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日本の詩を読む X ~ 四季派の時代(第6回)   


6回目の「四季派の時代」の講義は立原道造の晩年を中心に行われました(6/27)。晩年と言っても道造は25歳で亡くなっていますから、最後の1年半ほどの話ですが、堀辰雄への訣別を著した「堀辰雄の風立ちぬ論」や、東北や長崎を旅した時に書いた「盛岡ノート」、「長崎ノート」、日本浪漫派の芳賀檀(はが まゆみ)への献辞として書かれた「何處へ?」など、信濃追分の高原を詠った頃に現れていた抒情的な部分とは異なる方向へ行き始めていた道造について、講義が進められました。教室で読んだ作品は「石柱の歌」、「晩秋」、「何處へ?」、12月6日付の日記(一部)、野村喜和夫さんが「道造ベース」として書かれた「ヒアシンスハウスまで アリュージョン立原道造」と「のちのおもひに パラフレーズ立原道造」、吉本隆明が道造について触れている詩集『固有時との対話』(一部)でした。



何處へ?
      Herrn Haga Mayumi gewidmet


深夜 もう眠れない
寝床のなかに 私は聞く
大きな鳥が 飛び立つのを
――どこへ?・・・・

吼えるやうな 羽搏きは
私の心のへりを 縫ひながら
眞暗に凍つた 大氣に
ジグザグな罅をいらす

優しい夕ぐれとする對話を
鳥は 夙(とう)に拒んでしまつた――
夜は眼が見えないといふのに

星すらが すでに光らない深い淵を
鳥は旅立つ――(耳をそばたてた私の魂は
答のない問ひだ)――どこへ?




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            『暁と夕の詩』復刻版





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by hannah5 | 2016-07-04 20:11 | 詩のイベント

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