うろろんとあったかく
2009年 03月 30日
冬の午後の
風のない日の
陽だまりの中に
ぼんやり考えごとを投げだしているような
水を入れつづけて
やっと浸かることができるようになった湯に
体を沈めて
とろとろと細胞をふやかしているような
無言の余韻が小さく揺れつづけて
真ん中あたりで切れそうになる
あわてて揺れを押さえて
今にも切れそうな真ん中に
手を当てる
思いやりが
ひょーいひょーいと
角を出す
そのたびに酸っぱい雨が降ってきて
角ばった思いやりが
あわてて引っこんでしまう
しばらくすると思いやりが
ひょーい・・・・・
と遠慮がちに角を出す
ひょーい・・・・・
ひょーい・・・・・
ひょい!
酸っぱい雨が降ったってかまわないよ
思いやりが少しだけ強くなり
酸っぱい雨にもめげないくらいに丈夫になり
人の顔いろをうかがわずに
ひょい!
ひょい!
と角を出すことができるようになったら
少しくらい陽だまりが欠けても
少しくらい湯が浅くなっても
この中に思いやりを埋めこんで
徐々に発火させれば
氷の風の吹く冬の昼下がりでも
難破しそうな気持のまま航海を続けていても
思いやりから発熱するエネルギーは莫大なので
芯までうろろんと
あったかくなる
by hannah5 | 2009-03-30 23:09 | 作品(2009~)