長い詩
2009年 02月 23日
とてつもなく長い長い詩を読んでいる
始まりは顕微鏡で見なければわからないほど小さく
どの季節に属していたのかも定かではない
偶然に偶然が重なって その詩を読み始めたのだけれど
読み始めた頃は 燃えつきの悪い墨みたいに発火するのに時間がかかった
なぜ時間がかかったかといえば
長い詩なんて退屈極まりないというのが今まで読んだ長い詩の印象だったし
詩人の無愛想な面立ちや密生している生活を見るたびに
詩を読むことが遠のきそうなくらい萎えてしまったからだ
優しい始まりではなかった
雨が降っている日は
長い長い詩は重くなってページを開けることさえできなかった
お天気のいい日は
かえって太陽がまぶしすぎたし
ページを開けると発火してしまいそうだったからやっぱり長い長い詩は読めなかった
それでも長い長い詩のことが気になって
深夜遅く家の中の音がすべて途絶え
わたしの影がひとつだけ灯りの下に残される頃
わたしは長い長い詩を取り出しては眺め ゆっくりとページをめくってみた
ある日
詩人のペンの先から不思議な音がこぼれ落ちるのを聴いた
水晶のように透き通った音 ざわざわとしていたまわりがしんと静かになった
わたしの心の中に透き通った水が流れ込み
初めて長い長い詩を読んでみようという気持になった
詩人は相変わらず無愛想な面立ちをしているし
複雑に絡み合った生活は透度が低くて見通せないし
長い長い詩を読んでいくためには
相当の体力と気力と覚悟(のようなもの)がいるだろうと思った
けれど、あの時聴いた水晶のように透き通った音 ざわざわしている中でそこだけ静かにし
んとして 光っていた音がいつまでも耳の中から消えなかった
長い長い詩をゆっくりと読んでいる
たぶんこれからもずっと読んでいるだろうという気がしている
by hannah5 | 2009-02-23 23:00 | 作品(2009~)