本当は自由だった
2008年 09月 02日
失くなった手帳が出てきた
テレビの下のラックの奥の
そのまた一番奥の紙と紙との間に
何気なく置かれていた
何度も同じレストランに足を運び
もしかしたら今日こそだれかが
忘れ物として届け出ているかもしれないと
かすかな期待をして聞いては その度に
素っ気ない返事が返ってきて
手帳があった日と
手帳が失くなった日との間に広がる空白を
どのように塗り潰そうかと
ぼんやりしたままやりすごしたあとに
やっと水色が似合うと決めたばかりだったのに
空白を埋めるために見つけた水色は
新しくひろびろとしていて
こんなふうな再開もありなんだと
一年の途中で急に転換した方向を
案外面白がっていたのだけれど
手帳が戻って
ざらざらと泥のように盛りあがって
こびりついていた過去も戻ってきた
手帳が失くなって
本当は自由だったのだ
by hannah5 | 2008-09-02 19:28 | 作品(2004-2008)