人気ブログランキング | 話題のタグを見る

私たちが忘れた頃に   


青黒い空気が街を覆っていくその片隅を
小さなとっかかりを見つけて
チッと引き裂く
それは何かの始まりかもしれないし
何の始まりでもないかもしれない
気をつけていることは一気に引き裂かないこと
小さな傷を作って空気に当てること
いつのまにか傷が癒えていたら
成功したといえる

翌日 また
青黒い空気がシャッターのように下りてくる頃
昨日の傷痕を爪の先で引っ掻いて小さく穴をあける

かゆいかい?
  かゆいだろう?

癒えかけたかさぶたはむずむずするものさ
そこをクッとこらえて引き裂いてみるんだよ
それから放っておくこと
明日まで

そうして 毎日毎日傷を作り続ける
そのたびに 毎日毎日少し癒える

チッ
チッ
チチッ
チチチッ
チチチチチチッ!

いつか
人も私もすっかり忘れた頃
傷は癒えることをやめて
世界はゆっくりと揺れ始める
誰も止めることができないほどゆっくりと大きく
世界が揺れ始めるのだ
絶対的に世界が揺れるその中で
私もまぎれもなく揺れ始める

人も私もとうの昔に忘れてしまった頃
世界は大きな卵を生み始める

by hannah5 | 2008-04-10 23:54 | 作品(2004-2008)

<< 私の好きな詩・言葉(122) ... 霧に囲まれる >>