うすくれないの花のいろ
2008年 03月 09日
うすももいろの梅やうすべにいろの桃が
静かな陽の光の中で満開になりました。
空気が冬の寒さから抜け出そうとしているときに
しゅんと突き出た枝に
ぼんぼりのような蕾がいくつもついて
枝の根元から枝の先に向かって
徐々にひらいてゆきました。
ある日
風に揺れてささやくような匂いが
わたしの鼻の先を通りすぎてゆきました。
わたしは花びらがいっぱいに開いて
雌しべがぴんぴんと立っている花に顔を近づけ
全神経を鼻の先に集中させました。
つつましやかでひっそりとした微笑みのような匂いが
鼻の先に一瞬触れて 消えてゆきました。
もういちど
今度はもう少し深いところから息を吸ってみると
匂いは恥ずかしそうに鼻のまわりをひと巡りして
ふいっと姿を消しました。
去年もおととしもさきおととしも
いえ、もうずっと以前から、
うすももいろの梅やうすべにいろの桃はほんのり開いて
暗く固まっていた季節を割ってきたはずなのに
今年ほど色も匂いもあざやかで
見るたびにさざ波の立つ年はありません。
by hannah5 | 2008-03-09 23:40 | 作品(2004-2008)