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朝靄   


朝、
眠りから目覚めへ意識が少しずつ移行する境目に
不安が水平に横たわっている
まだ塵の立っていない空気の中で
底にこびりついて眠っているそれを
こそげ落とすことも不謹慎に思われて
じっと残したまま
とらえどころのない方角に触手を伸ばす

朝、
誰に言われたわけでもなく
百八十度の転回で活発が垂直に立ち上がる
横たわっている不安を
端から思い切りよく破いては捨てていく
すべてが失くなってしまうことの恐れと
失くなってしまってもかまわないという潔い決断が交互に点滅し やがて
陽炎のようにゆらゆら揺れていた水平の不安をねじ伏せる

朝ごとに行われる儀式
へらへら笑っていると騙されるぞという警告が発せられる
用心しすぎは取り越し苦労に終わるよという嘲笑が飛ぶ

初めから存在しているものと後から装着したものの間を
確信が蒼い顔をして往復する


(詩と思想8月号佳作)

by hannah5 | 2010-08-25 23:36 | 作品(2009~)

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