二重写し
2009年 04月 26日
夕食が終わって
食後のコーヒーをすすりながら
窓の外を見る
窓ガラスの外には
生垣がきれいに刈り込まれ
石灯籠が五メートルおきに配置されている
石灯籠と石灯籠の間には
建物の高さまで成長した木が等間隔に植えられている
窓ガラスの内側に
室内の灯(あか)りが点、点、と灯(とも)る
その灯りに向こうの家の灯りが小さく
点、点、と重なる
ずっと一人だった
すっかり暗くなった窓ガラスの向こうに
うすぼんやりとした街が広がっていて
室内のテーブルや灰皿やコーヒーカップが
灯りのように点々と灯っていた
それらをひとつずつ目でなぞりながら
一人でいることが永久に続いていくような
窓ガラスに灯る灯りが
夜の中から決して消えることがないような
しびれるような一人を抱えていた
あの人を待っていたわけではなかったけれど
あの人を待つという大義名分を作らなかったら
みぞおちに落ちてくる説明のつかない震えも
断続的に体の芯から湧き上がってくる悪寒も
すべて窓のせいにして
じっと坐っていることはできなかっただろう
今夜も
灯りが点、点、と
にじんだまま停止している
by hannah5 | 2009-04-26 23:55 | 作品(2009~)