さくら 散る (アドレッセンス 6)
2008年 07月 01日
見上げる目線の
切り傷の冷たさと心もとない頼りなさが
果てしなく落ちていく
握り締めている綱が下へ下へと引いている
私たちの心臓の付け根あたりが絡まって
結び目がほどけなくなってしまった
ア・イ・シ・テ・イ・ル
がこの瞬間に生まれ落ちる
今のこの瞬間はかなり潔くて
愛しぬくという大命題を唱えて
カクゴを買いに街に出る
かなり前からオトナの男の香りを探していて
少なくとも今はかなりそれが必要だから
両腕いっぱいに抱えて帰る
それだけでよかった
あの人の後ろ姿に
何億という孤独がぶら下がっていて
食い入るようにそれらを見つめていたら
限りなくこぼれていくはかない時間が
それでも数片
手の中に残るだろうと思った
あの朝の
ガラス窓のクローバーの模様が
赤や青や橙色にきらきら輝いて
初めてだったから
あんなに美しかったのは
粉々に砕けてしまっても
惜しくはなかった
by hannah5 | 2008-07-01 20:20 | 作品(2004-2008)