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『高村光太郎全集』を買う   


とうとう、
今度こそ本当に、
『高村光太郎全集』を買った。
ずっしり重いダンボール箱をこじあけて
ぎゅっと詰まった全集を一冊、手に取ってみる。
思ったより小さくて、
だか一個の彫刻家が己の生を刻々いっぱいに歩んだ足跡が
今にも破裂しそうに眠っている。
黒々と並んだ
活字が私の頭を踏みつけ、踏み越し、踏みつけ、踏み越し、
健康な力が溢れる勢いとなってほとばしる。
遊んでなんかいられない。
ロダンはまだ途中だ。
秋には花巻へ行く。
桜の木の書棚が必要だ。

なんという優しい夢だろう。
なんといううまい御馳走だ。


(1978.7)

by hannah5 | 2004-12-01 23:55 | 萌芽(before 1997)

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