日本の詩を読む IX その1
2013年 05月 26日
野村喜和夫さんの講義「日本の詩を読む」シリーズが始まりました。今回は秋まで連続10回の講義です。前半5回は前回お知らせしたとおり「女性の詩人たちを読む」、後半5回は「現代詩の最前線」です。
第1回 5月20日
第2回 6月3日
第3回 6月17日
第4回 7月1日
第5回 7月22日
第6回 8月5日
第7回 8月19日
第8回 9月2日
第9回 9月9日
第10回 9月30日
時間 18時45分~20時15分
教室 淑徳大学池袋サテライトキャンパス
第1回目の5月20日は左川ちかを読みました。
1911年(明治44年)北海道余市郡生れ。兄川崎昇の影響で文学に導かれる。小樽高等女学校時代に兄昇の親友、伊藤整との出会いが決定的となり、雑誌に詩を発表。後に『チャタレイ婦人の恋人』を翻訳する。詩の制作期間は1930年~1935年で、残した詩はわずか80篇であった。北園克衛に誘われ、機関紙「マダム・ブランシェ」に詩を発表するようになる。昭和初期のモダニズムの詩人の中にあって、ちかの詩は強烈な身体的イメージを持つ。1935年(昭和11年)24歳で逝去。
今回講義を聞くまで、左川ちかの作品を読んだことはなかったのですが、教室で読んだ作品だけでも私にとってはかなりのインパクトがありました。もっと若い時に左川ちかを知っていたら、今の私の詩は違う方向に行っていたのではないか――そんな気すらしました。
昆虫
昆虫が電流のやうな速度で繁殖した。
地殻の腫物をなめつくした。
美麗な衣裳を裏返して、都会の夜は女のやうに眠つた。
私はいま殻を乾す。
鱗のやうな皮膚は金属のやうに冷たいのである。
顔半面を塗りつぶしたこの秘密をだれもしつてはゐないのだ。
夜は、盗まれた表情を自由に廻転さす痣のある女を有頂天にする。
by hannah5 | 2013-05-26 21:06 | 詩のイベント