夏の午後
2005年 08月 11日
長い長い坂道を
ゆっくりと下りていくように
あなたの記憶がゆっくりと後退する
私はその都度立ち止まっては
途方に暮れてあなたを見る
あなたはまるでなんでもなかったかのように
にっこりと笑う
会話が途切れてしまった
あなたがまだ元気だったころ
夕方になるといつも
しゃきしゃきと歩いて買い物に行っていたことが
かすんで見えないほど
遠くになった
思い出したように
あなたは話しかける
ねえ、冷蔵庫の中に
おいもの煮たのがあったでしょう?
立つこともできなくなってしまったあなたが
記憶の中では
今でも台所で煮物をしている
ぼんやりとかすんだ過去にいて
昨日と今日の境目がぼやけた今日にいる
またひとつこぼれた積み木を
あなたは拾うのも忘れて
しづかに
しづかに
眠ってしまった
by hannah5 | 2005-08-11 22:28 | 作品(2004-2008)