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海に飛び込め   


林立する直立する縦横に走る
秩序正しく歴史の積み重なりの底に
満々と湛えられた水の集積

筋と肉は上手に切り裂くことができるかできないか
鋭利な刃の先を筋と肉の分かれ目に刺し込んで
勘を頼りに手前に引く向こうに押す

水の集積に刃を突き入れ攪拌する
しかし割合丈夫
悲鳴をあげない泣きわめかないされるがままになっている
それらには自我があり個性があり強靭な力がある

バラバラになったそれらを一つずつ拾いあげ
前頭葉が生み出して眼前に広げたイメージと色とフォルムをなぞり
並べる組み立てる積み上げる

水の集積の中の一つのピースが脳髄の片隅で笑いころげている


海に飛び込め


思考したこともない想像したこともない
水の集積の中の一つのピースが海の真中を泳いでいる
ひらひらひらひらら
多くの機会を得多くの出遭いを通し多くの願望により
多くの噴火を起こし形を欲し始める
一つのピースが一つのピースと連結する
一つのピースがあらゆるピースと繋がる結び合う
新しい水の集積を構築する

うねり進む 無限の海の中





「詩は、言葉によって作られる。では、詩で言葉のない世界、言語以前の世界を創造することはできないのだろうか。野生の獣や、失語症患者が見るような世界を。/もし、それが自覚的に可能になるとしたら、それは詩集のページに、言語以前と、言語によって規定される世界と、言語以後の世界が言語以前に還流するような、多層の世界像を貫くものになることだろう。」

「自己と他者。主体と客体。この対立的に見える二項は、実は相互の関係性においてのみ存立するという点において、あらゆる事物と事象を自らのうちに孕んでいるとも考えられる。・・・・・無限の差異が連続する言語以前の世界、それは言語がもたらす整序あるコスモス以前のカオスであり、言語以後の世界とは、コスモスを破壊したとき初めて現われるアンティ・コスモスであると言うことができるだろう。カオスとアンティ・コスモスは似ているが、同じものではない。前者はあくまでもコスモス以前の状態であり、後者は、コスモスとは違う、新たな関係性の創造への待機の状態である。」

(城戸朱理『潜在性の海へ』/「言葉のない世界へ」より)

by hannah5 | 2008-02-28 12:02 | 作品(2004-2008)

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