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私の好きな詩・言葉(35) 「結婚指輪(がくあじさい)」   

自由な心とは何だろう。健康な体が与えられていて、安定した収入があり、仕事に満足しており、愛する家族がいれば自由な心がもてるのだろうか。どんなに体が健康であり、安定した収入があっても、不満や不平があったり、いつも人をうらやみ嫉妬していれば、自由な心とは言えない。

人並みの健康な体を奪われた星野富弘さんは、不自由な体にも関わらず、心はいたって健康で自由だ。星野さんの詩を読んでいると、私にはどこへでも好きなときに好きなように行ける健康な体が与えられているのに、いかに不平や不満が多いかを思い知らされる。

星野富弘さんの詩と絵に感動し、新しい詩と絵ができるたびにそれを自分の机に貼り付けていた女性がいる。その女性はやがて星野さんの妻となる。「結婚指輪」に描かれた透きとおるような純愛。詩を読むたびに心が洗われる思いがした。(『四季抄 風の旅』)


結婚指輪(がくあじさい)


結婚指輪はいらないといった
朝 顔を洗うとき
私の顔をきずつけないように
体を持ち上げるとき
私が痛くないように
結婚指輪はいらないといった

今 レースのカーテンをつきぬけてくる
朝陽の中で
私の許に来たあなたが
洗面器から冷たい水をすくっている
その十本の指先から
金よりも 銀よりも
美しい雫が落ちている



(『四季抄 風の旅』より)





さくら


私の好きな詩・言葉(35) 「結婚指輪(がくあじさい)」_b0000924_19265074.jpg
車椅子を押してもらって
桜の木の下まで行く
友人が枝を曲げると
私は 満開の花の中に
埋ってしまった
湧き上がってくる感動を
おさえることができず
私は
口の周りに咲いていた桜の花を
むしゃむしゃ食べてしまった








星野富弘(1946-)

1946  群馬県勢多郡東村に生まれる

1970  群馬大学卒業
      中学の体育教師になるが、クラブ活動の指導中、頸髄を損傷、手足の自由を失う

1972  群馬大学病院入院中、口に筆をくわえて文や絵を描き始める

1974  キリスト教の洗礼を受ける

1979  入院中、前橋で最初の作品展を開く
      退院

1981  結婚
      雑誌や新聞に詩画作品や、エッセイを連載

1982  高崎で「花の詩画展」を開く
      以後、全国各地で開かれた「花の詩画展」は、大きな感動を呼び、現在も続いている

1991  群馬県勢多郡東村に村立富弘美術館開館

      村立富弘美術館: 群馬県喜多郡東村草木86
                  TEL 0277-95-6333  FAX 0277-95-6100

2004  富弘美術館の入館者470万人を超える

by hannah5 | 2005-04-03 19:26 | 私の好きな詩・言葉

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