それぞれ
2013年 03月 18日
ここにある
わたしたちのそれぞれの空間
わたしたちのまわりにぽっかりとあいた空洞
詰めることと埋めることとが泳いでいる空間に
しずかな一滴を垂らして
しいんと座ってみる
座るということは
もっともおごそかな思いの発露
空洞の中心に腰を据え
そよぐもの
流れるもの
漂いうつろうものの
順々に現われては消えまた現われるさまを
手に取り身にまとう
小さな空洞が繭玉のように
ぽっかりと浮かびあがり
いくつも寄り集まり
お互いの距離を等しく保ちながら
繭の中から
息がぷつぷつと気泡になって生まれつづける
目の前で生まれてくる
乳白色の気泡をやりすごす
となりの
となりのとなりの
そのまたひと呼吸おいたとなりの
浮かびつづける空洞の
空洞たちの
わたしの
わたしたちの
似ているようで似ていない
それぞれ
(詩集『あ、』より)
新川和江さんが評価してくださった作品。
新川さんが評価してくださったのは、他に「想う」「入眠」「集約」です。
新川さんとは家が近くて(同じ町の4丁目ほど離れた所に住んでいます)、いつだったか家の近くの駅で、新川さんがSuicaを購入されるのをお手伝いしたことがあります。その時のことは覚えていらして、新川さんが親しくしていらした新井豊美さんの教室に通っていたことにも驚かれて、詩集のお礼に丁寧な葉書をいただきました。
新川さんの葉書もそうですが、とても手の届かない所にいると思っていた先輩の詩人の方からお礼の手紙や葉書をいただくと、なんだかとても嬉しいものです。
by hannah5 | 2013-03-18 16:13 | 作品(2009~)