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私の好きな詩・言葉(36) 「グレープフルーツ」   

単独で暮らしている時は考え方やライフスタイルに共鳴できていたのに、恋愛関係になった途端に微妙な気持ちの違いに戸惑うことがありますね。一般的に女性は細かい所でくよくよ思い悩むものですが、男性から見ると、これが意外だったり理解不可能だったりします。女性にとっての大問題は男性にとっての不可解ということでしょうか。またそんな男性の不可解さが女性にとっては不可解だったり、時には不安の材料だったりします。

お互いの気持ちを密接にしたいと思えば思うほど密接にできなくて、そのずれに不安がつきまといます。かっこよく恋愛したいと思っても、結果はなぜか間が抜けてしまう。そのことを見事に描いたのがうめぞうさんの「グレープフルーツ」です。彼女の言動を可愛いと思いながらも、やれやれという彼の溜め息が聞こえてきそうですね。(Rental Heart Cafe B-side


グレープフルーツ

料理本とにらめっこしてる彼女
キッチンから追い出された僕は
ベランダのハーブを収穫したりして

青々としたバジルを差し出すと
「ご苦労さま」とおどける彼女
そして今度はグレープフルーツと格闘を始める

「何ができあがるの?」と訊くと
「内緒」と彼女
本のページには鶏肉の写真

またまた退散した僕が
リビングで落ち着かないでいると
今度は彼女が訊ねる

「恋してる?」「もちろんしてるよ」
「私が大切?」「もちろん大切だよ」
「どうして?」「どうしてって‥‥わかんないよ」

ちょっと不満そうな彼女が
ワインのボトルとグラスを抱えてきて
僕の隣りにちょこんとすわる

「ごはんどっか食べに行こうか」と彼女
「どうして?怒ったの?」
「フルーツソースは私向きじゃないみたい」と微笑む

ストッキングに足を通す彼女にさりげなく訊いてみる
「不安なの?」「もちろん不安よ」
「どうして?」「どうしてって‥‥わからないわ」

「さて、なに食べたいの?」
僕の腕にしがみつく彼女に訊ねると
「あなたはお魚がたべたいんでしょ」

彼女は僕にとても敏感なのに
僕は彼女にいつも鈍感なんだ
僕には予想のつかないことばかりで‥‥

彼女と僕が少しだけずれている

by hannah5 | 2005-04-11 16:14 | 私の好きな詩・言葉

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