繭の中のこっちとあっち
2010年 04月 02日
わたしの言葉に驚いている恋人を
置き去りにしたまま
いつまでもキーボードを打ち続けている
だれも来ない大きな繭の中で
ぼんやりと思い続けていたいから
そこは街の公園のようにブランコがあって
お砂場とすべり台があって
広がっている明るい空が頭上にあって
そういう所でとりとめもなく霞のように
わたしと公園の境目が薄く
溶けてわからないと思っていて
ほんとうは恋人も
公園と自分の境目をなくしたまま
わたしと同じくらい
ぼんやりと思い続けていたいから
向こうの繭の中でひとりぽつんと坐っていることが
この上もなくしあわせなんだという声を
あっちこっちに貼りつけている
そうしているうちに
ひとりでぼんやりしていることが
やさしさを逃がしてしまうと思い
こっちへ来てみたりあっちへ行ってみたり
その中間くらいの素敵になれそうな所で
おたがいの眼の底にあるかがり火を
しんしんと燃やしてみる
この乾杯が終わるころ
恋人に見つからないように
繭の中に忍びこもうと
湖のように思っていて
by hannah5 | 2010-04-02 15:37 | 作品(2009~)