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創世―― ウニャ・ラモスに   


始まりの初めに
あなたが立っていたことを知らなかった

固く閉ざしたままの乳白色
触れたことのない息遣い
触れられたことのない熱
疼くように潜んだまま 身じろぎもせず
平らにならした表面の下で
長く じっと

予感とも呼べないほどの微かな震えが
幾重にも重なるように打ち寄せ
受け止めようとする両方の手のひらに
溢れるように落ち始めたそれら

射し込む葦笛の音
魂のひだが隙間もないほど揺れて
熱をもち倦んでいく
密かに匂うゆらめきの
小さな痛み
倦み疲れることに憧れ
けれど 踏み出せないまま

叩かれる音
空気を突き刺して

魂のひだをばらばらに切り離しては
あちこちに散らばったそれらをかき集め
握りしめる
手の中で
呻き声をあげて はじき出ようとする

寄せては返し
寄せては返す
あの向こうに見えた
大きな月の光を
かき抱いて

※ウニャ・ラモス(1933―2014)。アルゼンチンの音楽家、作曲家、ケーナ奏者。代表作に Una Flauta En La Noche、Eve、Puente De Madera (シャルル・クロス・アカデミー賞受賞)、La princes del mar などがある。

by hannah5 | 2014-12-11 23:06 | 投稿・同人誌など

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