流れていった夜を偲んでいる

夜はどこまで流れていったのだろう

さようならを描いて
ぼんやり底を見つめていた日
帰るあてのない夜を待ち続けて
掻き消えていく残像を抱きしめていた

時間が小さな鼓動を打っている
わたしの耳に届くか届かないうちに
鼓動は静かな空気の一部になって消えていった
泡のような鼓動の中に
紡いできた思いのひとかけらを落としておいたはずだったのに
その思いをもう見つけることはできない

夜がいつまでも明けなければいい
どこまでも深くなっていく夜の底で
あの時の夢のつづきを抱いたまま
かすかな苦みを閉ざしていられるから

by hannah5 | 2009-02-10 23:44 | 作品(2009~)

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