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冬の詩神   

冬、詩神に出会った
それはほんの偶然の出会いだった

詩神は熱く清涼なる風をもちて
心の中を吹き巡り 駆け巡り

諦めかけた私の内部が
微かな希望と期待感に変わった

詩神はその命の底から
ありったけの力で言葉を編んだ

私は圧倒され めまいを覚え
詩神の前でただ立ち尽くすだけだった

どこかで遠い過去の記憶が蘇った
置いてきた過去がにわかに息を吹き返した

人生の初めに心が壊れるほど好きになり
立ち止まざるを得なかった人への思い

戸惑いと恥じらいが交錯し
呆然と詩神に思いのありったけを告げた

清らかで滑るような旋律と抑揚で
詩神は傷つけることなくその思いを掬い取った

詩神はあとからあとから言葉を放ち
私が息もつけないほど言葉を放ち

天空を舞い 地の果てを駆け巡り
風を起こし 雷鳴を呼び

やがて私は詩神の力に圧倒され
立ちあがる気力も薄れ 力をなくし

心の中に微かな嫉妬と憎しみが生まれ
破壊と狂気が森羅万象を蹂躙し

詩神よ お前を本当は愛していたのだよ
愛してそっと掌に包んでおきたかったのだよ

by hannah5 | 2004-07-23 14:28 | 作品(2004-2008)

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