未完
2009年 04月 25日
どこにも流れつかない夜が ひとつ
きょうの終わりの
ゆるやかに落ちてくる時間の中に
ぽつんと漂う
少しずつ濃くなる藍色の街の中で
じっと見ていたショーウィンドウの
まばらな人影
夏の異国の深夜
人気の絶えたカフェで聞いていた
延々とつづく身の上話
夜の闇に
ぼんやりと浮遊しはじめた意識の中に
何の脈絡もなく突然降りてきた蜘蛛の話一匹
南国に夜が深くなるころ
裏通りのウィンドウから灯りが消え
闇の中で他人の顔いろをにじませる
夜の都会で
洪水のように押し寄せては
闇に吸い込まれていくヘッドライト
つかまえることができずに
眺めているしかなかったそれらの夜に
切れ切れに落ちていったわたしの残像
風の中に夢を追い
風に追われて夢に棲み
流れていく夜を
胸の内に抱きしめることもできず
やがてくる朝までの間に
ひとしきり流れ
夜がまたひとつ
拾われないまま
戻ることを忘れて
(詩と思想2008年11月 佳作)
by hannah5 | 2009-04-25 13:33 | 投稿・同人誌など