父の行間
2010年 07月 07日
ひび割れた空気を握りしめて
今夜も眠る
夕べもそうだった
その前も
そのずっと前も
たぶんあしたもあさっても
おぅおぅと泣かない
涙をどこかにしまったまま忘れている
もしかしたら
ふかぶかと茂った苔の中に
落としたのかもしれない
(見つからないよ
(どこを探しても見つからない
ガタピシとひび割れているから
直そうと思っても
硬くて直すこともできない
空気を飲みこむのが得意で
技術を磨いてワンランクアップしたのに
空気を吐きだすのは苦手で
タイミングがむずかしい
こことそこを持って
くいっと吐きだすのが
どうしてもうまくいかない
そうして表面だけはなでつけておいた
強くうつくしくたくましく
どこから見てもほれぼれするほど無駄がなく
いつのまにか下から滲んでくる
ひびの割れ目のヒビの否否
表面に映らないようにね、
と言っているそばから
ひび割れが広がりつづけて
それでも
知らん顔して遠くを見ていた
(新現代詩10号掲載)
by hannah5 | 2010-07-07 10:53 | 投稿・同人誌など