人気ブログランキング | 話題のタグを見る

繭の中のこっちとあっち   


わたしの言葉に驚いている恋人を
置き去りにしたまま
いつまでもキーボードを打ち続けている
だれも来ない大きな繭の中で
ぼんやりと思い続けていたいから

そこは街の公園のようにブランコがあって
お砂場とすべり台があって
広がっている明るい空が頭上にあって
そういう所でとりとめもなく霞のように
わたしと公園の境目が薄く
溶けてわからないと思っていて

ほんとうは恋人も
公園と自分の境目をなくしたまま
わたしと同じくらい
ぼんやりと思い続けていたいから
向こうの繭の中でひとりぽつんと坐っていることが
この上もなくしあわせなんだという声を
あっちこっちに貼りつけている

そうしているうちに
ひとりでぼんやりしていることが
やさしさを逃がしてしまうと思い
こっちへ来てみたりあっちへ行ってみたり
その中間くらいの素敵になれそうな所で
おたがいの眼の底にあるかがり火を
しんしんと燃やしてみる

この乾杯が終わるころ
恋人に見つからないように
繭の中に忍びこもうと
湖のように思っていて

by hannah5 | 2010-04-02 15:37 | 作品(2009~)

<< 春日 私の好きな詩・言葉(141) ... >>